66: UFOではないかもしれないかもしれない
何というタイミング…、今日は激しめのトレーニングをしてしまったから皆の体力もかなり消耗しているはずだ。
このままでは、皆が危ない。
最悪死者が出てもおかしくない。
今は兎にも角にも、魔波レーダーマップを見なければ。
俺は急いで所内に戻り、十弩君に案内されマップを見る。
日本の領空に入るか入らないかといったところか。
レーダーマップ端に捉えたのが大体10分前とすると時速80kmくらいか!?
沖縄から東京が大体1600kmつまり仮にここに直接飛来する場合は約20時間で到達する。
ひとまず、メンバーは速やかに帰宅してもらって、休んでもらうしかない。
俺は急いで所を出て演習場に戻る。
息も整えず、俺はメンバーに向かって話す。
「皆、まず落ち着いてくれ。今すぐ戦闘という事にはならないので安心して欲しい。しかし、検知した存在がこの地に到来するまで20時間という試算がでた。」
まあ、予想通りざわついているな。仕方ない。
「落ち着いてくれ。そういう事なので、速やかに帰宅し、休憩して欲しい。仄葉かどうかは分からないが、上位メンバーは国からの要請で出動する可能性が高いので、そのつもりでいること。その他のメンバーも、覚悟を決めておいて欲しい。すぐに市内の緊急避難警報が出ると思うが、その際に周囲の人の沈静化や誘導の際には協力してほしい。」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
「しばらく気を張りっぱなしな状況になるが、落ち着いて対応してほしい。最近の皆の成長は目まぐるしい。自信を持ってくれ。それでは解散。」
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ひとまず学生は帰せた。
俺のできることを速やかにやらねば。
もしかしたら、メディアから連絡が来て会見をしてほしいといわれるかもしれないが、ないことを祈るしかない。
まずは研究所としての発表をしなければならないな。
とりあえず、現状で分かっていることを学部生にまとめてもらうか。
チャットツールを開く。
[@学部生
現状で検知した存在のことで分かっていることを協力してまとめてください。
一旦19:00にYoutuneで発表できるようにしてほしいので、枠取りと簡単なカンペの用意もお願いします。]
それが終わり次第、『宮椋仄葉救助団』の今日招集していなかった非戦闘員の招集と戦闘ベースの構築が必須。できれば重機の運搬と最終メンテ依頼、といったところか。
こちらも研究室メンバーに頼もう。
[@院生
非戦闘員学生の招集と今できる戦闘用意やその指揮をお願いします。]
[@教授陣
戦争学部に重機・武器のメンテ依頼を出してください。
武器の方は、メンテが終わり次第、こちらに運んでほしい旨も伝えてください。
もし渋られたら、いつになら受け取れる状態になるかの確認もお願いします。]
一旦はこれでいいか。
いやしかし、仄葉の方からやって来るとは全く考えていなかった。
ただ、問題は、というより、問題しかない。
ひとつは、この国すべてを滅ぼすように動かれるのか、直接この地に来るのかわからないことだ。
楓くんが憑依している悪魔の野槌に聞いてくれたという話によれば、悪魔は人間の個人情報を自由に閲覧できる、という話だった。
そして、悪魔は人の絶望を糧に生きているから、周辺人物の排除は効率がいいために優先される、という話だった。
スカイツリーが倒されたのも、多くの悪魔の食料を供給できるから、という話だった。
それの影響なのか、一時期からかなり悪魔による被害はなくなった、というニュースを見た。
これらを信頼して、迎撃する形に訓練を積んでもらった。
だから共同研究を進めていた、迷子発見器とオド瞬時測定器の件のうち、迷子発見器のプロジェクトは中断し、
オド瞬時測定器に全力集中してもらう体制を作った。
少なくとも、迷子発見器を諦めたのは良い判断だったが、直接この地に飛来しない場合は、その他のことがすべて空振りになる。
ひとつは、そもそも、オド瞬時測定器の開発も人間から悪魔を切り離す方法の研究も終わっていないということだ。
それはつまり、戦闘になった際に仄葉の状態を何もわからないということ。
