幕間
蜘蛛型の神獣 クイーン
サイズは体長5〜6メートルほどです。
体は白っぽい
ハルモニアに無理やり神界に招集されてから数日後、俺は毒霧に来た。
ゾゾゾの巣は山の頂上にあり毒が麓に流れてしまうと思われるが、本人が勝手に流れてひろがらないようにしているため、周りに全く影響を与えない。しかし今回だけはその制御を捨てて、ただひたすら毒を濃く、強力にしようとしているのだろう。どんどん毒が溢れて周りの木々を侵食している。
「これやり過ぎじゃ無いのか?流石に人里からはかなり離れているけど、毒がひろがりすぎるのはよく無いよな」
ハルモニアが何も言っていない時点で許可されているのだろうが、なんとなく嫌なので広がらないように山一帯を風のドームで覆った。
「これなら問題ないだろ」
(ギギギ。助かるね。神に連なる者に効く毒を作れたはいいけどどうしても制御ができなくてね)
「神に連なる者って、それ神獣のお前さんにも効くじゃないか。」
そんな毒作って大丈夫なのか?
(ギギギ。それは問題ない。毒を持って毒を制すというではないか。私の体内の毒だけで相殺出来ている。むしろこの中で戦うクイーンとアルビオンの心配をしたらどうかね?)
かなり自信満々に言っているが言葉からは少し疲弊感を感じる。自分の毒に耐えきれていないのではないか?
おまけに自分から気を逸らすためかクイーンとアルビオンの名前を出したが、その二人にゾゾゾ渾身の毒であろうと効かないことは本人が一番わかっているだろうに。
(アストラ。早いですね)
噂をすればなんちゃら。後ろからクイーンがやってきた。
「お。クイーンも早いじゃないか。まだ集合の時間ではないぞ。」
(私たちは下見を。我が子がどこまで耐え切れるのかわかりませんし。見た感じキツそうな子もいます)
そういったクイーンの後ろにはクイーンの半分ほどの大きさの蜘蛛3匹と足元ほどのサイズの蜘蛛がたくさんいる。
(一番大きい子は私が一番毒に強く作ったのでゾゾゾの近くで護衛することができます。他の子達は毒霧の端の方で漏れが出ないように囲みなさい。)
(了解しました)
そう言って各々が毒霧の中に入ってきた。
「グルルル(遅れたか?)」
毒霧の上空の空間が別空間とつながり、そこから大きい龍の姿をしたアルビオンが出てきた。
「いや。遅れていない」
(ついさっき私たちも着きました)
「グロロロ(それはよかった。ゾゾゾの毒、なかなかいいじゃないか)」
なんの躊躇もなく毒霧の中に入り、暫くしたのち俺の前に姿を現した。
「ガルルル(いい毒だ。これなら雑魚は毒に触れただけで倒れるだろう)」
やはりクイーンもアルビオンも毒の影響はほぼないと見ていいだろう。
毒霧の端の方で巣を張っている子蜘蛛に少し、と言ったところか。
(みなさん!全員揃いましたね。今からここの付近の結界をわざと弱めます。たくさんの異神が出てくるのでお願いしますね)
頭の中に女の子の声が響いた。
ハルモニアの念話だ。
「これから始まるのか。まぁクイーンとアルビオンいる時点で俺の出る幕なんてないのだが」
(それだといいのですが。少し空気の流れが悪く感じます)
「グロロロ(少し胸騒ぎがするな。どこか想定していない変な場所から異神が湧いてくるとかないよな)」
(わかりません。漠然とした、いいえこれは神性?なぜこんなところで?)
俺には神性を感じられないのだが。何も変なこと起きてほしくない。
しかしこの世界に神性は存在しない。その神性はハルモニアのものではないのか?
せっかくこちらから強固な結界の一部を脆くしたんだ。わざわざ打ち破るのにかなり労力のいるところから出てくる訳ないよな?
(みなさん!結界を緩めました。もうまもなく異神がたくさん出てくる ってあれ?!なんでそんなところから?)
