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58: 魔王軍のヒーロー

そういえば、委員長の強い魔法が来ていない気がする。

何をしているのだろう。

あの剣崎さんの要塞の中で何か準備しているのかもしれない。

しかし、今私が攻め入ることは無理だ。

銃眼から魔法が付与されている矢やら弾やらが飛来している。

どれも進行を阻害するような代物。

氷の効果弾を足元に着弾させて転ばせようとしたり、麻痺矢で一時的に部分的に動かせなくなったり、閃光弾で目くらまししてきたり。

そもそも命中率がいいので、模擬弾や摸擬矢であってもあたり所によっては単純に痛い。

破魔の刀の効果範囲内に発射物をとらえることが出来れば魔法効果は打ち消せる。

が、相も変わらず不利な状況だ。

その最たるものとしての城があるせいで、魔王の城に攻め入る勇者のような役回りになっていて、周りの一部の男子から羨望の眼差しで観られている気がする。

魔王芳田のやり方が姑息な感じが相まり、まさにファンタジーな感じだ。


と、不意に城の門が開き、中から、銅くんが出てきた。


(ふ、普通に出てきた!!!)


思わず声に出してツッコみそうになるのを抑える。

気配を消していたのは、奇襲をかけられるかもしれないと、思わせるための戦略だったというわけだ。

銅くんから攻撃的な気配を今は感じられる。


「普通に出てくるんかい!!!」


咲のツッコみが聞こえる。


そして、出てきた銅くんは特に変わった様子がない。


ガンッ


(もう目の前に居る!?!?)


まさか、蓮村委員長は銅くんにバフを沢山盛っていた!?

なるほど、芳田さん、策士だわ。

確かに、私に直接魔法をぶつけるのが相性上良くないというのもあるが、それでも、仄葉のように感覚系をいじるデバフ系魔法や剣では払えない風圧などの圧力系魔法を使うなども選択肢があったはず。

その中で、あえて蓮村委員長をこういう使い方できるのはこの中では芳田さんくらいしかいないと思う。

それも、こういうお互いの手を知り合っている中でないと効果がなさそうな采配は本戦でできないと悟って、半分余興っぽいこの演習でやってくるあたりもいろいろ考えていそうで末恐ろしさを感じる。


さて、今は銅くんとの闘いに集中しなければ。

得物は西洋剣に近い剣。

さっきのファーストインパクトの重さは速度が乗った故だけでない重さを感じた。

相当重いのだろう。


今も銅くんは爛々と剣を振り下ろす。

刀と剣の打ち合いの音はあまり心地よくない。

私も負けじと弾き返そうとするが、剣の重さだけでなく、銅くん自身の剣の振り方もあって、刀でどうこうできるパワーじゃない。


たった数度の打ち合いだが、このまま腕も手も疲労困憊になるわけにはいかない、と思うレベルで筋肉が悲鳴を上げている気がする。

私は刀を握り続けられなかった。

いや、正確には、握り続けようとしなかった。

私は今の5度目の衝突寸前のタイミングで刀を離した。

銅くんは勢いが付きすぎているので、そのまま降り下げた勢いを殺しきれず、転ぶ。

銅くんの剣は、深々と地面に食い込んでいる。


(いや、怖い、、、、)


そ、そうなることを見越して、私は銅君の体に片足を乗せ、離した刀を掴みなおし、銅くんに全体重を乗せ、刀を首元に向かわせる。

銅くん視点から見た私はおそらく、魔王軍の女幹部のような感じで見えているだろう。

銅くんは、転んだ恥ずかしさからか、顔を真っ赤にして。


「ふ、負傷判定貰ったので、足をどけてほしいです、椿嶋さん」

「はい、お疲れ」

「お、おう」

「いつにもましてオドオドしててキモイわよ」


私の言葉でさらに赤くなりそそくさと退場していった。

気をとりなおした瞬間、巨大な火の玉が。

ここで!?

