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43: よく混ざっている

長期休みがこんなにすっからかんだったのは初めてだ。

冬休みが残り数日となって、寂寥感が増した私は、ふとそう感じる。



今まで、こんな事は無かった。



理由は明確。



仄葉が居ない。



シェアハウスに来る前、皆と出会うまでの1人の冬休みの方がまだ楽しかった。

あの頃はお父さんもお母さんもかなり忙しくて。

1人だったけど、やることがなかったわけでは無い。

作曲したり、陶芸したり、絵の模写をしたり、工作したり。

今思うと小学生のやる事ではないような気がするけど、作る事それ自体が好きな私にとっては、大人数の友達と外遊びするよりずっと楽しかった。


今年の冬休みは咲と竜がほぼ毎日部活だったせいで、家には基本的に私とお母さんと爛梨(あかり)さんの3人だった。

だから、寂しかったわけでは無い。

憂子も遊びに来てくれたけど。

作りたいものも沢山あって色々作ったけど。

お母さんとセッションしたり、爛梨さんと訓練したり、部活のない日に3人でボードゲームを遊んだりしたけど。


仄葉1人が居ないだけで、私はどれも十分に満喫できていなかった。


いつの間にか、仄葉という存在は、私の生活に欠かせない存在になっていた。


そんなに依存していたつもりはない。

自分の意思でこの4年間を過ごしていた、と思っていたが、どうやら心酔しきっていたようだ。


これじゃあ、憂子を狂信者とか言ってられない。


勿論、咲も竜もお母さんたちも全く悲しんでいなかったわけでは無い。

特に咲と竜は何をしていていも明るいとはいえない表情だった。


喪失感。

ただそれだけに注目すれば、咲は大事な人を短期間で2人喪失している。

2人共死んだわけでは無い。

仄葉は依然として何も掴めていないが、死んではないと思っている。

7月末に急に姿を見せなくなった異形や悪魔たちとの関係がないわけがない、と宮椋博士も私も皆もそう思っている。

楓さんは植物状態になってしまったが、やはり、死んだわけでは無い。

しかし、大事な人と色んな事が出来ないのは辛いことだ。

部活に邁進しているのを見るに、そういう事をずっと考えないようにしているのだろうと容易に想像できる。


竜も咲と似たような感じで、最近は炎獅(えんじ)さんに稽古をつけてもらって色々発散しているようだ。


「海璃和~、ご飯ですよ~」


お母さんのアルトヴォイスの昼礼が耳に届く。


「はーい!今行くー!」


返事をしてダイニングに向かう。


ドアを開けるとニンニクと油と唐辛子のニオイがする。

これはアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノに違いない。


グギュルギュルとなるお腹の音と共にダイニングに到着。

セットになっている卵とじスープから頂く。


「頂きます。」


入っている具材はキャベツと玉ねぎと人参とウインナー。

口に含んでまず感じるのは卵のやさしさ。

続いて、コンソメの風味がやって来る。

キャベツにシャキシャキ感があるのがいい。

程よい歯ごたえが他の具材を噛むきっかけになってくれる。

一度火を通した後でスープにしていると思われるウインナーは、噛まれることで旨味たっぷりのジューシーな液体を口の中に充満させてくれる。

そこに玉ねぎと人参の仄かな_


……


「どうしたんですか?海璃和?」

「ううん、何でもない。」


…微かな甘みと苦みが溶けて、口の中に花園が現れる。


その花園を2・3歩して。

メインロードに足を踏み入れる。


彩りがある。

純粋なアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノではないようだ。


パスタをスプーンの上で3巻きして口に運ぶ。

具材はマイタケ、ナス、ベーコン。

どれも歯ごたえが残るか分からない程度のサイズに調理されている。

おかげで、オーリオを纏ったパスタに具材がくっついて来る。

つまり、一口でこのパスタの風味を味わえる。

味の沁み込み易い具材であるが故に味が常に残り、花園だった空間がFestival会場に変貌する。


食べる箇所によって具材の比率や調味料の比率が変わるのは、まるで色とりどりの花火を見ているかの様な感覚だ。


最後の1火花を見届けて、花園の出口に着く頃には、幸せでいっぱいだ。


「ご馳走さまでした」

「はい。お粗末様でした。」

「いや~、海璃和ちゃん、本当に美味しそうに味わって食べるわよね!咲にも見習わせたいわ~」


(爛梨さん、大げさだよ。それに。)


「いや、咲だって十分美味しそうに食べてますよ!1口が皆よりだいぶ大きいだけで。食べてる時の顔、子犬みたいで可愛いじゃないですか」

「そう?まあ、仮に咲か子犬だとしたら、海璃和ちゃんは白鳥とか孔雀って感じね。咲ってちょっと雑なところあるから、ハンバーガーとか食べると口の周りに何かついてるじゃない?それに対して、海璃和ちゃんは何を食べても綺麗なのよ。大人になった時にそういう所で差がついちゃうんだから、今の内から海璃和ちゃんみたいに食べて欲しいんだけどねぇ。やっぱり、遺伝ていうのは大事ね。マルちゃんを見てるとそう思うわ。」

