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トーンフォレスト-3-

▪️▪️▪️トーンフォレスト 太鼓の遺跡にて▪️▪️▪️



コングパーカッションの演奏は素晴らしかった。


軽快な太鼓、いやトーテムの音が鳴り響いた。同じトーテムなのにリズムカルな音を鳴らしたり、腹の底まで響く音を出したりとバリエーションがあった。


それと中型のコングパーカッションもいい仕事をしていた。

てっきり太鼓の音を際立たせるための演奏かと思っていたが、ずいぶんと存在感を放っていた。

コングパーカッションの演奏は「協力していい音出そうね」と言うより、「俺たちがこんなに出してんだからそっちも出せよ」と言う感じの演奏だ。とても力強い演奏だった。


それなのに踊り出したくなるような楽しさもあった。

演奏を聴いていたら自然と体が動いてしまうくらいには。まぁハイコングの奴らはあちこちで演奏に合わせ踊りまくっていたが。疲れないのだろうか。あっちこっちに飛び跳ているが大丈夫そうだ。


演奏を聴きながらご飯を食べても大丈夫そうだったので昼飯をまだ食べていない俺は遅めの昼にした。

昼前にコングと遭遇してそのままここに連れてこられたからまだなのだ。

ドナドナもまだ食べてないのかもしれない。聞いてみよう。


「相棒、お前昼は食べたのか?」

「ブルルル(ええ。今はおやつの時間です。ナナバナナの上の葉っぱはとっても甘いのですよ。)」

「そうか。」


昼飯を食べながら演奏を聴き続けた。




演奏が始まってかれこれ数時間。太陽はすでに沈みお空にはお月様が浮かんでいた。

ハイコングが自慢の筋肉で起こした火以外にあかりはない。

その炎は遺跡の周りを囲うように作られた4つの篝火っぽいものしかないため結構薄暗い。


「オウオウオウオウ(最後は太鼓の神に捧げる演奏だ)」

「「オオオオオオ!!!!」」

どうやら次で最後らしい。それも太鼓の神に捧げる演奏か。

どんなものなのだろう。

最後だし楽しくどんちゃんさわぎするのかな?

そう思っていたが、最後の演奏は全く真逆だった。



広間に置いてあった大型用の楽器(?)は端にきれいに並べられた。真ん中を偉い人が通るかのようだ。

更に小型はトーテムを叩くようだが、中型はみんな楽器を持っていない。

何するんだろうと思っていたら、なんとコーラスだった。


最後の演奏は太鼓とコーラスだけのものだった。


シンプルだったが響く音は神々しさを感じるものだった。

俺のスキル『話術』を持ってしても何を言っているのかわからない言葉を歌っていて驚いたが、その驚きを超越する威厳のようなものがそこにはあった。

ただただ、演奏を全身で聴いた。

さっきまで自由に踊りまくっていたハイコングがきれいに列をなして座っている。




「ん?」

神性が高まった?

神性というのは神々のエネルギーだ。神性を使って神々は様々なことができる。

神獣にも神性が備わっているが、ここまで神々しくない。

なんの神かまだわからないが、神が降臨してきた。


マジか!!

神が降臨できることは知っていたけど実際に見たのは初だ。


どんどん、どんどん神性が高まってゆくに連れて、神性が顕在化する。

何が起きるかっていうと、キラキラ光る粉が降ってくる。

更になんだが、この神性は上神くらいじゃないと出せないと思うんだが。


俺は慌ててボロっちい商人の服から立派な服に変えた。そしてアイテムBOXからとある物を取り出した。


  世界樹の落ち枝

とある所に生えている世界樹の落ちた枝。


枝といってもかなり太いが。両手でやっと持てる大きさだ。

これを持って奥にある小屋に奉納すればいいのではないか。

俺が真ん中を歩くことになるが、何かの儀式だと思って頑張ろう。

小屋に世界樹の枝を奉納すると、キラキラ光っていた神性が一気に小屋に集まった。


小屋が眩しい。

そしてその間も演奏し続けられるコングもすごいな。


光が小屋に集まりきったかと思った瞬間、上空に女性の姿が浮かんでいた。


『よい音じゃのぅ。聴き込んでしまってのぅ』

年増おん・・・大人びた女性がそう言った。

彼女は浴衣を着崩したように着ていて、肩を出していた。

手には琵琶を持っている。


彼女は音楽の神だな。


心に響く音を奏でる者の前にしか姿を見せないと言われている。

それと彼女の奏でる琵琶は聴く者全てに感動を与えるらしい。


彼女に歳の話はタブーだ。それで神界の神々は何度も吹っ飛ばされた。



『よい、よい。まことに気にいった。餞別じゃ私も一曲弾こうかのぉ』

コングたちは音楽の神の演奏に感動していた。

俺は賑やかで楽しいコングの演奏の方が好きだけどな〜


(芸術の心を持たぬ者にはわからないものよ!!)

わざわざ心に直接言わなくても。


演奏が終わると音楽の神はいなくなった。





後日


小屋に奉納した幹は変形して音楽の神の姿に変わっていた。


「オウオウオオオオオオ!!(音楽の神様に認めてもらえた我らを太鼓の神様にも認めてもらうぞ!!)」

「オオオオオオ!!!!」

コング族の新たな目標が決まったらしい。




後書き設定


神が自分から人間の住んでいるところにはいけません。(いけない事もないけど大変なことになる)

しかし今回のように依代(今回は世界樹の枝)と神々に呼びかけるのに十分な素質があると神が降臨します。

人間側からしたら神が勝手に降臨したと思うけど、神からしたら呼び掛けたように感じる。(今回だと演奏)


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