61: オーバーオフウォー
最後、かぁ。
なんで私なんだろう。
いや、分かっている。
自由度の高さ、高威力で安定した火力、一人で二人、召喚魔法に近い効果のある能力、と少なくとも4つの理由で大トリを飾ることになった。
そんな私の対戦する模擬チームは。
学年2位の学力を持ち、学外活動の結果、美人高校生星空案内人でSNSでもてはやされている、視力に関係する異能者である、水仙 百合が率いている。
一見こういう戦闘と無縁そうに見えるけど、趣味で宇宙船バトルゲームにハマっているらしい。
近接系戦闘者は3人でみんなクラスメイト。
ラグビー部キャプテンで、今年の全国大会で1位に導いた、異能者でも魔法使いでもない平津 力。
クラス1の体躯に、アニメ・マンガでしか見たことのないようなイガイガフルアーマーを着て参戦。
学年12位の学力で、宮椋研究室の納嵜先輩の弟、納嵜 凱。
兄弟そろって異能者というあまり聞かないステータスのクラスメイト。
凱くんの能力は右手で触れているものを変形させ、左手で触れているものを破壊する、変わった能力。
凱くんと私の能力はメタ的に対照的なので、かなり注意したいメンバー。
合気道部で今年の全国大会TOP8の成績がある、クラス1の武闘派女子で、鉱物を自在に利用できる異能を持つ廉谷 一佳。
普段の練習の感想。
合気道との相性、抜群過ぎでは?
遠距離系戦闘者は8人で、その内5人がクラスメイト。
弓道部で全国大会4位の実力の音尾 仁奈。
射手としての実力もさることながら、大手企業の娘ということで、個人で別荘を買って広大な弓練習場を建てて趣味的に実力を高めた弓道変人。
廉谷さんに劣らず、上半身がムキムキ。
その2つの要因か、一般的な弓道の的までの距離の十数倍の距離の的に、これまたオーダーメイドの弓矢でスーパーロングショットを決める動画でバズれた天才だ。
魔物召喚・使役とかいうファンタジー色が強すぎる異能を操る、学年学力10位のペットショップバイト、甘代 巫禾々。
異能が発現するまでは普通の女の子だったらしいけれど、発現してからというもの、厨二思考がとまらなくなったらしい。(本人談)
本人の姿・声が可愛らしい系なだけに、そのギャップがすごい。
どんな魔物が出るかは完全に運で、持っても最長1週間とのこと。
この能力のよい相手として私と対戦している可能性は高い。
学年魔法ランク10位の、無機物系の物質操作に長けたサポート系魔法使いで、華道部所属の楼駕 華彗。
絶対に初見で読めないキラキラネームは自虐ネタとなってしまっている。
咲の練習戦闘でいう、藍琉ちゃんと真由紀ちゃんの関係と同じく、廉谷さんの異能発動源となる無機物資源を生成できる。
噂によると、廉谷さんと楼駕くんは付き合っているらしいが、真偽は不明。
出席番号が常に1つ違う(今のクラスだと45,46)上に中等部からずっと同じクラスだったとかでお互い意識せざるを得ないみたいな腐れ縁らしい。
学年魔法ランク5位の防御魔法が得意な魔法使いで、物を透過させることが出来る異能まで持っている、我らの風紀委員、真波 正斗。
『我らの風紀委員』というあだ名の通り、正義感が強いわけだけれど、頭が固いわけじゃない、そんな優しい我らの風紀委員。
プライベートで法律系の検定を取りまくっているらしい。
学年魔法ランク3位の魔法使いでありながら、学年13位の頭脳まで持つ、天瞳 乃婭。
大抵の魔法を標準より高度に使いこなせる上に、オドの許容マナ総量が桁違い。
威力で圧倒という感じではなく、平均的な制圧力と制御力で継続戦闘をする感じ。
竜の練習戦闘では学年魔法ランク2位の魔法使いの蓮村委員長がいたけど、本気を出していなかったらしいし、この作戦の目標兼最大の敵である学年魔法ランクトップの仄葉の本気の攻撃魔法はシェアハウスのメンバーも含め誰も知らない。
救助団での練習では、メンバーが"見える気"ことマナの塊の圧に慣れるために、素魔象を出す役割をこなすこともできた。
