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彷徨う踊り子

「おばあちゃん、なんでおじいちゃんはお星様になったの?」

「それはね、おじいちゃんがね、空からあなたのことを見守っているからよ」

「わたしはお星様になったおじいちゃんよりおうちでわらっているおじいちゃんがいい!」

「・・・・」

「なんでおじいちゃんはかえってこないの」

「おじいちゃんはお天道様に呼ばれたからだよ。

例え空がくもりでお星様が見えなくてもおじいちゃんはあなたのことを照らして見守っているはずだよ」






薄暗い森の夜、俺は一人で歩いていた。

太陽はすでに沈んでしまい本来なら真っ暗な森の中のはずである。しかし森の中を自由に飛びまわっている輝虫によりわずかながら光があるのだ。


輝虫

頭が光る虫。黄色にぼんやりと頭を光らせる

頭を光らせる理由は仲間とのコミュニケーションと言われている。



輝虫は珍しい虫ではない。人が出入りするような森でも夜にその姿を見る人は多い。

しかし皆、読んで字のごとく輝虫の光は眩しいほどの明るさだったと言っている。

決して今のようなぼんやりとした明るさではないだろう。


それはなぜか。

輝虫は普段数百匹の群れが一塊になって生活しているからだ。

例えちょっとした明かりでも数百匹が集まればとんでもない明るさになる。


しかしこの森の輝虫は数十匹でしか集まっていない。その群れが俺の周りをゆっくり照らしている。

さらに不思議なのが輝虫が照らしている一本道があるということだ。

自由に飛び回れるはずなのに、常に決まった場所を照らしている。まるでそこを歩けと言っているようだ。


「不思議だ。この先に何かあるのか?」

俺は輝虫に導かれるままにその道を進んだ。


「ここは?」

一本道を歩いて行くとそこには壊れて草木に覆われているもののかろうじて原型を保っている二階建ての小屋があった。 

小屋の扉の前には錆びついたポストのようなものがあり、たくさんの手紙が入っていた。

 

(手紙は思ったより綺麗で読めるな。なになに?)


『サウニーナへ 今日も楽しかったね。また一緒に練習しようね』

『サウニーナへ 今日は上手にできたね。これからももっと上手になりたいね』

『サウニーナへ 怪我をしたと聞いたけど大丈夫?また一緒に練習したいね』

『サウニーナへ 今日の練習は楽しくなかったよ。早く一緒に練習できるようになりたいね』


サウニーナへの手紙がたくさんあった。

送り人がわからないがサウニーナに送った手紙だ。ここの家にサウニーナに住んでいたのだろう。


小屋の裏側に回った時不意に音楽が聞こえた。

「なんでこんな森の中で?近くに誰かいるのか?」


俺は気配を消して音楽の流れているところに向かった。


そこには小さな池の上で滑るように踊っている少女がいた。実際宙に浮いているため滑っているのだろう。

薄暗くどんよりとだが、自身の体も光っている。さらに一緒に踊っているつもりなのか輝虫も少女のまわりを飛んでいる。



音楽の音がだんだん小さくなりついには聞こえなくなった。それに気づいた少女は踊りをやめて草むらの中にあったオルゴールのネジを回し、再び踊り始めた。

(あのオルゴールで音楽を流しているのか。それにしてもなんだか寂しい音楽だな)

ぼんやりと薄暗く光っている少女も美しくオルゴールが奏でる音楽、どちらも儚く寂しそうだ。


雲の隙間からわずかに差し込んだ月の光が少女を照らした。


熟練された踊りなのだろうが感情が一切ない。淡々と踊り続けている。まるで操り人形のようだ。


(ウルは元気だろうか。様子を見てこよう)

この子の踊りを見ているとふとウルのことが気になってきた。

元気にやっているだろうか、ちゃんとご飯は食べているだろうか。

気になって我慢ができなくなったのでウルがいる学園まで戻って様子を確認することにした。




帰り道でもあの寂しげな音楽といつまでも踊る少女が頭から離れなかった


オルゴールの音楽はポケモンのBGM「古の歌」をイメージしています。

知っている人は知っているかな?



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