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47: 大きなのっぽの百合

(はぁ、あたし、なにしてんだろ。)


なんであんなにキレちゃったのか分かんない。

分かるのは、あたしが自分勝手すぎるっていうことだけ。

竜はあたしのことを家族と同じくらい大切な人って言ってくれた。

なのにあたしは。。。

あたしは、竜のことを大切に思ってなかった。

いや、正確に言えば、自分と竜の関係は従姉(いとこ)とかそんな感じの繋がりだと思ってた。

竜もあたしのことをそれくらいの繋がりで扱ってると思ってた。

でも、違った。

ミリアとは友達くらいの感覚かな。

いずれにしろ、あたしは、二人を家族として見ていなかった。

だから、竜に大切な存在だよって言われたとき、なんて返せばいいか分かんなかった。


そんなあたしのせいで帰宅中の空気は悪かった。

家について玄関を開けたら、たまたまミリアが居て、ジト目で「また喧嘩かなんかしたの?」って言われた。

それくらい空気が悪かった。


「なんで、あたしって、反省してないんだろう。これじゃあ今年の魔法と技術の混合芸術発表会の帰り際にほのに“灰色”って言っちゃった時とそんな変わらないよ。どうしたらいいの?教えて、もきゅゴン。」


なんとなく『加護に祝杯を』してない状態のただの可愛いドラゴンに話しかける。

勿論何か答えてくれるわけじゃないけど、あたしがなにか求めていると察してくれているのかそういうわけでもないのか、ちょっとこっちを向いた後にそっぽを向いた。


「なによ、自分で考えろって?」


もきゅゴンはこっちを見ないまま首を縦に振る。


「せめてこっちをみて表情を見せてよ。」


もきゅゴンは上半身を曲げて、少し面倒くさそうにこっちを見てくれる。


「体もこっち向けて?というか、ここ来て。」


あたしは膝を叩いて、もきゅゴンに膝に乗るように言う。

もきゅゴンはパタパタと飛んであたしの膝にのっかる。


「ねぇ、あたしって薄情なのかな。」


もきゅゴンは動かないで、あたしの目をじっと見ている。


肯定も否定もしないの?

あたしって薄情?


………


ちょっと待って、薄情ってなに?!

あたしほののこと好きだよ?

情、薄くないと思うんだけど。

あれ、もしかして意味違う?


スマホを開いて、[薄情 意味]で検索する。


【〔名〕 (形動) 義理・人情にうすいこと。愛情に乏しいこと。親しみや思いやりの気持が少ないこと。また、そのさま。】


なるほど?

つまり、あたしは、ほのと家族以外の人に対しては薄情ってことか。

そっか。。。。


もきゅゴンはあたしから溢れてる気を察したのか、お腹にパンチしている。

意図のある行動だとすると、「それじゃダメだよ」的な事を言ってるのかなと思うけど、あたしとしてはそんなこと言われてもどうすればいいか分からない。


「別に好きでもない人から告白されてそれを振ってるのと同じシチュエーションだと思うんだよ。だから、謝るとかそういうの必要とないと思うんだけど。」


もきゅゴンのパンチが強く、速くなってきて


「痛い痛いいたっ、痛い!痛いって、ねえ!」


訴えてみても、もきゅゴンのパンチは止まらない。

だからあたしはもきゅゴンのお腹を持って持ち上げて、あたしの顔の前に移動させる。


もきゅゴンがスンッとなったかと思ったら、右翼をあたしの顔に近づけ、


バチン「痛っ」


頬っぺたをぶって消えてった。


(は?マジでなんなん?え?)