「というと、爛梨さんも咲みたいな食べ方をしていた、という事ですか?」

「そんな感じ。」


(へえ、確かに想像は出来るけど。それにしたって、私とお母さん、そんなに似てるかな。まあいいや、こういう話すると二人の面倒くさい井戸端会議に巻き込まれるから、さっさと退散しますか。)


「あ、じゃあ、自分の分の食器だけ洗って部屋に戻らせ」

「そんなこと言わないで、もうちょっとお喋りしましょうよ。ねえ、シュニーさん?」

『えぇ!?そこで私に話振ります!?』

「海璃和、お母さんからもお願いします。爛梨さんの話がとても面倒くさいのは100も承知してますが、たまにはかまってあげ」

「いや、お母さんも十分面倒くさいからね?」

「tえ!?」


(ははっ、お母さんなんて顔してるの!?せっかくの顔が台無しだよ。まあ、お母さんが私に頼んでくることなんて殆どないし、たまには付き合ってあげますか。)


「分かった、分かったよお母さん。そんな顔しないで。付き合うから。でも、爛梨さん、シュニーに話振ったんですから、まずはシュニーの話から聞きましょ?ね、シュニー?」

『ミリアぁ~、私を巻き込まないでぇ~。』

「そんなこと言わずに!なんかあるでしょ?まだ、私達に言ってない事!」


聞いてない事。

割とあると思う。

シュニーがいた世界の魔法についてとか、技術レベルについてとか、空島についてとか、そういうのは聞いた。

こう列挙すると分かる。


「例えば、身の上話とかさ?」

『まぁね?確かに避けて来たよ。うん。』


()()()()()、ね。


「あ、話したくなかったり、話せない事だったら話さなくていいからね。」

『むむむむっ!別にっ!?話せない事は無いけどっ!?!?いいよいいよ。無理やりにでも聞かせてやるよ!ちょっ、そこ!笑うな!』


(何キレてるんだか。。。あ、私の言い方が悪かったのか。。。まあ、お母さん達もなんか笑い堪えてて空気は悪くないからいっか)