一切の情報がないまま強大な敵と対峙し、かつ、倒さずに弱体化させる。
ゲームなら残機があったりセーブできたりリスポーンしたりできるわけだが、そんなことはできない。
おそらく、国の機関も察知して気づいているとは思うが、彼らが倒す前に、こちらで捕獲するところまでいきたい。
仮に捕獲できたとして、人間と悪魔を切り離す方法がないから、国の機関の手で処分される可能性がある、ということだ。
かなり絶望的だ。
ひとつは、仄葉の力が未知数、ということ。
そのためにオド瞬時測定器を開発しようとしているわけだが。
さておき、元からG-級の対人補助魔法を使えていた仄葉だが、抽象魔法を学んだこちらのメンバーの中に、仄葉に匹敵する力を手に入れたメンバーが居ないことだ。
逆説的に仄葉の魔法使いとしての素質が高すぎるということが改めて分かった。
本当かどうかは分からないが、国の機関にもそのレベルの人物は一人も居ないらしい。
最悪、この国は終わる。
今のところ、海外含め、滅亡したというような情報はない。
まあ、これについては、悪魔の食料が人間の絶望であるという点から、滅亡するレベルの破壊がされるはずがない、という説で否定できるわけだが、それにしたって、死人0で終わるというのは無理だろう。
ひとつは、そもそも仄葉でない強大な悪魔の可能性があることだが、そうなったらもうどうしようもない。
それこそ、国の機関にどうにかしてほしいものだ。
国からの依頼で出動する可能性もあるわけだが。
バンッと突然室長室のドアが開け放たれる。
「博士、ニュースに仄葉さんらしき影が確認された、という速報が出ています!」
「なに!?」
・・・
「いや、驚くようなことではないか。当たり前だな。しかし、目視できる程度の高度で飛んでいるのか。」
「ひとまず休憩室のTVをみてください。」
「わかった」
促されるまま休憩室に移動する。
〚沖縄方面の海に悪魔が確認されました。悪魔は沖縄周辺に降り立つ様子はないそうです。現場のTVクルーと通話できる準備が整ったようなので、伺ってみましょう。現地リポーターの鈴木さーん?聞こえますか?〛
〚はい!こちら鈴木です!それでは情報をお伝えします!カメラさん、悪魔の方を向いて、あ、はい、これで見えますかね、大分日が落ちているので見えづらいですが、最大倍率で映して、立派な翼と尻尾がなんとか見えます。通報をくれた方にもお話を伺ってみましょう。それではよろしくお願いいたします。〛
〚よろしくお願いします。〛
〚あのような高高度の飛翔ですが、どのように見つけられたのですか?〛
〚はい、星の観察をしようと思って望遠鏡を用意していたんです。それで、調整するために除いたら見慣れないものが飛んでいると思って、拡大してみたら女の子の悪魔だったんです。銀髪っぽいロングの髪までは見えました。〛
〚なるほど、ありがとうございます。ちなみに、星の観察がご趣味だということで伺いたいのですが、悪魔が飛んでいる方向は分かりますか?〛
〚えっと、大まかには南西方向だと思います。本州に向かっているように見えますね。〛
〚なるほど!ありがとうございます!ということで、本州に向かっていると思しき銀髪女子の悪魔が飛んでいることを現地からお伝えしました。スタジオにお返しします!〛
〚はい、鈴木リポーター、ありがとうございまし〛・・・・・
銀髪女子か。仄葉である可能性が高まる情報だな。
そして、すぐに破壊活動をしているわけではなさそうだ。
ほぼ確実にこの地に直接飛来するだろう。
これもなおのこと仄葉である可能性を高めるな。
「国営放送はなにか言っているか?」
「チャンネル変えます!」
〚お伝えしておりますように、魔法魔術省から悪魔警戒警報が発令されております。17:02現在、本州に向かって強大な力を秘めていると思しき悪魔が移動しているようです。現在、どこの地域にも被害は出ていませんが、通過するまで屋外に出る際は十分に注意してください。少しでも危険な予感がしたら近くの建物に避難してください。〛
「ありがとう。すでに出している指示事項をこなしてくれ。」
「「「承知しました。」」」
さて、そうなると、問題と思っていた点がかなり潰れたことになる。
あとは救助団の実力と仄葉の実力がどれくらい拮抗するかだが、こればかりは分からないな。