だから、天瞳さんが本気を出すようなことがあったら、私どころだけじゃなく、周りの人も失禁しちゃうかもしれない。
超怖い。
練習でそんなことはしないと思うけど。
あとの3人。
名前は忘れた。
2Bの魔法使いの女子。
この救助団で一番デバフのコントロールがうまい。
たまに仄葉に教えを乞うていたらしい。
今作戦で高1唯一の魔法使い、1年生最強の魔法使いの1Aの男子。
伝え聞いた話だと、仄葉に片思いしてるらしい。
1Aの弓道部の女子。
仁奈ちゃん推薦で今作戦に参加。
弓道部所属である一方、弓道の心得はなく、マイナーな弓競技の子で、弓の練習をするために所属してるとのこと。
上方向に打って山なりに攻撃をしたり、複数本の矢を張って打ったりなど、曲芸的なコントロールができる。
そんなほとんどバケモノの11名で構成されるエリート集団。
いくら私の能力が自在すぎるからと言っても、これはやりすぎなんじゃないんだろうか。
いや、ないか。
「はじめ!」
一瞬の不安で生まれた自問自答が終わると同時に掛かる号令。
と同時に展開される、巫禾々ちゃんの召喚陣。
私も一緒に武器を生成。
12人(13人)が構える舞台に登場しますは。
5体の魔物。
太くて短いヘビ、耳が長すぎるウサギ、人の2倍のサイズのクモ、人が乗れるくらいのオオカミ、人の肩に乗るくらいのマンタ。
「今日の魔界はあまり騒がしくないらしい」
かわいく響く痛々しいセリフ。
どうやら強い子達は来なかったみたい。
そして、私が生成しますは4種の道具。
電磁狙撃銃、半自動防御装置付きモビリティボード、マナ稼働式自立ロボット、マナ稼働式小型ドローン。
日々『魔法の収容と変質』が行われているのか、私の能力は少し変わった。
体の寿命を犠牲に魔素から物体を創造する力から、魔素から物体を創造して僅かな血を犠牲に意思を与える力へと。
そして、設計図を“使う”と簡単にできるようになったこと。
でも、誰も変化に気付かない。
私の能力だけの話じゃない。
本人の能力の変化すら。
『魔法の収容と変質』の影響には個人差があるのは間違いないが、私がなにか異質なのかもしれない。
というわけで、他のメンバーより厚い防御を装備し、味方を召喚する。
戦場は今までのどの練習戦闘よりも賑やかで殺気に近いオーラが強い。
すぐに、ロボットとドローンに指示を送信する。
ロボットは水仙チームの方へ、ドローンは上空へ移動する。
特に博士から台数の制限は受けていないので、とりあえずロボットは5台、ドローンは4台、生成した。
ロボット兵装は、機関銃と電磁パルス銃、ロケットランチャーで、不得意な距離が無いように設計している。
防御面は咲の普通の魔法を耐えられる程度。
さっきの戦闘の割と本気っぽい抽象魔法は耐えないと思う。
ドローンは偵察用だけれど、小経口のデバフ系魔術弾を備えている。
機動力重視だから、急所に厳つい一発が入るだけで粉粒と化す。
まあ、壊れようがなんだろうが、私が貧血にならない限りは生成し続けられるから、心配事では無いんだけれども。
私自身は不得意な距離はない。
そうなると、優先的に倒したいのは、メタ的に辛い納嵜くんと作った機械を簡単に壊せる能力が多い近接組。
遠距離組は我らの風紀委員が守っていることを考えると崩しにくい。
先手をとっていながら粉末になっている機械達を後ろから眺めながら、電磁狙撃銃を構える。
そして、相棒に声を掛ける。
「じゃあ、シュニー、頑張ろうか」
『やっと声が掛かったよ!まったく、うちのご主人は私の扱いが雑なんだから!!!』
「主人じゃなくて、相棒、だよ。いつからそんな関係になったの?」
『いや、なんとなくね、海璃和がこんな戦争みたいな采配してるから、つい、ね。まあ、竜と咲みたいなことにはならないと思うけど、かましてやりますか!』
「わざわざ二人を引き合いに出さないの!まあ、やる気があるのは嬉しいけど。」
『ごめんごめん。まあ、貶す意図はないから!やったるぜ!!』