巨大な魔法の場合、この刀でも払いきれない。

即無効にできる範囲が刀の5cm程度、魔法の中央部分を8割程度消滅させると残りの部分も即消滅する。

多くの魔法は、魔法が向かってくる向きに対して、X45度Y45度に入刀し回転させながら前進して切ることで、消滅させることが出来る。

しかし、今撃たれた委員長の巨大火の玉は頑張って自分が生き残る隙間を作るのが精いっぱい。

刀を斜めにし魔法に向かってとびかかる。


なるべく自分が通りやすくなる穴が出来てほしいと願いながら、魔法に穴を空け、勢いを殺さないようにできた穴にとびかかる。

私もしっかりとした防具を付けているので、明らかに燃えすぎていなければ負傷判定にはならないはず。


無事通ることはできたものの、流石に完全に通れる穴が作れるわけもなく脚に火魔法が延焼している。

刀でパンパンとすれば、ほぼ消滅。

純粋な炎がチラチラしているが、走っている間に風に乗った土とかが消化してくれるだろう。

ということで、帯炎しながら私は突撃を開始する。

少し動揺して射線が安定していない子がいるみたいなので、全力でそっちに駆ける。

そんなに広いフィールドでもないので、100mほど走れば目的地には付けそうだ。

その子のフォローをするべく、射線の数が増える。


約20秒間、矢・弾の嵐をなんとかかいくぐり。


目的の銃眼に無事たどりつく。

物理魔法という名前ではあるが、魔法である限り、この刀は無力化できる。

逃げているのか穴が開いている銃眼に刀を通して、3振りほどすればその部分だけ魔法が解けてスゥと中に入れる。

目の前で構えるのは2Bの射撃部の女子。

剣銃タイプのものを持っていて正確に私の首元を狙ってくる。

危ういところをギリギリ避け、素早くカンカンと2打ちして、3打ち目は力量差で弾かせてもらい、チェックメイト。

神楽伊さんや銅くんのようにわざわざ負傷判定を貰ったことを口にせずに、そそくさと手を挙げながら退場していった。

退場際の独り言が聞こえたのだが、「椿嶋さん相手に2打ちできた!?まじか、というか怖かった、、、」と言っていた。

まあ、初実戦なら当たり前の感想。


即援軍が来る。

同じく2B射撃部の男子。

ショットガンタイプだったので、ワンチャン即負傷判定の可能性もあったが、2射されたが、自分が横を向いたのと拡散が噛み合ったのか負傷判定にはならなかった。

3射目前に一本。

その後、関本くんが矢を近接武器として使って近接戦を繰り広げようとしてくれたが、流石に「弓で近接はあかんて」と言いながら、退場していった。

確かに、銃と違って近接弓はゲームでもない限り無理そうだ。


そして。

どこからか夢野副委員長の花火が狭い空間に放たれた。

その数瞬後、爆発音とは異なるドドドドドドドドドという音が聞こえ。

身体にいくつもの弾がたどり着いていた。

そして、無線から。


「竜くん、お疲れ。負傷判定だ。」


私は役割を終えた。




宮椋博士の言葉の数秒後、花火の霧が晴れると、ヒーローの登場シーンのような影が。

剣崎さん、布祇(ぬのぎ)くん、夢野副委員長、2Bの魔法使いの男子と、蓮村委員長。

レッドポジションに蓮村委員長、委員長から見て右に銃口から煙を出しているアサルトライフルを持つ布祇くん、委員長から見て左に夢野副委員長、布祇くんの右に剣崎さん、副委員長の左に2Bの男子。

恥ずかしそうな剣崎さんとは対照的にノリノリな4人が決めポーズをとっている。


「ふふ」


思わず笑う。

雰囲気的に、布祇くんがブルーで、夢野副委員長がイエロー、2Bの男子がグリーンで、剣崎さんがピンク、いや、ホワイトのような感じ。

意外と様になっているのがよりツボに刺さる。


「あはははは!」


堪えきれずに、思い切り笑う。


「いひひ、椿嶋さんもこんな風に笑うんだね!いい収穫だ!」


とは夢野副委員長。


「成功だな。芳田さん。」


とは蓮村委員長。


(ん?芳田さん?)


笑いながら顔を上げると、学級委員コンビの二人の間から、ボスが登場する。

静かに芳田さんが出てくる。

あまりのニチアサ具合にさらにツボって、私はしばらく笑っていた。










笑いが収まり、しばらく感想戦、もとい、談笑をしていた。


そろそろと芳田さんが近づいてきて。


「最後はゴメン」

「え、何のこと?」


正直、私は謝ってほしいと思ったことはされていない、と思っている。

この発言にびっくりしたのか、芳田さんの目がまん丸になってリスみたいになっている。


「え、だって、竜さんは剣道やってるし、奇襲的な卑怯なことは嫌いなんじゃないかって思ってたから。」

「なるほど、でも、別に嫌な気持ちはなかったわよ。もともと勝てるなんて1%くらいしか思っていなかったし。」

「そっか、ならよかった。最後のヒーローシーンは、もし竜さんが嫌な気持ちになってたらあれで笑ってもらって誤魔化せるんじゃないか、みたいな意図もあったから・・・」

「なるほどね。急な思い付きだったの?」

「いや、竜さんが乗り込んでくるパターンの時の最後のシーンとして、皆に伝えてた。」

「!?」


と、いうことは、ほぼ芳田さんの手の平の上だった?


「す、すごいわね!」

「やっぱり気分は良くない?」

「いや、むしろ畏怖すら覚えるわ。あなた、魔王のセンスあるわよ。」

「ま、魔王!?魔法を使えないことも突いてくる高度なイジリ?!」

「違うわよ。その戦略性を褒めているの。」

「う、うん、分かってる。ちょっと思いついちゃったから行ってみたかっただけ。あ、ありがとう。」

たまにギャグを言いたくなる芳田さんの感性、かわいいわね。

「剣崎さん、恥ずかしがっていたけど、どうやって説得したの?」

「私は説得してない。副委員長がめっちゃ引くくらい前のめりにノってくれて。剣崎さん、副委員長の圧には負けちゃってた。あの時の演出は副委員長の花火がいい感じに活かせたのと、実は剣崎さんの物理魔法がいい感じに噛み合って、・・・」


なんてしゃべっていると、件の剣崎さんが。


「あ、竜ちゃん!あの、さっきの、ポーズ!!!絶対に忘れてね!!!!」

「どうしようかしら。むしろあの恥ずかしがりながらも少し楽しそうな剣崎さんが居たから微笑ましくてジワジワ来て笑っちゃったのよね。今一番頭に残っているわ。」

「え~!?なんでよ!?今すぐ!今すぐ忘れてよ~!!!」


そんなほのぼのエンドで私の演習のターンは終わり。

このあとは数十分の休憩・整備後、咲と海璃和の演習ね。

私のとは打って変わってド派手な戦闘のはず。

どうなるかしらね。

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