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5: まどろみの体とうつつの心

5/10 色々訂正等しました。


8/25 サブタイトル付けました。

………………

………………………


(んっ、  あれっ、ここどこ?さっき、パジャマに着替えてベッドに入って、、寝た、はず。)



(視界ははっきりしないけど、何か新築の建物みたいな臭いするし、何か冷たい感触もする。でも、何か懐かしい雰囲気もある。夢とは思えない現実感もある。)



(あっ、幻術!?誰かに、、いや、ないか。ここまで強い幻術を使えるのは家には居ない。とすると、やっぱり記憶が飛んだ?ベッドに入った記憶は合ってて、それがシェアハウスじゃないだけって可能性はある。その場合、可能性があるのは実家か。それ以外ならお父さんの研究所。いや、でもどっちも新築じゃない。)



(そもそも、ベッドに入ってなくて、殴り倒されて気絶してる間に視界だけ奪われたって可能性もある。手は縛られてないし、手探りしても目元に何かある感じはしないとすると視界遮断系の魔法を掛けられた?近くにドアでもあるのかな、何か騒がしいし。)



(ちょっと探知で周囲を探りつつ、、いや、何かに巻き込まれて捕まってるとしたら魔法感知系の魔具があってもおかしくない。ああいうのは確か、ある程度の魔素(マナ)密度にならないと感知できないはずだから、最小限の魔力で何とか出てみよう。もしかしたら、皆も捕まってるかも。)



 そう思って、早速、自分に“気配鋭敏”のバフを掛ける。



(うーん、そうだな、割と広い空間にいるみたい。足音も最小限に、壁沿いをゆっくり移動しつつ、どこに何があるか調べてみよう。)



(…。そうねぇ。これは、机?こっちは椅子ね。こっちはベッドかしら。おっ、何か突起物がある。……ドアノブ?よしっ、これで第一難関いけるか?)


 一回バフを解いて、今度は“音遮断”をドアのロック部分とその周辺だけに、そして、“機構破壊”をドアノブの根本らへんを狙って掛ける。


(ドアノブは安全に外せたけど、やりすぎたか?…でも、警報も聴こえない。これなら、もうちょっとやれることは増えそう。じゃあ、“気配鋭敏” “聴覚補助”をかけて、早めに探索を…)


「「Coviride!Coviride!Coviride!」」


(!?何かの呪文?もしかして気づかれてる!?)


一度、魔法を解除する。



(はっ、何か強力な魔力を感じる、、多分、目の前に壁か何かを作られた。やばい、これじゃあ時間の問題だ、突破しよう。)


“広範囲探知” “スキャン”


(やっぱり、前方に魔力の塊がある。この感じは、多分自然系統の魔法。硬さはない。消費魔力はなるべく抑えたいから単純な物理攻撃で行こう。あと多分だけど生き物は3体。2体は多分魔法が使えない。そのうち片方は異能使い。手首にマナ感知器がないのにオドが結構汚れてる。もう1体は、魔法を使えそう。でも、魔法使いと異能使いを倒せば無能は逃げるだろ。)



(っていうか、そこそこ魔力使ったけど全然ばれてないや。なんだこのガバガバ具合。ばれたわけじゃないのか。なんかの練習でもしてたのかな。)


(まあいっか。じゃ、最後に武器でも作ろっ。)


“呪杖召喚” 

“形状変化 斧+槍 対象:呪杖”

“形状変化 線対称:八方向 対象:呪杖” 

“複製 対象:呪杖”


(よし。一気に決める!)


 目の前の壁をドカンとぶち破り、ザクっと二体の心臓を貫く。


「なっ」


「あっけない。なに?逃げないんだ?死にたいのね?」


「くっ、くそ!ボスに報告しないと!このくそ女め!」


「殲滅、ふふっ。じゃあ、二つの何かの死体はブラックボックスにぶち込んでおこう」


「お前ごときに主は倒せn」


「うるさい」


「「ぐはぁ!」」


特製の槍をもっと差し込んで、そのままブラックボックスの中に放り込んだ。


(まだ生きてたか。とりあえずさっきの部屋まで撤収しよう。)







(とりあえず、周りの安全は確保できた。多分、すぐボスとやらも出てくるだろう。さっさと倒して、みんなを探そう。視界がないって辛いわね。探知魔法維持するの大変だからすぐ止めたいけど、そうもいかない。いつどこから来るかわからない。)


呼吸を整えて、集中を高める。


…………

…………

…………


(ん?何か来)

「うっ」


前の方から、なにか、飛んできた。それと一緒に壁にたたきつけられる。


「だぁっ、、、、うぇっ」


(なっ、なに、どこから、、、もう一回!?)


