3-12 美空家の、その後
「ちょっと何なの、この散らかり方は。」
「そうだぞ、お前たち。家事くらいシッカリしろ。」
双子を叱る、美空夫妻。
奏音は死んでも、家事を担っていた。
代官所の送迎課長、菱端がスランプラリーに勤しむ間、奏音はルンルン。お金を取れるレベルの家事能力を、遺憾無く発揮。
それはもう、完璧。
お気に入りを鞄に詰め込んで、旅立ちました。家族の誰にも引き留められず、というより気付かれず、美空家から居なくなったのです。当然、大荒れ。
妖怪免許証取得を目指し、養成所に入所。そして生まれて初めて、正確には死んで初めて、寮生活を満喫。友達も出来ました。
「もぉぉ、奏音はドコ行った。」
「サッサと連れ戻そうぜ。」
双子、大騒ぎ。
「奏音は死んだの。」
「そうだぞ。間違いなく、死んだんだ。」
美空夫妻、ドヤ顔。
はい、その通り。美空奏音、享年十六。遺体の損傷が激しく、献体を拒否されました。
運び込まれたのは警察病院。霊安室で放置され、暫くして遺体保存庫へ。
両親は警察の説得に全く応じず、放置。何度も説得され、やっと火葬されました。で、遺骨の引き取りも拒否。気の毒に思った住職の善意により、納骨堂へ。
「アレが死んだのって、いつよ。」
「えぇっと確か、二学期が終わった辺り?」
見合う双子。
「オカシイじゃない。春休みが終わるまで、誰が家事してたのよ。」
「知るかよ。」
姉の死を悼む気持ちは、無いのかい?
「とにかく。奏音は居ないんだから、あなた達が家事するの。」
「そうだぞ。シッカリな。」
似たもの夫婦。
この夫婦。ガッツリ稼いでいるのに、家政婦を雇う気、全く有りません。奏音に出来たんだから、双子にも出来ると思っています。
その気になれば、出来ると思うよ。家事。一応、義務教育で教わるし。掃除は放課後、掃除当番で。炊事は、家庭科の授業で。洗濯は洗剤入れて、洗濯機にオマカセ。
美空家の洗濯機は、二層式。手間は掛かるけど、汚れ落ちは良いよ。面倒なら、全自動洗濯機に買い換えよう。
奏音の死後。両親はブウブウ文句を言いながら、終わらせました。何をって? 死亡手続きです。
死亡保険金を掛けていたので、捜査対象に。結局、事故死として処理。
支払われた保険金を手に、夫妻は大喜び。親として、どうなのよ。
奏音の葬儀、出してません。
親類縁者に役所、学校関係者。ご近所サンも、ヒソヒソ。いろいろ言われましたが、全スルー。
半年後、美空家はゴミ屋敷化。
近所から抗議の嵐、役所から指導され、やっと家政婦を雇いました。そして見つけます。奏音が残した、アレコレを。
扱いが酷かった事もあり、契約は更新されず。やがて家政婦組合のブラックリストに載り、誰も来てくれなくなったとさ。
めでたし、めでたし?