何が起きた?全力で探知の範囲を広げたら何が起きたかわかった。
「(他の場所からも異神が出た?)」
何がどうなっている?確かに毒霧の中にも大量の異神が出てきている。それなのに他の場所からも。
「クイーン、アルビオン。ここは任せた」
(任されました。アストラもお気をつけて)
「グオオオオオオオオオ(全員潰す)」
クイーンとアルビオンが異神の殲滅のため毒霧の中に突撃した。
神化を習得したヒュドラでも荷が重そうな異神が何体も現れていたが大丈夫だろう。
「さて俺も異神どもを潰すか。」
異神が現れた場所で一番近いところにワープした。
とある海上
「船長!次の目的地にあと一日ほどで着きそうです。近くに海獣もいないようです」
「そうか。野郎ども!入港の準備だ。港に着いたら宴だ!」
ここは紅の海賊団。最強の種族 竜人族で構成されている世界最大級の海賊グループだ。
今日も近くの大陸から大陸へとたくさんの商人を乗せて移動していた。
この商人とは海賊団お抱えの商人ではなく護衛対象だ。莫大な金をもらう代わりに安全に次の港まで送る。
そして今回も数匹の海獣を追い払って無事に大陸につく予定だった。
ピシッ
「ん?なんだあれ」
「空に穴が空いてるっすね」
「空に穴開くの見たことあるか?」
甲板で寛いでいた船員たちは黒い穴を見つけた。
そう聞かれた船員は首を横に振った。とりあえず報告しようとしたその時だった。
ビシビシと大きな音を立てて何か黒いものが現れたのと同時に緊急を意味する汽笛が鳴り響いた。
「戦闘員以外直ちに魔導船3号に乗り避難せよ、繰り返す。戦闘員以外直ちに魔導船3号に避難せよ」
その指示をだした船長、カーミラは仲間の竜人族たちと戦闘の準備をしていた。
「何もんだあいつは、とんでもないオーラを出していやがる。あたしらが時間を稼ぐから魔導船を使って全力で逃げろ」
「しかし、それでは船長が!」
「うるさい。さっさといけ。副船長のお前が無事に商人を運んでくれ。船長命令だ」
副船長に後のことを任せたのち、カーミラは突然現れた謎のモノを見ていた。
「あの黒いのは何もんだ?数年前にリンカ帝国を襲った異神とかいうやつか?
知性がないと聞いていたが本当なのか?」
すでに異神を囲むように船を配置していて、いつでも魔導砲を打てるようにしている。何か怪しい動きをしたら即座に撃つつもりだ。
「そこの浮いている黒いやつ!何しにきた!」
「・・・・・」
やはり答えない。いや、そもそも質問されていると思っていないようだ。
「答えないつもりかい!なら・・・」
そこから消えな!と言おうとした瞬間、避難のため飛び立った魔導船めがけて異神が飛び出した。
「全艦撃てぇ!!!!戦闘開始!魔導船に一歩も近づけるな!!」
瞬時に魔導砲が一斉に火を吹き、竜人族が飛び出した。
魔導砲は全て避けられたが、カーミラの強烈な一撃が異神の横腹に直撃した。が
「全く効いていないだと!?」
「・・・・・」
「ぐはっ!」
反撃と言わんばかりの一撃が無言で放たれた。
しっかりと構えていたはずのカーミラは吹き飛ばされて、大きな音を立てながら海賊船に落とされた。
「船長!!」
「お前たち、奴らに攻撃を与えつつ逃げ回れ。なんとしてもこちら側に気を引きつけろ!そして誰も攻撃を食らうなよ。 魔導砲も隙を見て撃ち続けろ!」
「「ハッ!!」」
そうしてしばらく攻撃しつつ逃げる作戦をしていたのだが、
「お前たち!!」
「「うぐっ!」」
攻撃してきた二人の竜人を追いかけて首を締め付け、失神したのを確認してから船に叩き落とした。
その影響で船が一隻水没してしまった。
さらに水没した船にいたため海に投げ出されたヒト族の仲間を拾い上げて、勢いよく竜人に投げつける。