 ドォン  ガラガラッ


 今度は、避けられた。


《全く、煩わしい。なぜ、我がこのようなハエ払いをせんといかんのか》


 突然、頭の中に言葉が入ってきた。


(これは、テレパシー?!)


「誰っ?!あたなは、ボスとやらなの?!」


《お主か。こんなところまでやってきたのは。》


「姿を現しなさい!」


《目の前におるではないか。あぁ、そうだったな。この空間に入ると人間は視界を奪われるのだったな。仕方がない。制約を一時的に解除してやろう。》


 何かがそう言うと、突然、目にわずかな光が入る。


目を凝らすと、目の前には化け物がいた。


六つの目。


二つの口。


血が滴る巻角。


てかてかと暗い虹色をきらめかせる鱗。


太長い、足のない体。


背骨のあたりに並ぶ魚の背びれみたいな突起。


そんな蛇の化け物が目の前にいた。



「う”ぉぉぇっ、ぶぉぇぇっ、うぇぇぇっ」


 あまりの不快感に思わず、吐いてしまう。


胃の中全てが空っぽになりそうなくらいに、勢いよく。


喉の途中で引っかかる嘔吐物で気持ち悪くなって、さらに吐く。


吐く。


吐く。


吐く。


頭がくらくらする。


胸が痛い。


《お主が姿を見せろといったのに、その反応はあんまりだ。まあ仕方ないがな。んん。何故か見覚えのある姿じゃな。そこの小娘、我と会った事はあるか?》


蛇が話しかけてくる。


でも、その(テレパシー)を聞くと、気持ち悪くなる。


「う“ぇぇぇぇっ。」


出るものもなくなった胃から、胃液が吐き疲れたぐずぐずの食道を通って吐き出される。


《返事も出来ぬのか。さっさと片付けるとするか。その無駄に強そうな外装をさっさと剥がすとしよう。》


   “●Д∈”


「ぐはっ」


 何かのダメージを食らって、固い地面に打ち付けられる。


意識が飛びそうなくらい激しい痛みが襲う。


   “*ЮЩ”


「あ”づっっ」


レーザービームのような攻撃が腕を焼き切るように襲う。


(予備動作が分からない!!)


 何の前触れもなく現れる魔法に滅多打ちにされながら、痛みによって逆に冴えてきた意識で観察する。


   “_Γε∧” “∞∧∨”


「う”っ、う”っっ、う”ぁっ」


 上から、何かで押さえつけられ、動けない。


不規則に上下して、呼吸を乱される。肺がつぶれそうになる。


「あ” あ”っ」


圧迫感から解放されると、今度は蛇の尻尾に締め上げられて口から臓器が出ていくような感覚に陥った。


(とにかく、回復しないと!)


《させぬ》    


   “$>ДεΩ●Дε∧@”


「があああっ」


尻尾から解放された瞬間、見えない何かに脇腹を抉られるような強い衝撃を受けて、そのまま壁にめり込んだ。


《ん?何故貫けない。。。未成年の女の子供には、不釣り合い過ぎるこの魔力は何じゃ。》


 痛みで嫌悪感から抜け出した私は考える。


 どうやら心の声が聞こえるようだ、なるべく感じない(・・・・)ように判断しないといけない。


素早く考える。


深呼吸して、とりあえず少し


“回復”


 探知魔法じゃ対応できない、消費も維持も大きいけど、これくらいしないとやばい、


“行動予測 対象:蛇の化け物”


 さっきの武器を使おう、


“武器再読み込み 対象:直前”


《おっと、情けない。相手に考える隙を与えてしまうとは。》


そう言う蛇に向かって駆けだす。


次に来る焔の塊の攻撃発生位置の少し前に止まって、


“構成 氷壁”

“効果付加 反動 対象:氷壁”


焔の塊は発生して少しこちらに向かった後、倍のエネルギーを持って蛇の方に跳ね返る。


   “●¦※∨”


《なんと強い意志。あれだけの嫌悪感を痛みで拭って見せたか。その上、反撃まで。》


 蛇は、喋りながら魔法を消した。


“身体能力向上 対象:脚”


 魔法が消える時の霧に紛れて私は大きく飛び上がり呪杖を突き刺す。


 はじかれる事は分かっている。


“幻影 対象:自分”


