3-15 幸あれ
泣いちゃダメ。サヨナラだけど、もう二度と会えないけど、笑ってサヨナラしたい。
「カノンちゃん。幽霊や亡者を救う、立派な公務員になってね。」
「マリンちゃん・・・・・・。」
「カノンちゃんなら、出来るよ。私、信じてる。」
「キララちゃん・・・・・・。」
妖怪免許が取得できなかった亡者は、特別裁判を受ける。
判決が出るまでは、仮免妖怪専用の宿泊施設へ。個室と相部屋を選ぶ事が出来て、三食おやつ付き。
「私、忘れない。マリンちゃん、キララちゃん。友達になってくれて、ありがとう。」
「カノンちゃん、大好き!」
「ずっと友達だよ!」
転生すれば、記憶は消去される。死ぬまでの記憶も、死んでからの記憶も。真っ新な魂を持って、生まれ変わる。
「マリンちゃん、キララちゃん。元気でね。」
「恵さん。頑張るの、ホドホドにね。」
「ちゃんと休まなきゃ、ダメだよ。」
「ありがとう。短い間だったけど、楽しかった。」
「楽しかったね。」
「楽しかった。」
恵さんも、公務員試験を受ける。
目指すは奉行所、科学捜査班。四十五年の人生と、仮免妖生で培った経験を活かして、隠り世に貢献するんだって。
「キララちゃん、マリンちゃん。素敵な時間を、ありがとう。」
「令子さん。夢、叶えてね。」
「仕事も趣味も、楽しんで。」
「ありがとう。みんなとの思い出は、私の宝物よ。」
「私、幸せだった。忘れちゃうけど、忘れない。」
「私も、幸せだったよぉぉ。」
令子さんも、公務員試験を受ける。
目指すは奉行所、捜査二課。詐欺とか横領を取り締まる部署。三十五年の人生と、仮免妖生で培った経験を活かして、バリバリ働くんだって。
ピンポンパンポォンッ。
「裁判を受ける方は、荷物と思い出を持って、養成所の玄関に、集まってください。繰り返します。裁判を受ける方は、荷物と思い出を持って、養成所の玄関に、集まってください。」
ピンポンパンポォン。
二人が乗った送迎バスが見えなくなるまで、手を振って御別れした。
マリンちゃんは進行癌で、腫瘍が大きく、あちこち転移して、手の施しようが無かった。癌って、凄く痛いんだよ。
おばあちゃんも癌だった。『体力が落ちるから』って痛み止め、打ってもらえなかったんだ。
マリンちゃん。次の人生では、病気知らずだと良いね。
キララちゃんは交通事故に遭って、生きたまま。夢も希望も、いっばい有ったのに。ある日、突然。
複雑な家庭環境で育ったって、笑いながら言ってた。心の中では泣いてたよね。判るよ、私もだから。
キララちゃん。次の人生では、イロイロ叶えてね。
神様、お願いします。転生後のマリンちゃんとキララちゃんが、幸せな人生を送れますように。




