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65: 備わったばかりでは

全員の演習が終わった。

もう皆、完成されてる。

あとは博士たち、宮椋研究室の先輩方、がホノの居場所を突き止めるのを待ちながら力を磨き上げるだけ。

そして、悪魔からなんとか開放して、ハッピーエンド。

あたしが、ホノが、そして、皆が笑顔になれるはずの、幸せでいていいハズの未来を手にしたい。

いつになるかわからないけど。


周りは疲れ果てた2Aメンバーとその他2年生、あと1年生がいる。

前半戦で練習戦をした大人や大学生は平常に戻ってる。

反省会や感想戦をして、実力のほどを確認してるみたい。


かくいうあたしも、ミリアの戦闘が終わった後も疲れが残ってる。

体力の限界まで魔法を使う機会なんて、現代にある方がおかしい。

世界大戦があったのは数世紀も前の話で、経験者などとっくの昔に天国に送られていて、歴史の教科書か魔術的遺物、博物館でしか知ることが出来ない。

ファンタジー物でよくいるエルフみたいな種族が実在してれば、知っている存在もいたかもしれないけど。

それこそ、『世界の奪取と放射(ワールドスイッチング)』で最近ガーゴイルみたいな存在とか、虫人の皆さんとか、悪魔だとか、異形だとかがが転送されてきて、ファンタジーとリアルの狭間、みたいな感覚にはなったけど、もうすでに慣れてしまった感はある。

もっと身近で言えば、使い魔なんかもよくよく考えるとファンタジー味があると、最近やっと思えてきた。

多分、おしゃべりできるようになったからだとは思うけど。


ぽふっ。


脊髄反射連想ゲームをしてたら、誰かが後ろから優しく体にもたれかかってくる。

とても軽い。

同時にピロンとチャットが来る。


[お疲れ様!]


楓だ。


「お疲れ、楓。体の調子は?」

[全然大丈夫だよ。むしろ、咲の方が大変だったよね。私なんか、体がなくなったから"疲れる"感覚忘れちゃったしね。]

「もうそんなに馴染んだんだ?まだ2週間も経ってないけど。」

[うん、むしろ、本当の自分になったような感覚さえあるね。まるで、実体がないのが本当だったかのような。それでいうと、咲は咲で人外味より増した気がするけど?]

「そうかな、あたしはただドラゴンっぽいイメージをまとっただけの魔法を使ってるだけだよ。さすがに精霊様には人外さで叶いませんわ。」

[精霊様やめて。恥ずかしい。それにしても、そっかぁ。頼もしい限りではあるけど、あの火力には流石にビビったね。あの時は流石に、余波で溶けるんじゃないかって思ったよね。]

「ありがと。最後の爆発はドラゴン全然関係ないけどね。というか、やっぱり声出す方が大変なの?さっきの戦闘中、久しぶりに声聞けて嬉しかったけど。」

[そうだね。結局、今の私って、砂鉄みたいな粒子の集まり?みたいな存在だから、声を出す器官は実際のところなくて、声として聞こえているなら、それはコントロールの効いていない音魔法みたいなイメージだね。とっても感情的になった時に、無意識的に発されてるだけなんだよ。あの時は、本当にやばそうな魔法をやり始めたから、その驚きの高さが魔法を発動させたんだね。その内、また声で対話できるようにしたいけど、今は仄葉ちゃんを助けられるような力を磨きたいよね。]


