表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/78

6: 蛇と蛇と蛇と蛇と蛇と蛇と角蛇

皆さんいかがお過ごしでしょうか。

私は元気です。


 あの妙な夢を見た5日後、あの時会った大蛇の事をふと思い出す。


(そういえば、あの夢の中で大事なことを言われた気がするんだよなぁ)


 今日も今日とて土曜授業で、竜にたたき起こされ、必死に準備して、頑張って登校して、やっとの思いで学校について、教室に入って、廊下側の一番後ろの自分の席でぼけぇっとしていたら、ふっ、と思い出した。


(なんだったっけなぁ、蛇、蛇、蛇、蛇、蛇、蛇、蛇)


何か言われたことを思い出そうとしても、なぜか、蛇の漢字が邪魔してくる。


「ほの~、どったの?なんか、さっきから魂が抜けたみたいになってるよ~」


「さきぃ~。いや~、なんかね、蛇なんだよ」


「へび?」


「うん、蛇」


「英語でSnakeの蛇?」


「そう。ラテン語でAnguisの蛇」


「…えっと、細長くて足のない爬虫類の蛇?」


「そう。ポルトガル語でCobraの蛇」


「えっと、、蛇なのね?」


「そう。ドイツ語でSchlangeの蛇」


「どうしたの?!ほの~!!しっかりして~!!」


咲が私の肩を掴んでグラグラ揺する。そこに、海璃和が来る。


「ヘビがどうかしたんデスカ~?」


「うん。蛇なんだよ」


「?えっと、英」


「ミリア!聞かなくていい!さっき聞いたから!」


「あっ、そうでシタカ」


「とりあえず、竜探してきて!」


「竜は確か、剣道部の朝練に連れていかれてマシタ」


「マジで!?どっ、どうしようミリア!ほのが壊れた!!」


(なんでそんな騒いでんの。壊れたって何よ!ただ蛇の言い方を。。。なんで?なんでっ?!私は、蛇蛇言ってんの!?)


急に自分が客観的に見てやばそうなことが分かって、思わず悲しみが襲う。


「う”っ、う” う”っ、私はっ、壊れた蛇っ!」


「こっ、今度は泣き出した!!」


そんな私に、教室中から奇異の視線が私に突き刺さる。


「そっ、そんな目でホノを見ないで下サイ!ホノっ、とりあえず保健室に行きましょう!そこでお話聞きマス!」


「蛇っ!!」


(うんっ、って言いたいのに!!)


「「これは、やばい」デス」







 客観的に見てやばそうな私は、ふたりに連れられて保健室につく。ぱっと見先生は見当たらない。


とりあえず私をベッドに寝かせた咲は、

「先生!大変です!!あっ、高2C組31番紫岸咲です!えっと、クラスメイトの宮椋仄葉さんが大変な事になったので連れてきました!」


「あら~、どうしたの~?」


素っ頓狂な声を出しながらバックから出てきたのは保健室の先生である、小日向友奈先生。


優しさがにじみ溢れるが、物凄い天然力を持っていることから、好き嫌いが綺麗に分かれるタイプの人だ。


生徒からの評判は好感48%、嫌感48%、興味がない4%と、しっかり半々である。


「今日学校に来るまでは大丈夫だったんですけど、教室に来てから様子がおかしくて!蛇のことしか言わなくなっちゃったんです!」


(間違ってないけど、改めて言葉にされると物凄く悲しい!)


「仄葉ちゃんはどこ?」


「とりあえずベッドに寝かしておきました」


「分かったわ。そろそろホームページでしょ?先生に任せて♡」


「ホームページじゃなくてホームルームですが!ほのをよろしくお願いします!」


また悲しくなって来て涙が溢れる。


「う”っ、う”うっ、、、、、、、ぐすっ」


「あぁっ、ほのっっ!後で来るからね!」


「ほらっ、サキっ!いきマスヨ!」 ズルズルズルズル


咲が海璃和に引き摺られながら教室に帰っていく。


(ありがとう~っっ!!)


言葉にしたいけど、蛇っていいそうだから心に留めた。





「仄葉ちゃん、大丈夫?」


 こくっ。


 言葉を出したら蛇っていいそうで怖いからジェスチャーで答える。


「話すことも難しい?」


 こくっ。


「どうしたものかな~、これじゃあ問診も出来ない。触診とかの感じだと体そのものには問題なさそうだから頭の問題かな。」


(そんな風に言わないでぇ~、もっと悲しくなる。)


 ぐずっ。


鼻水が垂れる。


「あらあら、鼻水垂らしちゃって!ちょっと待ってね!どこかな~、あっ、この書類やらなきゃ!」


 がたっ。


…………


(えぇっ?!マジか!!ちょっと!鼻水!)