「私の仲間に何してくれてんだぁぁぁぁ!!!」
怒りに染まった特別な竜人族だけに怒る凶竜化。身体能力が大幅に上昇するが理性が薄くなるものだ。
怒り狂うと勝手に発動するため日頃から押さえ込んでいるものだが。
「絶対に、ゼッタイニユルサナイ!!!」
先ほどよりもはるかに強力で素早い一撃だったが、異神は軽々と武器である槍を掴み、吹き飛ばした。
そしてカーミラを吹き飛ばした場所に高速で突っ込んでいった。
「船長を守れ!3人で行動しろ!」
「おう!!」
集団で連携して異神から船長から引き離そうとするも、目に追えぬスピードで攻撃され、全員吹き飛ばされてしまった。
「くはっ」
首を締め付けられ意識が遠のく中、カーミラが見えたのは真っ黒い異神の頭だった。
とある夜の山の中
「敵襲!敵襲!敵襲!総員戦闘態勢!!!」
蒼熊団の移動式住居に警報が鳴り響いた。普段から魔法壁を張っているため滅多なことでは警報は鳴らない。
魔法壁にこれ以上ダメージが入ると10分も持たないというときになるものだ。
紅の海賊団の魔導砲すら耐え切る代物なのでこれがなるときは異常事態が起きていることを意味する。
「なんじゃこれ?」
「黒い生き物?これがもしかして異神では?」
蒼熊団の頭領 ドボルクとその妻が話していた。
「これが異神。急いで倒さねば壁が破られる。総員3人一組となって異神を殲滅せよ」
「おう!!」
異神一体一体はそこまで強くない。ただ数が多い。一体倒しても後ろからどんどん出てくる。
「オラオラオラオラ!!!!」
異神は倒しても倒してもどんどん現れてくる。ドボルクは自分の目の前に飛び出してくる異神を薙ぎ倒しながら数で押し切られそうな仲間の手助けをしていた。
しかし、
「いやぁぁ!!」
「お前!!どこだ?!」
妻の叫び声が聞こえたドボルクは今まさに助けていた仲間を放置して妻の方に飛んで行ってしまった。
ドボルクの妻は同じ白虎の獣人で普通の仲間並には戦える。しかし続く戦闘で疲れが出始め一体の異神に苦戦するようになり始めた。
「大丈夫か?」
「あなた!なんでこっちまできてるの!?早く戻って!」
仲間が危なくなったら近くの仲間が助けるのは当然。そして世界最強の山賊と名高い蒼熊団にはまだまだ戦える人もたくさんいる。
そのうちの一人が叫び声を聞いた瞬間即座にフォローに入ったのだ。
近くの人が助ける。これを決めたのはドボルクだ。
だからわざわざ離れている位置まで飛んできたドボルクの行為は無駄だ。そしてそのせいでドボルクが助けようとしていた人たちのフォローが間に合っていない。
「しまった」
急いで戻ったがそこから徐々に崩され始めた。
「ここで崩されてはならん!!!白虎解放!!!」
白虎解放とは秘められた白虎の力を解放するものだ。主に幻獣系の獣人は扱える。
幻獣の力を得るが疲れやすくなり、疲れ切ると全く動けなくなるものだ。ドボルクはまだ10分ほどしかキープできない。
解放をすると髪の毛や豪快な髭などが白く輝き始めた。
「あと10分でケリをつける!!」
白虎の力で腕に雷を纏いどんどんと異神を倒すが一向に減る兆しが見えない。
おまけに長引く戦闘でどんどん多くの仲間が疲れ始め、そのフォローにも多くの体力を奪われ始めた。
「はぁはぁ。あと何人だ?」
チラリと横を見ると全員疲れた顔をして戦っている。そろそろ気合だけで戦うことも厳しそうだ。
それなのに異神は数が減ったようには見えない。
「はぁはぁ。くそ。中には商人がいるのに」
蒼熊団も山の中の安全を提供する代わりに金をもらっている。守りきれないのは蒼熊団の名に泥を塗るものだが。
「はぁはぁ。どうすりゃいいんだ」
カーミラあっさりとやられてるけどめちゃくちゃ強いです




