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始まりの前の話


主人公の紹介編です。

■■■  とある村  ■■■■

「いらっしゃい。魚に野菜、帝都で流行っている肉の燻製。なんでも売ってるよ」


とある村に一人の若い男性のエルフが地面に座り込み物を売っていた。

売り物は小さいテーブルにぎっしりと置かれていて、本人の謳い文句の通りいろんなものが売っていた。


「あら、エルフのお兄さんこんにちは。野菜を買いたいのだけど、珍しい物とかあるかしら?」

この村に住んでいる主婦が話しかけてきた

「こんにちは。そうですね。アイスプラントなんていかがです?」

若いエルフはそう言って青い葉のような物を持ち上げた。所々霜がついている。


アイスプラント

気温が常に0℃を下回る地域でしか育つことのない植物。

ほんのりと塩味がする。生で食べるとひんやりと冷たく夏、特に運動後に好んで食べる人もいる。

安くはない


「最近暖かくなって来ましたし、ひんやりと冷たくておすすめです」

「アイス・・プラント?聞いたことないわね」


主婦は不思議そうに首をかしげた。

それもそのはず、アイスプラントは今いる村から山脈を二、三個こえた地域で育てられているからだ。

この村を統治している帝国の首都である帝都でも滅多にお目にかかれない代物である。


「珍しいからね。ここから遥か北の方でしか栽培されていませんし」

「それじゃ、その野菜はどうやって持ってきたの?そんな長い距離移動させたら大抵ダメになってしまうと思うけど」

「あぁ。私、アイテムBOXというのを持っていましてね。鮮度をそのままで長い距離持ち運びできるのです。一本食べてみます?」


そう言って一本差し出した。


「ん。確かにひんやりしていてほのかに甘い気がするわ。今食べた分はいくらかしら?」

「あぁ。別にお金はいりませんよ。たかだか一枚ですし。無理に買ってもらわなくても構いません」

「本当?そんなやり方で大丈夫なの?お金稼げてる?」

「ご心配なく」


それでも心配だったのか主婦は日持ちのいい芋を買っていった。

5、6個まとめて銅貨5枚だった。市場の基準より3割くらい安かった。



その日はそれ以上誰も買いには来なかった。しかしエルフの男性は日が暮れるまでそこに座り続けていた。



■■■ 翌日 ■■■


「あなたがアイテムBOXを持っているエルフの商人で間違いないかの?」

翌日も同じ場所で客を待っていたエルフの目の前に老人が現れた。


「わしはここの村長を務めておるものじゃ。そなた、いやアストラ様にお願いしたいことがある」

そう言って村長は地面に座り込んで頭を下げ始めた。

「この村を救ってくれないか」





どうやら近頃ワイバーンの襲撃が活発になり農作業ができなくなり帝都に納めるべき作物が作れなくなっているらしい。帝国もこのことは認知しており一時的に納める作物の量を減らしている。

こういう時の対処法は二つある。帝都に滞在する冒険者に退治の依頼をお願いするか、村の場所を丸ごと引っ越すことだ。

ある程度大きい街なら依頼するためのお金を用意できる。小さい村だと少し大変だが村の場所を移すことが多い。

しかしこの村では依頼するためのお金が出せないが、かといって村の場所を移すには人が多い。


「世界を旅する商人のアストラ様にお願いするのも筋違いなことはわかっておるが、何か良い方法を教えてもらいたい」

「確かにワイバーンの退治ってお金かかりますよね。私の知り合いに安くお願いできないか聞いてみますので出せる依頼料を教えてもらっていいですか?」





数日後、アストラさんの紹介を受けたとやって来た人がワイバーンを追い返した。2、3日は繰り返しやってきたがそれ以降は全く姿を表さなくなったのでお金を受け取って帰っていった。




■■■ 村近くの山■■■

「お、ここに巣を作っていたのか」

少し前に滞在していた村から少し離れたところにある山の中で俺はワイバーンの巣を見つけた。

正確には巣だったものだ。

巣は原型をきれいに留めていたがその使用者の姿が全く見えなかった。

ワイバーンの夫婦が巣を作るときはどっちかが必ず巣にいるはずなんだよな。


しばらくあたりを探索してみたがワイバーンが争った痕跡も、ワイバーンが巣から離れるほどの生物が現れた痕跡も見つからなかった。



「そもそもワイバーンが人を襲うこと自体滅多に起きないはずなんだよなぁ。縄張りに入り込んできたとかならともかく定住している人に関わること自体滅多に起きないのに。なぁ、あんたもそう思うだろ。メイド長」


後ろを振り向くとそこには黒を基調としたロングスカートを着て頭に白いカチューシャをつけたメイドさんが立っていた。


「わざわざここまでくるならあんたたちがやっとけばよかったじゃないか」

「我々は帝王様のメイドです。帝王様の命令に従うだけでございます」


帝国という巨大な国を治める帝王に使えるメイドは只者ではない。王の生活のお手伝いから、極秘の命令などなんでもこなす。俺の後ろに音もなく現れたメイドはそういうメイドたちを束ねるメイド長だ。


「執事長が()()()で不在の現在、我々が城を不在にすることは好ましくありません」

「おぉ、怖っ。それで今回はどうしたんだ?」

「帝王様からの言伝です。『前回の金50枚の用意ができた。受け取ってくれ。今回も珍しい酒を飲もうぞ』とのことでございます。それと王妃様からも『私の息子にワイバーン退治などばっかり紹介しないでちょうだい!!勉強の時間がなくなってしまう』とのことです。いつの間にか城から向け出して一時期、混乱状態になっておりました」


「ワハハ。今回は誰にもバレなかったのか」

「笑いごとで済むうちに辞めることをお勧めします。まぁアストラ様が紹介したという時点で問題は起きないと思いますが」

「何か起きたらあんたらが止めてくれるだろ。今回だってあのおっさんの命令で影でこっそり尾行してたじゃん。5人も。」

「ご命令ですので」

「大変だぁ。とりあえず今回の珍しいやつ見つけたから楽しみに待っとけ、って言っといて。メイド長も飲む?」

「私は仕事があるので辞退させていただきます。要件の方は承りました。王城でお待ちしております、それでは」


そう言って音もなくメイド長は姿を消した。

割とメイド長とは仲が良いが仕事モードの彼女は私情を一切挟まなくなる。赤の他人と話しているみたいで少し寂しく感じる。



「一年振りの帝都か。早く戻りすぎたか?まぁいいか。

それよりワイバーンがいきなり巣を手放したことと村への襲撃か。何か関係が・・・・。

まぁ、あのおっさんが解決するから考えなくてもいいか!!」










アストラ=ズルヒィカール 5396歳 男 ハイエルフ

称号  ぼっち商人  ズルヒィカール家当主


スキル  アイテムBOX   話術


持ち物  普通の商人の服   魔神王の祝福されたペンダント   龍神王の呪いのイヤリング

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