49: 透ける闇に飲まれて
お喋りするとは言ったけど、準備をしながら。
まずは道具。
用意するのは、方位磁針と剣と楯、出来れば銃。
あと、服。
あれだけ暴れて自爆までした人間に衣服が残っているとでも?
今は全長120cmのデカい葉っぱを身に付けている。
私には膨大な魔力がある。
でも、私の相手になる可能性のある存在はどう考えても一人でどうにかなるものではないはず。
ぱっと思いつくだけでもげんなりする。
若城大学の戦争学部が所有してる筈の戦車とかロボットとか、そういう戦闘的重機は動員されるだろうし、
大学生・高校の先輩方、同級生の皆、後輩たち、先生方、お父さん、咲達、つまり、身の回りの人全員を相手にする可能性が十分にある。
私が他の悪魔に協力を仰ぐのは、自分が悪魔ではない事を証明しに行く上で意味がなくなる。
となると、少しでも継戦しないと、相手を抑えることは出来ない。
そのための継続戦闘力としての剣と楯と銃。
もちろん、そうなる前に話し合いが出来ればいいけど、私を見てすぐ戦闘になる可能性の方が圧倒的に高い。
膨大とはいえ上限はある。
そうなると、少しでも魔力を使う箇所を減らせた方がいい。
ということで、準備開始!
取り敢えず再び森に入るために立ち上がり振り返る。
目的地は、ここから良く見えるとても太くとても高い木。
この浜辺から見ても天を仰ぐ高さがある。
今は快晴だから分からないけど、雲があれば掛かっていてもおかしくない。
≪やっぱデカいね!≫
「ほんとに。」
そして森に入る。
森の中は相変わらず目的の大樹よりは小柄な大樹達で埋め尽くされている。
数時間前と比べてヒンヤリしている。
時間としてはそろそろ夕方といったところだけど、この島は赤道付近の島のはずだから冷えすぎでは?
寒がりな人ならカーディガンくらいは着ていたいくらいの冷たさはあると思う。
少なくとも、葉っぱしか身にまとっていない華奢な女の子が入っていい空間ではない。
魔法的な何かを感じる。
そして、騒めきは感じない。
生き物は居なさそう。
ずんずんと進んでいく。
小柄な大樹達の密度が下がることで増えてきた邪魔になる低木を、岩をも砕く純白の大骨でドゴンバコンと破壊しながら。
大樹まではそう遠くないと思っていたけど、一向に近づいている感覚がない。
「音ヤバ、植物から出ていい音じゃないって」とか「全然進んでる感じしないね」などと以津真天と話すことで気を紛らわしているが、なかなかどうして、不安はそう簡単には消えない。
冷気は進むごとに増してるから奥深くに進めてはいるはず。
私は寒がりじゃないけど、秋にクーラーを付けたいとは思わない。
でも、葉一枚じゃ普通に寒い。
さらに足を進める。
小柄な大樹達の隙間から見える空は赤く染まってて、活動する生物が入れ替わる時間だと分かる。
足元の植生が少しずつ変わってきている。
低木から背の高い草や大きな花びらを持つ植物になってる。
どの植物も焼けた空のせいで本来の色を見せてくれないけど、それでも力強く美しい姿がここにある。
そんな彼らを見て英気を保ちつつ、私達はさらに冷たい方へと進んでいく。
流石に毛布が欲しい。
以津真天も私の雰囲気の影響を受けてか、あまり話しかけてこなくなってきた。
まだつかない。
心なしか少なくなっている気がする小柄な大樹達は闇に溶け、木漏れ星が輝いている。
悪魔の体は疲れ知らずだけど、木漏れ星では私の心を癒すには力不足。
でも、体は進む。
この体はデバフが効かないのか、強張ったり、霜焼したりする感覚もない。
だけど脳みそはこの鋭い感覚に対して警告を出してる。
バグりそう。
足元の植生はコケ類・シダ類がほとんど。
大樹に近くて大樹の周りでは栄養価が不足しているのではと希望的な推測をしながら、勢いに身を任せ、星と月の光でほんのりと見える大樹の方へ無言で進む。
急なマナの圧力にハッとする。
ぼんやりしていた思考が刺激で急回転する。
目の前には根みたいなものがある。
いや、根!
間違いなく根!
≪やっと着いた!!≫
「うん、、、マジでどうなってるの、この森。。。。」
私達は愚痴をこぼしつつ、大樹の根を触ってみようとした。
手は根を通り抜け無に触れる。
「≪え??」≫
幻術!?
ここまで歩いてきた私の努力がぁ。。。
≪うん、、なんというか、、、御愁傷様、、、、≫
なんでこんなつらい思いを耐え抜いてここに来たかって、もちろんあの大樹を切り取って武器の素材にしたかったからなのにぃ!!