手鏡を見ると、頬っぺたに翼の形の赤い痕がキレイに出来ているのが分かる。

めちゃヒリヒリしてる。


とりあえず、もきゅゴンに怒られたっぽいし、竜に謝りに行こうとは思うんだけど、この痕つけたままじゃ謝罪もなにもあったもんじゃない。


「あー!もうっ!」



…………………



…………



………



(取り敢えず、顔、洗いに行こう。)


と思ってドアを開けると、廊下には竜が居て目が合う。


再び訪れる、魔の静寂。


でもすぐにその感じはなくなる。


「ぷふっ」

「笑わないでよ」

「ご、ごめん、でも、ふっ、あふっ、ふふふっ、衝撃過ぎてっ、ふふふふっ」


あたしの翼の形の痕がそんなに面白いのか、完全にツボっている竜。


それを眺めながらニヤリともクスッともせず棒立ちするあたし。


そこにやってくるミリア。


「ちょっと、廊下で何やって、、、、え?どっ。どあっはっはっはっは!!!!なにそれ、どうしたの!?!?あっはっはっはっ!!」

「ね、ねぇ、笑わないで。」


大笑いするミリアと抑え気味だけどまだツボってる竜の笑いに釣られないように我慢して、不機嫌ですオーラを放つ。


なんとなく、ここで笑ったら負けな気がする。

っていうか、そんな笑える??

さっき見たけど、そんなに笑う事無くない?


ささっと洗面所に移動して、大きい鏡で見てみる。


「ふっ」


確かに、面白い。

鏡のあたしには、もう翼の形をした痕はない。

変わりに、泣き腫らしたせいで目の周りが真っ赤になって、パンダみたいになっている。

2人はこの無表情パンダをみて笑ってたんだ、と合点がいく。

でも、あたしはそれとは違う理由で面白く見えた。

あたしは、竜にあれだけの事を言って、部屋で別に謝る必要なんかないなんて思ってたのに、顔を洗いに行こうと思うまでに、そこそこの時間を使って自分でも気づかない間に、いや、もきゅゴンに相談している間にも泣いていた自分が面白いと思った。

つまり。

あたしには、二人に対して従姉(いとこ)や友達以上の愛があった。

そのことに、気づけないあたしをあたしは面白いと思った。


「はぁ。」


笑っちゃうね、ホントに。


まだ、聞こえる笑い声の下に行く。


「ふっ、え、ねえ、ちょ、ちょっといつまで笑ってるのっ?」

「あっ、咲っ、ホントにゴメン、完全にツボっちゃってっ、あははっ、あ、でも、顔洗ってちょっとスッキリして面白い顔じゃなくなったよ!」

「あ、本当ね。ふふっ、ごめんね、咲。でも、ちょっと想像してみなさい、鉢合わせた相手が真顔で赤目のパンダだったら、笑っちゃうわよ??」

「うん、わたしも面白いと思った。さっき鏡で見たけど、思ったよりアホづらで正直自分自身に呆れちゃった。」


そんな風に返したら、あたしが普段自虐なんてしないからか、二人は逆に慌てて


「「私、そんなひどいこと言ってないよっ!?!?」」


完全にハモって、返事してきた。


「いや、二人が悪いなんてミリも思ってないから大丈夫。今のは自虐だよ?」

「え?どうしたの?咲らしくないわよ??」


完全に困惑に陥った竜が不思議な形相であたしを心配してくれる。

あたしが傷つけた張本人は、あたしがさっき言った言葉を忘れているんじゃないか、っていう感じになってる。


「そんなことよりさ、竜。さっきは、その、えっと、、、、」

「何よ、歯切れが悪いわね。」

「いや、その、帰り道の話。」

「え?あ。うん。。。。。」


(あ、この顔、絶対忘れてたな)


