53: ぼのぼの曙ぼんぼんぼん
もう、春になりそうな、心地よい晴天。
少し雲はあるけど、ひつじ雲とかいわし雲とか、雨雲になるタイプの雲じゃないから、嫌な天気じゃない。
むしろ、綺麗な空になってるって思う。
あたし的にはカーディガンを羽織ってればちょうどいいくらいの気温。
そんな2学期も中盤。
今日の最後の授業、篝屋先生の世界力学の授業中。
篝屋先生は本当に教え方が下手。
あたしみたいなアホには半分もわかんない。
だから、窓の外を見て、黄昏てる。
もうちょっと噛み砕いてほしい。
「我々が認識している世界とは意識中心の六次時空間であり、第五次元の意識軸は認識しているだけであって・・・」
じゃ、魔法の実力でA組にいるあたしには良く分からない。
それはいいとして、相変わらず宮椋博士から吉報は届かない。
研究室としての成果ばかりで、ホノのことは未だに何も分かってないらしい。
そうなると、今日の放課後も特にいつもと変わらず、ホノ奪還のためのトレーニングをすることになる。
今日は火曜日だから立ち回りのトレーニングの日。
半年くらい前にホノ悪魔と戦ったあたしと竜の情報、楓に憑いてる野槌とかいう悪魔さんの情報、そして、普段のホノが使っていた力の情報から、ホノ悪魔がどんな戦い方をしてくるか予想して、どんな風に対応していくかを、考えて動いて話し合う。
そういう会の日。
宮椋博士は、人間側に死者が出るような暴れ様でない限り、捕獲や抑制をするようなムーブで行くと言ってた。
あたしも、悪魔に憑かれて苦しんでいるかもしれないホノをそのままにするつもりはない。
あたし達サイドでは、一番穏便にしたがってるのは竜で、あたし含め皆、意外な心持ちだった。
逆に、あたしがホノを眠らせてあげよう派であることも、皆としては意外だったみたい。
そんな風に授業であることを忘れながらボーっとしていたら、いつの間にか蓮村委員長の起立号令が。
「「「「ありがとうございました。」」」」
授業終わりの挨拶をして、一つ伸びーっ!
「んん~~~っ!」
「あ、そうだ、紫岸t」
「はいっ!?な、なんでしょう先生っ!」
「お、あ、えっと、紫岸と渦井と椿嶋に、宮椋博士から伝言だ。
今日のトレーニングはできるだけ早めに来るように、とのことだ。」
「は、はい!」
ふーん、焦ったじゃない!
篝屋先生、普段生徒の名前呼ぶことないからビックリしたっ。
「咲ちゃん、ボーっとしてるのまた怒られると思ってビビってたでしょ今。」
「ホントにビックリした!流石に怒鳴られるのかと思って冷や冷やしたよ。流石、飛鳥ちゃん!誇り高き2Aの副委員長は見えてないはずの後ろの人の様子まで見えるなんて流石だね!ん?またって」
「いや、咲ちゃん、授業中普通に怒られてたよ???めっちゃ。」
「え?」
それは、つまり?
先生からの怒の圧とか、厳しい声とか、そういうのが完全に届かないほど、意識がフライアウェイしてたってコト!?
あまりの衝撃に、口が塞がらなくて、そのまま涎が垂れてカーディガンに落ちる。
「「え?」」
良く分からなくて発した2度目の「え」と、宇宙ネコ状態のあたしが涎を垂らしたのを見た飛鳥ちゃんの「え」が重なって、再びの間。
先生が教室の引き戸を閉めるカタンという音だけが耳に届き、それで我に帰って来た。
「え、あたし、どんな感じだったの?」
「うん、えっと、あ、佐藤君、さっきの篝屋先生のマネしてよ。」
「おっけ。う゛う゛ん。では、いきます。
おい。紫岸。紫岸ィ。戻ってこい。…聞こえてんのか?……おい!!!紫岸ィィ!!!