人外味。

それは、楓、あたしだけじゃなく、この救助団に所属しているみんなに当てはまる、と勝手に思ってる。

ついさっき終わったミリアの戦いもまるで神話を見ているような感覚だった。

ミリアが機械の神なら、天瞳さんは魔法の神といったところ。

この訓練期間でミリアが劇的に親交を広めていて、その中で、2Aのイタ女こと甘代ちゃんも、魔物の神と言って差し支えない。

我らの風紀委員長は守りの神、楼駕くんと廉谷ちゃんは大地の男神と女神、納嵜くんは破壊の神、といった具合に、正直、ミリアの周りに居る人が全員神に見えてくるまである。


そんな天瞳さんの魔法ランクが学年3位なんだから、2位の蓮村委員長、1位のホノがどれだけ異次元の力を持っているのか、全く想像できない。

これは皆言ってる。

なにせ、蓮村委員長の本気っぽい攻撃魔法は今回の演習で初めて見たばかりだし、ホノのに至っては、攻撃魔法自体がレア。

攻撃するときはいつも道具を作ってるし、ホノの希望科目がそもそもサポート系しかなかったりと、授業でみることすらない。

悪魔に乗っ取られた直後に戦った時には、攻撃魔法っぽい力を発揮していたっぽいけど、全部見たことないから、多分悪魔の力。

まあ、このランクも、4月の健康診断と一緒に計った結果だから、今の私たちの正確な序列を表しているとはちょっとも思ってない。

でも、それでも想像ができないことには変わらない。


特にホノ。

抽象魔法を習い始めて、あたしを含め、魔法使いと元異能者のみんなの力が上がった。

それでも、ホノがそれ無しでやって遂げていた、G-級の補助魔法に匹敵するかもしれないくらいの力を付けた子は元から上位ランクだった人くらい、つまり、支援系メンバーを含めて200人近い救助団の内の1割も居ない。

G-級の補助魔法は教科書的に言うなら「欠損部位の再生、部位のはく奪」。

つまり、腕を生やすことも奪うこともできるくらいの魔力と想像力・知識がある、と判定できていた、ということ。

それが、悪魔の力で他の方面に使われる可能性が高いということ。

今どこかに居るホノは、ホノの自力だけじゃなく、悪魔自体の能力も加味された状態なはず。

仮に純粋に補助魔法の方面がそのまま強化されて1ランクアップし、G+級になっていたら、勝負にならない。

なぜなら、教科書には「死者の蘇生、生者への死を強制」と書いてあったから。

それが攻撃魔法に全振りされていたとしても「一撃で国を壊滅」。

どちらでも1ターンで"終わる"、最強状態。

あたしの8位だって本当は高いはずなのに、その上との差が大きすぎてもう良くわからない。

あたしがこの順位の理由は瞬間火力が高いことと、自由度の高さ。

それだけ。


「それで?何か用?」

[何か用、って、ちょっと冷たくない?]

[いや、まあ、みんなお疲れの様子だし、私ひとりじゃつまんなくて話し相手が欲しかっただけだけど。]

「あーね。え、じゃあ今の楓の仕上がり具合でも聞かせてよ。」

[え、いいよ。]

[まあ、さっきの練習で分かったとは思うけど、(咲がテレポートっ)(ていってるやつ)の精度がビタビタになったのが一番大きいかな。結局、私は基本的に直接攻撃するタイプの存在じゃないし。いわば、現場指揮官みたいな。中間管理職なのよ。だから、私専用の電脳空間内で、収集した色んな情報を高速処理して戦術指揮部のみんなに分かりやすい形に変換して送って、その回答、つまり、指示を的確に実践メンバーに送ったり、自分にできる範囲の攻撃なら自分でやったりするわけなんだけど、それのロスタイムがほぼなくなるくらいには、高速処理と高速連携ができるようになった。つまり、大分理想的ってワケ。]

「え、めっちゃ凄ナイ?」

[そうでしょ!(˶• ֊ •˶)]

「うん、だってさっきめっちゃ翻弄されたもん。優秀な現場指揮官だよ!」

[褒めすぎ~!(,,>᎑<,,)]


「博士!!!!」


「何!?びっくりしたぁ。」

[十弩先輩、なんかめっちゃ焦ってない?]


たしかに。

今の十弩先輩は明らかに顔面蒼白で、見てはいけないものを見つけたような顔。

研究室の方面から、見たことない全速力で走ってきてる。

マンガみたいに、足をくるくる回して。

運動ができない人が全力で走っている姿は滑稽だけど、そんな姿を少しでもクスッと笑ったら雷が落ちてきそうな緊迫感(オーラ)を持ってる。

そんな、まるで戦争でも起きるんじゃないかっていうレベルの焦り具合。


「博士っっっ!!!!!!」

「どうした、十弩君、そんなに焦って」

「焦ってください博士!!!!魔波レーダーマップで高速で高高度を移動している巨大なマナ反応を持つ存在を確認しました!!!」


!!!!!!!!!!!!!!


もしかして、ホノッ!?!?!?!?

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