既に先生は天然パワーがフルスロットルのようだ。


突然の放置に焦る。


(どうにかして伝えないと!)


 バンバンバンバンバンバンバンバン!


ベッドで暴れて物凄い音を出す。


(気付いて!お願い!)


…………


気付きそうに無い。


………


(というか、別に熱で寝てるわけじゃないから自分で取ればいいか。)


そう思ってベッドから起き上がる。


暴れて、その上で歩いているから、鼻水が始めの倍以上出ている。


(あぁ!あったあった!)


ティッシュの方に向かって小走りする。


ティッシュを取る。


 しゃっ     がしっ


 突然掴まれたので、そちらの方を向くと、垂れた鼻水が勢いよく般若のような顔の友奈先生の方に飛んでいく。


ベチャっと、先生の頬に付く。


(あっ、ごめんなさい)


「なんで起きてるの??寝てなさい!」


そう言うなり、私を突き飛ばす。


「あっ」


(えぇ~っ?!なんで突き飛ばした~っ!!あっ、じゃなーい!!)


 どごんっ


床に強く打ち付けられて、私は鼻水を垂らしながら気絶した。







 急に物凄い重力を感じて、


「ほのっ。起きてっ♡」


咲のその耳元で囁くような声で私は目覚める。


目の前には、咲の少し赤い童顔。


どうやら、体と体をぴったり合わせるように私の上に乗っているらしい。


「あっ、ほの!気付いた!!」


「ぐふっ」


咲が急に起き上がるので、咲の全体重が一気に腹部にかかる。


「咲っ、降りてっ、苦しい」


「あっごめん!よいしょっと。先生呼ぶね。せんせぇ~!!ほのが起きました!」


するとカーテンが開き


「よかったぁ!!ごめんね仄葉ちゃん!死んじゃったかと思った!!危なくこの学園を追い出されるところだったわ!」


先生が現れる。


「それどころか逮捕だと思いますけどね!!」


と、突っ込んだところで蛇の呪いが解けていることに気づく。


咲も気づいたようで、泣き顔で

「ほのっ!蛇じゃない?!」


「うん!蛇じゃない!!」


「「やった~!!」」


「えっ?どうしたの?何がなんなの?頭大丈夫?!」


「大丈夫です!先生に言われたくありません!先生こそ逮捕されないように気を付けてくださいね!治ったみたいなので教室に帰ります!!ありがとうございました!!」


状況のよく呑み込めていない先生に言いたいことを早口で言って、悪魔から逃げるように教室に帰った。







「ホノっ、大丈夫デスカ?!」

教室に入ると海璃和と竜が出迎えてくれる。


「もう大丈夫!!蛇から解放されたよ!」


「よかったわ!蛇しか言わなくなったって聞いていたから心配していたけど問題ないみたいね」


「竜!心配かけてごめんね!もう大丈夫!」


「それにしても、急にどうして蛇しか言わなくなったのかしらね。」


「あの~、チロちゅんは関係ないんデスカ?蛇で思い出しまシタガ、ホノのベストパートナーはチロちゅんデス!」


「あっ、もしかしたらそうかも」


(そうだ!使い魔!そうそう!『加護に祝杯を』!あと、、貢物!あと教えないほうがいいんだろうな、これ全部。あぁ~、思い出せた!!すっきり~!)