で、ここで篝屋先生は紫岸に近付いて、持ってた論文のファイルみたいなのを角が紫岸の方に向くように持ち替えて、勢いよく振りかざした、んだけど、紫岸が例のドラゴシールドとやらで防いだから、バーン鳴って、先生が
い゛っっっ!!!!!!はぁ、全く。
ってな感じで教壇に戻」
「ふふっ。あー!はいはい、そこまででいいよ佐藤君!」
「流石佐藤、おじさん先生のマネやっぱピカ1だわ」「似すぎててしんどい。」「それなー!声が似てるだけじゃなくて、動きのトレースも凄いからな。」「そうだろ!?俺も今のは大分決まったって思ったわ。」「笑いを通り越して尊敬のレベルにある。」
「という感じだったのよ?」
「あたし、先生にガン無視決めて、魔法使ったの?全っ然覚えてない。。。ヤバい。」
「本当に?だとしたら、職業病ならぬトレーニング病だね。無意識に防御できるのは戦闘には有利だと思うよ?じゃなくて、本当に大丈夫?最近多いよね。あ、あとその涎早く拭いて?女の子として恥ずかしいよ?」
「え、えへへ」
確かに、涎を垂らしたままは良くないもんね。
ポッケのハンドタオルでささっと拭いて、カーディガンを見ると若干の沁み。
まあ、しょうがないね。
「あー、あー、咲ちゃん、ちゃんとしなきゃ。ほら、廊下の手洗い場行こ?臭くなっちゃうから。」
「ごめんね、夢野さん。このポンコツポテ子ドラゴンは私が面倒みるから、その役、私にくれていいわよ?」
「ポンコツポテっ、あははっ。うん、ありがと。じゃあ、クラス委員週例終わったらすぐ宮椋研究所前行くから、先行ってて!」
「うん、じゃあ、またあとでね。」
むー!全く!飛鳥ちゃんも竜もあたしを子ども扱いすんなシ!!
・・・
まあいっか。
「はい、咲、さっさといくよ?」
「はいはい。子ドラゴンは大人しく竜に連れてかれてあげる。」
それにしても、飛鳥副委員長といい、蓮村委員長といい、皆ホノを取り戻したいって思ってくれてたんだなぁ。
ホノのファン0号としては嬉しい限り。
ホノを覗く2A総勢47名中31名、内男子13人、女子18人。
まあ、委員長以外の男子はホノの事が好きだからだろうけど。
ホノってつるむ人選んでる雰囲気あったから、他の女子からあんまり好かれてないんじゃって思ってたけど、男子より女子の方が多くてビックリしたなぁ。
我らが飛鳥副委員長を始め、水魔法大得意な真由紀ちゃんに、最近話すことが増えた海璃和狂いの憂子ちゃん、宮椋研究室の剣崎先輩の妹の千花ちゃん。
他の子も含めて、2A女子の3/4が参加だよ。
流石、ホノだね。
宮椋研究室の矢室助教の姪っ子の雪凪ちゃんとか一番興味なさそうな感じだったのに、研究室から『宮椋仄葉救助団募集』の張り紙が出てからかなり早く申請書出したって聞いてるしなぁ。
ホノとなにか接点あったのかな。
一番びっくりなのは2Aギャル担当の歌凛ちゃんだよね。
学外でバンド組んで活動してる筈なのに、ホノと接点あるんでしょ?
一体いつ、ってカンジ。
ホノそういうのホントにしゃべらなかったからなぁ。
今更だけど2人に今日の会の時に聞いてみようかな。
あとは、明らかに接点のない射撃部の皆も申請したって言ってたし、楓も参加するし、竜の所属してる剣道部の人とか、研究室の大学生の先輩方の友達とかも居たりするもんなぁ。
「ホノ、愛されてるなぁ」
「どうしたの、そんなしんみりしちゃって。」
「いや、改めて『宮椋仄葉救助団』のメンバーになったり、惜しくもなれなかったけど申請した人を振り返ってたんだけど、ホノって交友関係が思った以上に広かったし、交友関係なくても学年関係なく尊敬されてたりで、ホノ凄いなって。」
「たしかに交友関係の広さはびっくりしたわね。校内で仄葉が私たち以外の子と話したりしているのあまり見なかったから、それは本当にびっくりしたわ。」
「あ、シミ取りありがと。」
「いいのよ、これくらい。でも最近、仄葉のこと考えているんだろうけど、物思いに耽ってること多いから、ちょっと気を付けないと危ないわよ?」
「はーい。」
じゃあ、宮椋研究室に行きますか。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。
自分は落ち着かない仕事と向き合っていたら感染性胃腸炎になってしまいました。
(どうも体調管理だけは昔から不得手でして。。。)
皆さんは体調管理には気を付けて日々をお過ごしください。
凄いミスしてる。。。
「今日はトレーニングなし」なのに、研究室向かってた。。。(1ヶ月越しに見つけた)
トレーニングがある方に話を軌道修正。。。