 分身を作って、揺さぶりをかけよう。


 私自身が、前に出て攻撃しよう。


“複製 対象:呪杖”


   “>Σ∋∽”


呪杖がはじかれる。


私は、そのバリアみたいなものの下に潜り


“帯電  対象:呪杖”


それで、蛇の体をなぞる。


《いい痺れだ》


“突風 向き:前”


そのまま一度距離を取る。


電気が効いた。純魔法は貫通しない。物理を試そう。。


“帯電  対象:瓦礫”

“爆発  対象:瓦礫  向き:後ろ”

“繰り返し 3” 


電気を帯びた瓦礫を、複数、蛇に向かって射出する。


2つは防がれるはず。射出した、瓦礫に乗る。


  “Σ∋Σ∋”


2つの瓦礫が壊れると同時に、瓦礫から降りて


“形状変化 大斧 対象:呪杖”


斬擊を喰らわす。


蛇に、小さな窪みと私一人分の切り傷ができる


《んんん!なかなかにいい判断だ。》


効いた。


よし。


   “¶§§‐δη^H±°” “δЙ”


《そろそろ、お遊びもお終いとするか》


 突然、私の体が浮いて拘束された。やばい、気、抜いちゃった。


(!?!?体が動かない!?)


《流石に動揺するか。まあ、少し話を聞きなされ。視たところ、お主はやり手の魔法使いの様だ。認めようしかし、誰かに操られている。始めは魔力が大きすぎると思ったのだ。お主のオドとは異なる周波数の魔法が少し溢れておった》


「突然何の話!?意味わからないことを言ってないでこれを解」


   “Э” “ηI”


「がはぁっっ!!」


 体が胸あたりから不自然に曲げられ、肋骨が割れる。


肺がつぶれる。


自分の吐いた血反吐が雨のように自分に降りかかる。


首は、締め上げられて、息ができない。


《少し黙って聞きなさい。他人の話は最後までよく聞くことだ》


(ぐぅっ、ぐる”じい!ぐる”じい!死”んじゃう!!だずげでっ、ざぎっ!!)


《手短に話してやる。つまり、無理やり私と闘わせられている。最近、其方の身に不思議な出来事はなかったか?もし、思い当たる節があるなら、我に告げよ。》


   “БЖΞ”


 突然、体が楽になり、痛みも全て消えた。


温かさすら感じる。


落ち着いた。


でも、意味が分からないことをグダグダ言われて、感情が激しく揺れて、感覚がおかしくなって、頭の中はぐちゃぐちゃだ。


「…えっ、えっと、なんでしたっけ」


《お主は、何かに巻き込まれている。其方の身が危ない。最近、其方の身に、意図しない不思議な出来事はなかったか?》


急に優しくなった蛇に戸惑いながらも、何とか答える。


「…えっと、、そうですね、ちょうど、昨日の事なんですけど、普段なら激情しないことにものすごく反応しちゃって。あっ、あと最近変な夢をたびたび見ます。」


《…そうであるか。数奇な運命に乗っているようだ。もしかすると、既に何度かここで会っている可能性もあるのか。お主は誰かに操られている。それだけは忘れないで目覚めてほしい。一部、記憶は消させてもらうが、何かあればお主の使い魔に声を掛けてみるとよいその時は、『加護に祝杯を』と述べ、其方の魂の一部分を奉げよ》


「髪の毛、でも、大丈夫、ですか?」


《問題ない。あぁ、言い忘れておったが、我は先ほど其方を見覚えがあるといったな。思い出した。其方は我の使いと共に下界で過ごして居る。分かるだろうか。我によく似た者を召喚していないか?》


 こんなキモイ蛇召喚した覚えは…、蛇、あぇ?


「…えっ、もしかして、それってチロちゅんのことですか!?いやっ、チロちゅんはこんなにキモくない!!」


 チロちゅんっていうのは、私の蛇の使い魔につけた名前。


《キモいとは失礼な。まあいい。思い当たる奴が居るなら、そ奴で間違いない。おっと、そろそろ時間切れかの。其方の愛する妹が傍に居るだろう》


(妹?あぁ、咲かな?背、ちっちゃいし。)


「そう、ですか」


(見守っててくれたのかな。嬉しい)


 思わず笑みがこぼれる。


《我も其方を見守る存在としていてやりたい。いつでも声を掛けなさい》


「はっ、はい。ありがとうございます。」


《うむ。ではさらばだ》


 蛇のその言葉を切っ掛けに、私の意識が蛇から遠ざかっていく。


   “δΓ∨”  “MΦ°”  “◎〈Φ°”