「ふぅっっっっざけんなぁぁぁ!!!寒いんじゃボケぇぇぇぇぇ!!!」
と叫びつつ、脱力して無の根を右目に地面に倒れ込み、
ゴチンッ
「いったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
何かに頭を全力殴打し、血が噴き出すとともに自然回復する。
≪えぇぇえ!?!?だっ!大丈夫!?!?≫
「う”、う”ん、な”んとか。私じゃなきゃ死んでるよ、これ。」
体を上げてぶつけたあたりを見ると、宙で私の血が垂れてる。
この透明な何かに殴打したみたい。
≪これ、なににぶつけたんだろうね。≫
「うーん、なんだろう、感覚的には『ブスッ』じゃなかったから、鋭利な物じゃないとは思うんだけど。とりあえず、レーダーイメージの魔法で周囲を探知してみるね。」
≪おぉ~、大魔術士がんばぇ~≫
私は波が広がって、そして反射して戻って来る、そして、その反射時間の差から立体が見えてくるイメージをする。
少しの倦怠感と共に、頭にシルエットが浮かんでくる。
目に見えている情景とはまるで違うシルエット。
これは廃墟?
いや、廃城っていうのが適切かな。
ゲームだったらダンジョンって言っても違和感ないね。
それでこれが私が頭を打った物体か。
レーダーイメージ探知だと素材判定はやっぱり無理かぁ。
でも、これは間違いなくサイドテーブルの類のモノだね。
根に見えてた部分は王族とかそういう高尚な人が座っていそうな豪華な椅子の座面の上だね。
超巨大な樹と思っていた部分はたぶん尖塔かな。
もう一度レーダー風探知魔法を使おう。
今度は範囲をかなり広くして。。。。
それなりの倦怠感と共に、先ほどより大きなイメージが浮かんでくる。
あの超巨大な樹はやっぱり尖塔で間違いなさそうだね。
かなり広めな範囲を見ようとしたつもりだけど、それでもカバーできなかったことを考えるに、大きさは“見えていた大きさ”と同じなんだろうなぁ。
そして、今まで進んできた道もこの廃城の中で間違いなさそう。
明らかに私が壊したっぽい形跡のある柱とか壁とかがちらほら見えるし。
花とか植物に見えていたのは多分カーペットとかの床上装飾の類ね。
力技で無理やり進んできたのも良く分かる。
≪あれ?今って、結構強めな魔法使ってたよね?≫
「うん、そうだけど、どうしたの?」
≪いや、魂力すぐ回復したなぁって思って。≫
?
「言われてみれば確かにだるくないかも。もしかしてこの場所のおかげ?」
≪かもね!仕組みは分からないけど。仄葉ちゃんの考えてた通り、ここはダンジョン的な場所で、そういうギミックが組まれてるってことだね!≫
「うぉぉぉ、なんか感動。」
≪多分これがディースクルド神が言ってた『魔法の収容と変質』の恩恵なのかもね!≫
「ぉぉぉお?なんか感動できなくなった。」
≪あははっ、なんかゴメン。まあ、それは兎も角、素材探ししないと。≫
「そうだね。」
とは言ったものの、素材になりそうなものは周りになさそう。
この廃城に設置されているモノが持ち出せるなら嬉しいんだけど。
ひとまず頭をぶつけたサイドテーブルが持てるか試そう。
「おお?」
≪え、今何か持ってるの?≫
「そう」
サイドテーブルに割り当てられている実体がないから、以津真天には何も見えてないけど、私は今サイドテーブルを持ち上げることに成功している。
声を上げたのは見かけ以上に重さを感じないから。
何も持ってないのではと錯覚してしまうくらいに。
これも多分『魔法の収容と変質』のおかげ。
それはそれとして、見た目が根の玉座も持ってみる。
「おおお!?」
≪あははっ、根っこが変な形で浮いてる!≫
やっぱり、軽すぎる。
低木に見えていた壁や柱が簡単に壊れたのも、これが理由なのかな。
「これならかなり大きい物も持って帰れそう!」
≪いいねぇ、何持って帰るの?≫
うーん、そうだねぇ。
「壁」
≪なんて?≫
「だから、壁」
≪あ、聞き間違いじゃなかったんだね。でも、なんで壁?≫
「この軽さなら、魔法も使えばこの樹に見えてる尖塔持ってけそうだなって思ったんだけど、そんなに要らないし、でも椅子とかだとパーツ多い上に素材も沢山ありそうで試行錯誤大変そうだしって考えた末、壁ならそれなりのサイズでシンプルな素材だろうと思ったからだね。」
≪なるほど。ほとんど何も考えてなかったハズなのに、よくそんなスラスラと理由付けられるね!≫
「はぁ、もう煽らなくてもいいじゃん!」
≪ごめんて!≫
「うん。まあ、それはいいとして。問題はどうやって綺麗に切り出すかなんだよね。」
≪それなら!今こそ悪魔の能力を使うべきだね!!≫
こんばんは。
そして、お久しぶりです。
大分時間が空いてしまいました。
この作品に対するモチベがなかなか出なくなって来てまして。。。
でも、自分が思い描いてるENDを書きたい気持ちもあります。
このモチベがいつまで続くか。。。
あ、でも、この作品を見つけて、一気読みしてくれる方もちらほらいて、とても嬉しいです。
励みになります!
頑張って完結させますので、気長にお待ちいただければと思います。




