ゴブリンはタイムリープして何回も女剣士に会いに行く
ゴブリンだった男が自分の過去を話し始めます。
「それはもう、その女剣士に何回も何回も切り殺されましたよ。そして殺されると同じ場所で目覚めるんです」
ベッドに寝そべって男が天井を見ながら女に言う。
「それてタイムリープって言われる現象じゃない?」
女が男の横顔を見ながら聞いた。
「そうだと思います。私は目覚めた後、同じ廃墟に行ってその女剣士のいるパーティーを待ち伏せしました」
「その女に復讐するためだね?」
「いえいえ、その女剣士に会うためにですよ。タイプだったんですよ。金色のサラサラ下長い髪でブルーの目でした」
「好きだったの? その女剣士のことが」
「ええ。好きでしたよ。殺されても殺されても、廃墟でその女剣士を待ち伏せしたんです」
「そんなに好きなら告白すればよかったじゃない」
「そんなことは出来ません。だって私はゴブリンだったんですから」
「ゴブリンってなに?」
「私のいたのは異世界でゴブリンという種族は見た目が緑色で顔も姿も醜くて嫌われる存在なんです。そして人間を見ると襲ってくる。人間からすると敵ですよ」
女が気持ちが悪いと言う顔をして舌を出す。
「それでは女剣士に告白するなんて無理よね」
「そうですね。それでもよかったんですよ。切られるのが好きでしたから」
「あなた本物の変態なの?」
「ゴブリンは切られるためにいるようなもんですから変態かどうかは分かりません。ゴブリンとしては正常だったと思いますよ」
「でも、切られて嬉しかったんでしょ。それは変態じゃない」
「嬉しかった? そうですね。彼女が廃墟で飛び上がって剣を振る姿はそれはもう美しかったですよ」
「毎回、同じ様に切られたの?」
「いいえ。少しだけ変えました。ただ、何回も切られていると太刀筋がわかるので避けないように気を付けました。勝ってしまってはいけませんから」
「負けるために生きていたのね」
「ええ、私が地面に転がると必ず彼女は上からブーツで踏みつけて言うんです。弱すぎなんだよって」
「踏みつけられるのがうれしいなんて」
「ええ。そうです。踏みつけられて嬉しかったから、タイムリープしてもまた同じ場所に行って切られました。ゴブリンの生活は楽しかったですよ」
「楽しかったならずっとそのままタイムリープしていれば良かったじゃない?」
「そうなんです。私の幸せな時間が終わった日、私は順路を変えてしまったんです。私の代わりに彼女の場所に行ったのは強いゴブリンでした」
「強いゴブリンもいるのね」
「ええ、チャンピオンゴブリンといって体も人間より大きいのです」
女が怖い顔になって聞いた。
「彼女はどうなったの?」
「私がそこに行くと、女剣士がチャンピオンゴブリンにやられて死んでいました。体はぐちゃぐちゃになっていました」
「でも死ねばタイムリープすれば元に戻れるんでしょ」
「私もそう思ったんです。その日はチャンピオンゴブリンの活躍でパーティーが全滅してしまいました。そこで次の日、私はわざと死にました」
「それで女剣士の死ぬ前に戻れたの?」
「いいえ。転生してきたのがこの世界です。なにか条件をクリアしてしまったみたいです」
「異世界からこの人間の世界に来たというのね」
「そうゆうことになりますね」
「そんなホラ話をしろと、誰が言った!」
「ごめんなさい。決して嘘ではないんです」
「おだまりっ。そこに四つん這いになりな!」
「ひぃぃ。 女王様。お許しを」
「私以外の女の話をして。私が許すとでも思ったかい!」
ビシッ! ビシッ! 四つん這いにして、太った男の体を女王の鞭が痛めつける。
「そんなにその女剣士が好きだったかい?」
女王様はハイヒールで背中をぐりぐりと踏みつけた。
「あうっ。綺麗でしたよ。均整の取れた体格で。胸も大きすぎず、小さすぎず、手足が長くて顔も小さい。くびれもあって、そう。女王様にそっくりでした」
「ようやく気付いたのかい。私もこの世界に転生していたんだ」
「女王様! 女王様はあの女剣士だったのですか?」
「弱すぎなんだよっ! 私に会いたければ、ここに来るたびにお金を払いな。それがこの世界のルールだよ」
女王様が強く背中を踏みつけた。
「そうですよねっ。タイムリープのある異世界に戻りたい!」
「しっかり仕事して稼ぎなっ」
転生しても彼は一番最下層から脱出できなかった。
励みになりますので是非応援よろしくお願いいたします。
他の短編や長編連載もありますのでそちらの方もよろしければ読んでみてください。
続きが知りたい、今後どうなるか気になる!
と思ったらどんな評価でも結構ですので
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。