3: 闘牛の遠吠え
始めのうちはバシバシ次出してきますよー。3話です。
この学校には、この発展した世界に似つかわしくない野蛮な制度がある。
血闘。読んで字のごとくというわけでもないが、つまり、片方が致命傷を負うまで行われる決闘である。
この制度があることは世間に知られていない。
この制度は、戦闘を推奨するのもではなく、自分達の持っている力がどれだけ危険なものか知るための制度だ。
そして、同じ二人を二度と血闘させないための『致命傷を負うまで』という条件である。
これを行う場合、S級回復魔法が使える者が近くに居ること。
そして、回復者以外が審判をすること。この二つが絶対条件である。
私は、Sより上のG-級回復魔法を使える。
なので、2人は楽しんで血闘をすることが出来る。
2人は。高位魔法使った後ってマジで怠くなるからやめて欲しいんだけどね。
何分、私はそんな戦闘に対して、前向きじゃない。
今、面倒臭いからもう血闘しないで、とでも言おうものなら、一瞬で周辺が荒地と化すだろう。
そして、海璃和が審判をする。
この二人の血闘はもう今年に入って5回、去年を含めたら25回も行っている。
その度に、私達は付き合っている。
食堂でそんな宣言をしたもんだから、瞬く間に騒ぎになった。
「あの二人また血闘するって」「またぁ?」「あいつらマジで頭逝ってるだろ」「みんなにもLAINEで教えておこ。「【速報】紫岸と椿島第26回血闘を食堂で宣言」っと」「まぁ、俺は仄葉様の美しい姿をまじまじと見られるからそれでけでも嬉しいけど」
そんなざわめきの中、竜が開口する。
「はぁ、しょうがないわね。いつもの条件でいいの?」
竜はとても面倒臭そうな台詞を発しながら、しかし、目は爛々と、そして、体は嬉々として疼いている。
「それでいいわ。」
そう咲も返した。
場所は校庭に移る。
少し冷たい風が、頬をなでる。
「それでは!始めマス!」
「ふんっ!」
始まるなり、竜は一直線に飛び出す。
土煙を纏いながら咲の方へ駆けだした。
構えは突き。
狙うは、、、あれは胸、かな。
「どっ、どこ狙ってんの?!」
「その贅肉、捌いてあげるわ!」
「イヤに決まってんでしょっ!」
単純な攻撃に咲はさらりと身を躱す。
しかし、反応が遅れて制服が少し破れる。
胸が少し露になった。
普段竜がしない攻撃に咲は戸惑っている。
もちろん、竜は攻撃を休まない。
イノシシのように単調な攻撃を続ける。
でも、どの攻撃も正確で、咲は避けることに精一杯だ。
いつもの条件って言ってたから、咲は魔法を使えない。
使ってもいいけどルール違反で負けになる。
咲の集中力が持つか、竜の体力が尽きるか。
ヒュッ
「はっ」プルン
シャッ
「ふっ」ポヨン
ヒュルッ
「ほっ」タプン
鋭い突きが、山脈を突き刺さんと縦横無尽に走る。
山脈は、その地肌を一部晒しつつ波を打つ。
ギャラリーの男子が鼻血を垂らしながら見守っている。
シャッ
「よいっと」ポユン
フュッ
「はいっ」タユン
シュッ
「んっっ、やばっっ」
不意に、咲の息づかいが乱れた。
「時は来た!」
竜の低い声が響き、鋭い突きが胸を貫く。
ビィィン
と思われたが、咲は陽剣の樋で受け止めた。
「ふぅー、あぶないあぶない」
「やるわね」
「ふふっ、簡単にはやられないわよ」
2人は剣を持ち直す。再び静寂が訪れる。
今度は、咲から動いた。
陽剣を大きく振りかぶり、その割に速い剣で襲う。
竜は冷静に受け流し反撃する。
咲も素早く振り返り剣を合わせる。
キィン カィン ギンッ
刀と剣が打ち合うたびに火花が散る。
パワーに任せた咲と技術で対応する竜。
その熱戦に、自然と周囲も熱くなる。
二人とも頑張ってんな。
でも、明らかに咲の剣筋は、素人目に見ても鋭いものではなくなってきた。
ギリリンッ ガィン カィン
身長、経験、技術、どれをとっても竜のほうが上。体力だけは咲が上だ。
今までの勝敗は竜15勝、咲5勝、引き分け5。
今回は、竜の新手の戦法で咲の体力も集中力も切れかけてるし、勝負がつくまでにそんなに時間もかからないだろう。
キン キィィン
ブシュッ
竜の刀が咲の胸を貫いて背中まで貫通していた。
竜は刀を引き抜く。
「う”ああぁぁぁっっ」
咲の背中から鮮血が噴き出る。
「終わりデス!!ホノ!」
「うん!!」
私は起動準備のできていた回復魔法を咲に掛けた。
「あー、楽しかった!!」
咲が満面の笑顔でそう叫ぶ。
「なにが楽しかったよっ!ゴホッゴホッ。私はっ、こんなにっ、うぇっ、へとへとっ、なんだけどっ!」
「いつもありがと!ほのっ♡」ちゅっ
「んっ、許す」
「サキ~、私にチューは?」
「はいはい」ちゅっ
まあ、咲が元気になってくれてよかった。
「私も咲の大きな胸を一刺しできてよかったわ」
竜も満足したようだし。
よかったよかった。
昨日のことで私も負い目を感じてたから咲のストレス発散ができてよかった。
これで私もひと眠り、、、できないじゃん!授業じゃん!この後!!
授業の予鈴が鳴った。
戦闘シーンて難しいんですね。。しかも、剣戟。この系統の作品を読んだことがなかったので、薄っぺらくなってしまいました。
ちなみに、この地球は、地球全体の東西南北が逆転しています。日本が南アメリカの位置にあるとご想像ください。
2020/5/10 色々訂正等しました。
2020/8/25 サブタイトル付けました。
2021/9/3 小さな修正をしました。