73: つむじ風が起こす地崩れ
「千花ちゃん、無理しすぎじゃない?オドの負傷って簡単には癒えないんだよ?」
知ってるよ、そんなこと。
でも元の定義のままだと骨組みが半壊する可能性がありそうな魔法を喰らった。
物質を獲得した状態の物理魔法は破壊された直後は普通の物と変わらない。
骨組みに鉄骨の定義を与えてたからみんな下敷きになっちゃう。
だから速攻で書き換えるしかなかったんだよね。
まあ、完全に成功しなかったから今治療を受けているわけなんだけどね。
「嶺奈ちゃん、心配しすぎ。私、ピンピンしてるでしょ?」
「いや、これもおかしいんだけどね?!普通こんな状態のオドになったら即気絶だよ!だって、ねぇ、心臓を直接殴られて凹んでる、みたいな状態だよ?!」
「その例え大丈夫?それだと私死んでない?」
「た、確かにそうだけど、それくらいヤバいよ?!オドが歪んでるんだから!!」
「えー、物理的な存在がないオドが歪むってよくわかんないんだけど?」
「何言ってんの?!今、自分の身体の状態分かってるよね?!それに嶺奈だって知らないよ!!!歪むって何?!」
うん、まあ。
左肩を中心に、身体が歪んだ。
痛いわけじゃない。
むしろ、治癒されることの方が辛い気がしている。
まるではじめから異型の腕だったかのように。
腕だけじゃない。
左目の視界はおかしい。
視界に映る自分が自分じゃないからって言う話はその通りなんだけどそうじゃない。
視界自体もおかしい。
多分だけど、仄葉ちゃんの魔象が、私が構築した基盤魔法を通して、私のオドにまで影響したってこと。
もしくは、私の物理魔法の確度が高くて、基盤魔法が自身を保つためにオドに負担をかけたか。
初めて聞いた。
オドの損傷が、身体に物理的に影響するということも知らない。
私が読み漁ってきた文献にこれらのことが書いてあるものをみたことがない。
今分かることは、このレベルの強力な影響のある魔法がサクッと放たれたこと。
仄葉ちゃんを悪魔から解放する。
これが今の私たちが目指していること。
でも正直私は無理だ。
身体的にもそうだけれど、私の心には恐怖が生まれ始めている。
心底、鍛え上げてきた魔法が物理魔法でよかったとも思っている。
非物理魔法は、燃え上がるような心でいる時、威力が上がることが多いが、物理魔法はそうでない。
非物理魔法は、苦しい時悲しい時恐怖で震える時、発動すらままならないことが多いが、物理魔法はそうでない。
理屈が普通の物理を大幅に超えるようなものでなければ、より安定して確実に発動する。
前線で戦うタイプだったら即離脱ものの負傷。
無理だと思いつつも、みんなのために形を維持するだけでいい。
だから、恐怖と共存しながら、ここで踏ん張る。
それだけ。
それだけなんだけど、またこのレベルの魔法がとんでくるんじゃないかって思ったら、今すぐ逃げ出したい、そんな恐怖。
事実、身体が、身体じゃなくなった。
このままここにいたら人外になっちゃうんじゃないかって。
嶺奈ちゃんが脂汗を顔に貼り付けながら、魔法を掛けてくれているけれど、『私』が治っている感じはない。
···
絶望とも恐怖ともわからない感情が私のなかに満ちていく。
でも物理魔法をとめるわけにはいかない。
みんなが、したじきにならないように、、、
「 かち ?!ま て!!! ひ た ら!」
れなちゃんがなにかいってる、、、
でも、いつまたこんなまほうがくるかわからない、やりきらなきゃ、いしきがきえ
······