「ごめん。あたし、あの時すぐに返事できなかったけど、あたしも竜のこと、好きだよ。」

「え!?帰り道、ナニ話ながら帰って来たの!?まさかの百合展開!?!?ちょっと詳s」

「ごめん、ミリア、あとで話すからどっか行って?」

「ハイ!退散しマス!ごゆっくり!」


あたしが言葉足らずなせいで良く分からないスイッチの入ったミリアを追い払う。

誤解が深まってそうだけど、それどころじゃない。


なぜなら、竜が勘違い方向に真に受けてそうだから。

完全に気が動転してるように見える。


「竜?あのね、なんか混乱してそうだから言うんだけど、ほら、あたしが『竜はほのの事を大事に思ってない!』みたいなこと言ってさ?あれ?それで、竜がさ?『私は、咲の事も海璃和の事も家族みたいに思ってるよ』みたいな事言って、あたしそのまま黙っちゃったじゃん??あたしも竜の事、家族と同じくらい大事だよって意味だよ?」

「ふふっ、うん、分かってるわよ。ちょっと、ドキッとして、ビックリしただけ。あと、私もあの時はカッとなってたわ。少し冷静になって考えれば、咲があたし達よりも仄葉を大事に思うのは当然だし、咲にとって仄葉の存在がどれくらい大きいのかも分かってる。だから、咲がああ言いたくなるのも分からなくないし、私があそこで少し感情をコントロール出来てたら、私がもう少し大人だったら、あんな空気にならなかった。だから私から謝ろうって思って、咲の部屋に行こうと思ってたんだけど、そうしたら、部屋から赤目のパンダが出て来て、、、ぷふっ」

「ね、ねえ!思い出し笑いすんなっ!!!っていうか、竜が謝る必要、どこにもない。全部あたしが悪い。それと、ちなみに聞きたいんだけど、何にドキッとしたの??」

「ふふふっ、ふぅ。えっと、ドキッとした理由ね。それは妹キャラっぽい咲から、突然真剣な顔で『好き』だなんて言われたからよ。今の咲の顔好きよ。『謝る必要、どこにもない』も格好良かったわ。ギャップ萌えってやつね。私にタつ部分があったらタっていたわね。」

「ちょっ!?妹は竜でしょ!?2ヶ月あたしの方がお姉ちゃんなんだから!!!あと妹キャラとかタつとかギャップ萌えとか言わないで!竜は大和撫子!ミリアみたいなキモオタ言葉使わない!!!」

「アニメ好きな咲に言われる筋合いはないわ。それと、そういうこと言わない。後ろでスケッチしてた海璃和に殴られるわよ。」


えっ!?

ミリア、部屋に戻ったんじゃなかったの!?

ミリアのマジなぐりはそんなに痛くないけど、人体のことをよく知ってるから急所を寸分たがわず狙ってきて辛い。

だから、「キモオタ言うなぁ!」と叫びながら襲い掛かって来るミリアの攻撃に対して、思わずドラゴシールドを張ってしまって。


 ばちぃぃぃぃん!!!


「イッタァイ!!!う”う”、咲ぃ、そこまでやる必要ないでしょぉ!?」

「ごめん!!!でも、ミリアの攻撃、必ず急所に来て辛いから、つい。。。。っていうか、竜、ドキッとするのだめでしょ!いつだか忘れたけど、ほのが女の子同士でエッチなことしたいみたいな事言ってた時、あんなに大喧嘩してたじゃん!ん?あ!それでむしろ興味持っちゃったの??あらぁ~~。」

「ち、ちがっう!咲だって百合アニメ見てるじゃない。」

「確かに、あたしは百合アニメ見てるけど、あの時あたしは特に否定してたわけじゃないからね!!」

「それに、大体、この家は咲が買ったアニメのBDとか海璃和の作ったキャラフィギュアとかのサブカルが多すぎて私がそういう方向に行かない方が不自然だと思うんだけど!?」

「はいはいそうですかそうですか。いやぁ、大和撫子の竜はもう大和でも撫子でもないんだねぇ~。父上に怒られたりしないのかなぁ?」

「うるさいわね、もう怒られようが何されようが、染まったのよ!」

「ちょ、ちょっと二人共、倒れた私の上で取っ組み合いしないでくれるかな。。。もう、百合成分たくさんもらったからお腹いっぱいなんでどいてもらえる?」

「「百合じゃなぁぁぁい!!」」


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