   “○〈°°°”  “ ∞〈°”


まるで、羽根に包まれて落ちていくかのように、


やさしく、

やさしく、

落ちて、、、







ゴチン

  

  「「いった~~っ!!!」」


 目の前の咲と頭をぶつける。


咲の可愛い顔が近くにあってドキドキする。


幸せ。


(疲れた。変な夢だった!…夢で疲れてるってこれでオド、回復するの?それにしても、私うなされてたのかな。咲は、多分だけど見守ってくれてた。)


「いてて。おはよう、ほの。元気になった?」


「うっ、うん。(咲の天使フェイスのおかげで)元気になったよ。おはよう」


「じゃあ、リビング行こっか。」







%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%







「博士、今回の実験は初の失敗ですね」


「途中で同期が強制停止して対象を見失いました」


「それとは、別件ですが今回は違う意味でも失敗です。シェアハウスの中を監視していましたが、博士の準備が甘いせいで、前半、仄葉さんは夢遊病のように屋内を破壊していました。“認識齟齬”をうまくかけて乗り切りましたが、めちゃくちゃでした。」


「…そうだな。失敗続きだ。しかし、観測結果は上々だ。もう少し、データが欲しい。あと最低三回だ。」


「しかし、博士も仄葉さんも限界です。特に仄葉さんは、博士の高位魔法の多重行使のせいで許容以上の負担がかかり続けているのでおかしくなるのも時間の問題です。それに加えて、この感じは恐らく気づかれています。なので別策を考えた方がよろしいかと。」


「それは絶対だな。。これから生まれてくる全ての人類のために。この世界の運命を変える大魔術を成功させるのに必要な代償として、この名声と権力は既に大きい。私の全霊と仄葉のあの過剰な魔法能力を代償にして、必ず魔法を発動させて見せる。」


「でも、本当によろしいのですか?仄葉さんは彼女が愛する博士がいなくなった世界で、自分の強みの魔法を捨て去られて生きねばならなくなるのです。それが、仄葉さんにとって幸せだと思われるのですか」


「何を今更。後悔はない。しかし、もうすぐだ。この世界の住人が傷つくことは減り、魔法使いが存在罰におびえることもない。犯罪も減るだろう。人は、少しだけ他人を思えるようになるだろう。異能力者はいなくなり、その暴発に巻き込まれる人も居なくなり、その能力を持ったがゆえに人生を狂わせられるということもなくなる。」


…………


「初めて、ここまで綺麗に神に近い存在を観測できた。これを知識としてため込めば、それ自体も魔法発現の代償になる。あと少し。このプロジェクトのためにあと少しだけ、君たちの娘も貸しておくれ。」


「博士、その観測できた存在について詳しく聞く気はありません。最後の確認です。本当に、私たちの娘は普通の人間として戻ってくるんですよね。全てが終わった後、仄葉さんと一緒に楽しく過ごせるんですよね」


「あぁ、もちろんだ。約束する。それに、仄葉は優しくて柔軟で優しい子だ。魔法がなくてもみんなと幸せに暮らせるだろう。あと、私が確認した存在を聞く必要はない。それでは、君たちも犠牲の対象になるからな。200年前の魔術師が周りの人間を巻き込んだのは、必要以上の知識を周りの人間に教えてしまったからだ。被害は最小限にしたい。だから、君たちの技術力だけ貸してほしい。」


「はい。分かりました。」


「それでは、今日はこれで解散とする。」


 そうして、若城大学世界力学研究所のメンバーは研究室を後にした。


 その研究室の壁には、こんな垂れ幕がかかっていた



     過剰な力は世界の破滅を導く。

        すべての現象は、

     人を幸せし、そして傷つける。

        幸せを求めるなら、

   そのために犠牲を払わなければならない。

        ならば、私たちは、

    少しでもその犠牲を軽減させるために、

        全ての人のために、

        身を粉にして働き、

      我々の過剰な力を犠牲にし、

   血肉、脳を十二分に使うことをここに宣言し、

       それを実現するまで、

     歩みを止めないことをここに誓う


暇でしたら、蛇が魔法を打った時の記号を解読でもしてみてください。無理だと思いますが。


5/10訂正に関して補足です。

  蛇が魔法を使った時の記号“Θ”を“η^H±°”に変更しました。訳は意訳で『限定空間の時間停止』です

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