急な達成感にあふれて、顔に出ていたらしく


「なにやら達成感に溢れているわね。しっかり思い出した!って顔しているわ」


「えぇっ?どんな顔?それ。まぁ、間違っちゃないんだけど」


「やりまシタネ!ミリアのおかげデスネ!誉めてくだサイ!」


「おぉ~よしよし!」


「エヘヘ」


「まるで犬ね」


そんな風に話していると2限の本鈴が鳴って、楽しい楽しい世界力学の授業が始まった。







 最近のテーマは能力、つまり、魔法が使えるとか使えないとか魔術と魔法の違いとか異常能力(異能)の存在についてだ。


私と咲は魔法が使える。


海璃和は、比較的少ない存在である異能の所持者だ。


ちなみに、海璃和が異能持ちであることは、私しか知らない。



 何故隠さないといけないのか。


それは、異能がとても不安定で強い力であるからだ。


一種の病気みたいな物で、誰にでも発症する可能性(もちろん可能性は低い)がある、突発的後天性の能力である。


原因は、6次元体の粒子らしい。


能力の種類によっては、発症した際に発症者がその力を制御出来ずに暴発するのことがある。


制御するのに時間がかかると発症者の周囲は大変なことになる。


それ以外でも暴発することはあるので、注意が必要である。



 もう一つの異能の大きな特徴は、特別な制限がある、ということだ。


よくある順に並べると、年齢制限(22歳までetc)、能力制限(魔法が打てる但し焔属性のみ、人に乗り移れる但し5秒間のみetc)、代償制限(使う度に寿命が減る、使う度に内臓に損傷が入るetc)(制限が掛からない場合はオドが汚れる)、使用回数制限(50回までetc)、使用環境制限(水中でのみ使用可能、怒りを感じたときのみ使用可能etc)。


多くの場合、これらの制限が複数掛かっている。



 海璃和の場合は、暴走しても周りが対処できるタイプの能力なので、皆に教えてもいいのだが、如何せん、汎用性が高く、且つ強い。


なので、悪用が簡単である。


その上、本人が騙されやすい性格である故に、パパさんからも本人からも出来るだけ周りに教えないで欲しいってことで、ここまで守ってきた。


どんな能力かっていうと、簡単に言えば、物を無から生成する能力である。


制限は恐らく能力制限と環境制限、回数制限だろう。


作れるのは見たことのある人工物で、海璃和が「必要だ」とか「作りたい」と思わないと発動しない。


発症はパパさんの話だと4歳の時らしい。


年齢制限は私の知るもので発症から長くて8年なので、よほどレアなケースじゃない限り回数制限だと思っている。


年齢制限も回数制限も掛からない事例を知らないのでそう思ってるだけだが。


心配なのは本当に制限がこれだけか分からないことだ。


あれだけ強い力だから、もっと強い制限が掛かっていてもおかしくない。


海璃和が片言演技をしてるのは、演技に集中すれば、能力の発生を抑られると思ったパパさんからの提案らしい。



 だから、この際、咲と竜には教えて海璃和の回数をなるべく減らしながら対応策を考えた方が良いかな、などと考えている。


咲に教えてないのは、咲が海璃和と2人だけだと調子に乗りやすく、その結果、良くないことが起きるのが目に見えているから。


竜に教えてないのは、能力罰として、軽口が発動したときにその事を誰に話すか分からないから。


ちなみに、能力罰っていうのは、その人の持つ先天的な能力の高さに見合った個人個人にある欠点のことで、咲は服従姿勢(精神オド疲労又は悲壮感・苦悩を感じている時:解除条件 罵倒)、竜は軽口(満足感・幸福感が高いとき:解除条件 不快感を得たとき)、私は(精神オドが極度に疲労している時:解除条件 睡眠)裏人格らしい。


成立・解除条件に関しては私の推察でしかないから本当にそうかは分からない。


咲には服従姿勢のことを教えてない。


周りに迷惑がかかる種類じゃないし、可愛いから。


それとは別に存在罰というのもある。まだ、名前しか知らない知識でしかないけど。



 私は授業を聞きながら、お父さんに教えて貰ったことを復習する。


ついでに、関連することと皆を結びつけながら、定着させていく。



 そうこうしているうちに2限が終わり、3限の物理を少し真面目に受けると本日の授業は終わり。



帰宅部の私は、部員の海璃和を連れて家に帰った。



 ちなみに咲は射撃部で、竜は剣道部。







「あー、土曜授業なんてなくなればいいのに!」


「仄葉は怠け者だね。」


 海璃和は、片言演技じゃない、素の口調で私を諭す。


今、シェアハウスには、私と海璃和二人しか居ないので演技してない。


普段元気いっぱいな子を演じてるだけあって違和感があるが、シェアハウス生活が始まって早4年、流石に慣れた。


こんな美しい、いや関係ないか。

こんな凛々しくてお姫様のような女の子が、騙されやすいなんて思えないというくらい、美しい。

いや、関係ないか。


むしろ、Sっ気すら感じる。

これも関係ない。。。


「海璃和は思わないの?」


「学生は勉強しなきゃいけないんだよ。」


「真面目だね~」


「当たり前でしょ?じゃ、復習しに部屋に戻るね!」


「うーい。ファイト~!」


 リビングから部屋に向かう海璃和にテキトウな声援をかけて、天井を見上げる。


「そうだ。私もチロちゅんにあれやってみよう。」







 部屋に戻った私は、チロちゅんを召喚。


「いでよ、我が魂の導く者よ。」


 ポフン


 紫の鱗を纏い、羽のような刺を2本持つ、頭に乗るくらいのサイズの可愛らしい蛇が白い煙の中から現れる。


「久しぶり!!チーロちゅん!」


(あぁ、このスベスベ感!堪らん!)


