3-1 私は女優
祝~hafuri~ 連載一周年記念。
家事を一手に担う虐待児、美空奏音。耐えて、耐えて、耐えて、笑い方を忘れた。家でも学校でも虐められ、どこにも居場所がない。
交通事故に巻き込まれ、即死するも気付かず、家に囚われた。担当は若君、向水無慙。ノンビリしすぎて、時間切れ。悪霊へのカウントダウンが!
無事救い出され、妖怪養成所へ。素敵な友達、できました。みんな揃って、妖怪になろう。果して、難関突破なるか。奏音の運命や如何に。
「寒っ。」
朝。誰よりも早く起きて、家事をする。他の子は手伝い程度。ウチは私が、家族の世話をする。
両親とも仕事人間、弟妹は二卵性の双子。兄は私が一歳の時、死んだ。母は言った。『オマエが殺した』と。
オカシイと気が付いたのは、小学校に入ってから。
ウチの洗濯機、二層式だから手が荒れる。ハンドクリームなんて高級品、使わせてもらえない。
私が家事をするのは、当たり前。私が虐待されている事、気付いていて何もしない。見下し、嘲笑うダケ。
罵られても、黙って耐える。殴られても、黙って耐える。叩きつけられても、黙って耐える。蹴られても、黙って耐える。
耐えて、耐えて、耐えて。笑い方を忘れた。
家族は言う。『愛想の無い子で』『鈍感な子で』と。言われた人は笑う。『そうなんですか』『手が掛からなくて、イイじゃない』と。
「何コレ、まっず。」
妹は特に、性格が悪い。
「もう少し何とか、ならんのか。」
新聞を読みながら、父が言う。
「向上心が無いのよ。」
文句を言いながら、バクバク食らう母。
「アレに関わるな、うつる。」
鼻で笑う弟。
三度の食事と、弁当の中身は別。一つでもカブると文句を言われる。奴らにすれば、文句もオカズの一つ。気にしない。
・・・・・・嫌だけど、気にしない。
「いってきまぁす。」
一人、また一人。バタバタと出てゆく。食卓の上は、散らかったまま。ココは舞台、私は女優。アンドロイド家政婦を演じるの。
教師は敵だ。私を生贄にして、クラスを運営する。私を虐げて、笑いを取る。私を貶めて、クラスを纏める。辛くても、逃げ場が無い。
学校なんて嫌い。行きたくない。
義務教育が終わったら、就職する気だった。なのに進学した。世間体を気にする親が、睨みながら言った。『高校くらい出ろ』と。
ミテクレは悪くないので、舞妓になろうと思った。
置屋に連絡をして、直談判。履歴書を送る許しを得て、郵送。面接をパスしたのに、親に潰された。
女将さんに言われた。
『どうしても耐えられなくなったら、いらっしゃい。』そう言って、抱きしめてくれた。嬉しかった。居場所を、見つけたような気がした。
「プッ、また来た。」
「懲りないヤツゥ。」
クラスメイトが囀る。
ピィチク、パァチクとまぁ、飽きもせず。ご丁寧にチョークで座面を塗り潰し、こちらを見ている。
突っ込まれたゴミ、悪口を書いた紙など。入れられたモノを出すため、机を振る。
毎度毎度、ご苦労なコッテ。掃除用の挟みで摘まんで、物証を袋に入れる。帰ったら広げて、今日の新聞と共に保存。
黙って雑巾を手に、洗い場へ。ついでだ、掃除しよう。
机を拭いてから、椅子を拭く。うん、キレイきれい。再び洗い場へ。雑巾を洗い、絞って干す。
虐めに第三者は居ない。居るのは、被害者と加害者。傍観者は加害者、質の悪い加害者。家でも学校でも虐められ、四面楚歌。
あれ、私。何で生きてるの?