 大会以来呼んでなかったので、ざっと一週間ぶりといったところだ。


あの夢を見てからすこぶる心身ともに調子が良くて、チロちゅんという癒しを求めてなかった。


 なんとなく、本題に触れるのが怖くて、どうでもいいことを質問してみる。


「チロちゅんはしゃべれるの?」


チロちゅんは頭を左右に振る。


「チロちゅんを遣わした人とは夢の中で会える?」


チロちゅんは頭を上下に振る。


「チロちゅんは魔法を使える?」


チロちゅんは頭を少しかしげて、斜めに振る。


「斜め?ってことは、使えると言えば使えるけど、条件がある的な?」


チロちゅんは頭を上下に振る。


「チロちゅんのご主人はやばい奴と思う?」


チロちゅんは全力で頭を左右に振る。


「うんうん!…よし。」


緊張が取れたところで、本題に入ることにした。


深呼吸する。


………


『加護に祝杯を』


 私は唱えた。


すると、チロちゅんが暗い虹色に輝き始め、何かを食べたそうに私を見つめる。


「あっ、貢ぎ物か」


 私が髪をチロちゅんの前に差し出すと、


 はむっ! 「きゃっ?!」


 勢いよく、私の髪を5㎝ほど食べる。


暗い虹色の光りが収まる。


すると、


「ようやく呼んでくれたな」


と可愛らしい声なのにおじいさん臭い口調でチロちゅんが喋り出した。


「えぇ~!!何その声!カワイイぃ~」


 でも、私の意識はその口調よりも、どっから出てるんじゃ!と言いたくなるくらい可愛い声に注がれていた。


「ちょーキュンキュンするんですけど~♡やばい~♡」


「おい、少しよいか?」


ベッドでのたうち回っている私にチロちゅんは引き気味な感じで声をかける。


「何!チロちゅん!」


ハイテンションな私は、チロちゅんの前へダイビング正座をして可愛い声を拝聴する姿勢になる。


「とりあえず落ち着こうか」


「いや、無理でしょ!こんな可愛い声に落ち着ける人は居ない!!」


「うるさいと、その豊かな胸を戴くぞ」


「豊かな!!そんなことないけど!いたっ、戴かれちゃうの♡!分かりました♡」


 プチッ


「はぁ、落ち着いたか」


 プチッ、プチッ、プチッ


「って、何をしておる!!」


「えっ、私を戴くんでしょ?だから服を、」


「阿呆なのか?ボタンを外すのをやめろ!」


「えっ、これから食べ合うんじゃないの?」


「馬鹿なのか?!ええい!面倒くさい!“ρεΛ”」


「ぶぉヘェーっ!!」


…………


強烈なボディブローを喰らわされる。


刺がお腹に食い込む。


「いったーい。。。」


「よし。落ち着いたな。まあ、半ば呼んで欲しくてやらせた感はある。 故に我も謝るとしよう。本当に申し訳なかった」


「えっと……何のこと?」


「今日の午前、お主の思考が蛇に染まったのは我のせいだ」


「あー!あれ!あんたのせいだったの!あー!そうですか!!クラス中から忌避の目線を集めた珍事件の犯人はお前かい!!」


「あんただのお前だの失礼だが、今回は赦すとしよう。今回の貢ぎ物も特例的に返上しよう。我がお主と話したかったからな」


そう言うと、私の髪が急に元の長さに戻る。


「おぉ、戻った」


「それより聞きたいことがあるんだが」


「それよりも、って何よ!私の評価が変人になったのよ!!もう!」


「だからすまぬと言っておるだろう!」


「それで!何?!聞きたい事って!」


「お主が話をっ!……はぁ、面倒くさいなぁ。人間とは。まあ良い。我が聞きたいのは、お主の過去についてじゃ」


2020/5/10 色々訂正しました。


2020/8/25 サブタイトル付けました。


2021/9/14 少し付け足し


2021/10/27 『加護に祝福を』じゃなくて『加護に祝杯を』でした(-_-;)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