『じゃあ、話すよ?』

「「「お願いしま~す。」」」


ラウガット=シュニー。

トドノネオオワタムシの女虫人。

親は母親のみ。

単為生殖(処女生殖ともいうらしい)の虫であるから。

単為生殖とは、雌のみで子を成すである事とWekipediaに書いてあった。

だから父親は居ない。


前にも話してもらった通り、空島にいる間は“虫”として生活。

意識はあるが、本能の方が強く、“虫”である間は自分の意思で生きている感覚はないとのこと。

通常の虫と異なるのは、サイズと寿命、そして生き方。

通常の虫の何十倍もの時間をかけて“巨大な虫”、“成虫”になる。

その長い時間の中で、意識の方は語学や下界の文化を学ぶ。

体の方は時間と環境と本能により育つため、起きている時間を全てそれに充てられる。


“成虫”になると意識の方が強くなり、自分の意思で体を操ることが出来るように。

既に虫人となっている先輩方から、体の動かし方や簡単な魔法の発動を学ぶ。

ある程度様になってくると、神様、ハイエンリー神の言い方でいう魔神、の声が聞こえる様になる。

はっきり聞こえる様になったら、(やしろ)に行き、虫人になるための御力(おちから)を頂く儀式を受ける。


“巨大な虫”から“虫人”へと昇華した後は、同時期に虫人となった多種多様な仲間たちとチームワークの訓練をしていく。

時には契位魔法士や魔法神獣が魔人や魔獣を倒す様子を見るために下界に降りることもあったようだ。

そんな同世代の中で特に仲が良かった虫人を教えてくれた。


変化速度が早いという付加効果のある熱系魔法を使うグリーンバナナローチの女虫人、フラッド=ベウさん。

クールビューティーな人で、同期の中では勉学が最も得意。面倒見もよく、よくお世話になっていたそうだ。


弱い万有引力を使えるという付加効果のある重力系魔法を使うベニトンボの男虫人、アッペラティ=エスドルさん。

色気のある中二病な人で、シュニーと良く遊んでいたらしい。


体内に溜まった静電気を火として放出できるという付加効果のある電磁系魔法を使うオウゴンオニクワガタの男虫人、クラビック=トゥポゥさん。

ドジなイケメンで、訓練中よく事故を起こしていたらしい。


鉱物を探知できるという付加効果のある無生物系魔法を使うコーカサスオオカブトの女虫人、アルケト=イーシャさん。

可愛いを体現したような顔立ちで物静かな人。怒るとチームメイト一怖かったらしい。


ちなみに、グリーンバナナローチをググってみたところ、いわゆるGだった。

シュニーたちトドノネオオワタムシが実は害虫だと分かった時は大分驚いたが、Gでも色鮮やかな奴がいる事にも十分驚きだ。


今どこにいるのかは知らないらしい。

そもそも、この世界に来ているのかも分からないようだ。


ある程度の訓練を終えると実働チームに配属される。

全ての虫人は人間を契位魔法士にした後はその人間と一緒に暮らしていくことになる。

という事は戦闘になった際にその人間が生きている土地に既にいる契位魔法士と協力していくことになる。

しかし、どの種類の虫人が憑いているか分からない。

であるならば、予め様々な種類の虫人と交流を持っておくことで、スムーズにその環境に溶け込める。

なので、実践チームも基本的に雑多な種類の虫人によって構成されている。


その実働チームで出会ったのがルリボシカミキリ様。


なぜ名前を知らないのか。


付加効果のある魔法を使う人間や動物に会い次第、契布を編んで契位魔法士や魔法神獣になってもらう。

つまり、いつチームのメンバーが居なくなるか分からないということを意味している。

名前で呼び合っていると、居なくなった際の悲しみとか虚しさが増加するため、名前を教えあう事はしないと言う事だ。


ルリボシカミキリ様はとても良くしてくれたみたいで、シュニーとしては尊敬を超えた感情を持っていたらしい。

初対面の時に懐刀とか名乗っていたけど、あれは自分勝手に言っているだけだったとか。


ちなみに、グリフォンに憑いている虫人は、スコルフスキーモルフォの女虫人でモオウド=リャビィという名前らしい。気圧操作が楽にできるという付加効果のある熱系魔法を使えるそうだ。


それ関係で1つ驚いたのは、グリフォンは元からグリフォンなのではないと言う事だ。

リャビィさんと契布を編む前は、摩擦力や斥力といった力を操作できるという付加効果のある重力魔法を使う栗毛のサラブレッド馬!

虫人と動物の相性がとても良い場合のみ姿が変化するらしい。


実働チームに配属されて1年とちょっと経って、この(たび)のワールドスイッチングが発生。

パニックでチームが散り散りになっている時に、グリフォン(リャビィさん)に遭遇。

一緒に探索している際に私達の超落下を目撃し、栗毛馬さんの力で空気抵抗を強化したことで、私達が助かったみたいだ。


この話までしたという事は、シュニーの身の上話は終わりという事。

まあ、話の殆どはシュニー以外の虫人についてとか、虫人の生態についてだったが。


それにしても。


「あの節は本当にお世話になりました。」

『いえいえ。あとでリャビィと喋る?』

「え?話せるの?馬に憑依しちゃってるから無理なんじゃ、、、あ、幼精。ん?でもグリフォンの幼精見た覚えないよ?」

『あぁ、リャビィ、少し人見知りだから、グリフォンの脚の付け根辺りで隠れてるんだよ。喋りだせることが出来れば問題ないんだけどね。』


グリフォンの身体的特徴。

体色は栗色から少し緑がかった薄い青になるグラデーション。

頭が栗色、体が一番グラデーションがかかっていて、翼が薄い茶色、尻尾が緑っぽい薄青。

リャビィさんは緑っぽい薄青の幼精であると推測できる。


[スコルフスキーモルフォ 画像]と検索すると、翅の淵が茶色っぽくて胴体付近が緑っぽい薄青をしている蝶が一番初めに出てきた。

つまり、そういう事だ。


『フィーロアさんと爛梨さんは何か聞きたいこととかある?この際だからなんでも答えるよ!』

「そうですね、先ほどのお話に出てきたベニトンボの虫人さんとよく遊んでいたとの事でしたが、恋とかは生まれていないのですか?」

『生まれないねぇ。というか、異種間ではそういう事はどう頑張っても起きないんだよね。そもそも、下界に降りることが決まっているメンバーは、恋が生まれないように同種が近い間柄にならないよう仕組まれるから、そういった出来事は実の周りでも一切起きてないね。各種族に産む権利を持っている人たちが居るんだけど、恋話があるとすればその人たちだけだね。』

「ちぇー、つまんないわね。せっかくマルちゃんがいい質問してくれたのに全く盛り上がれないじゃないの。」


二人共恋バナに飢え過ぎでは?

とても不満そうな表情を浮かべている。。。

まあ、それもそうか。

私も咲も竜もそういうのに疎いから、お母さんたちとしては寂しいのかな?

唯一興味あるの仄葉くらいだったもんね。

ほの。。。。。。


『そんなこと言われても起きないものは起きないの!!はぁ、そんな顔されてもどうにもならんから諦めて。。。他に何かない?』


……


『無いね!じゃあミリア、リャビィのトコ行こう?』


………


『ミリア??』

「あ、ゴメン、うん、行こう!」









(せっかく、シュニーの話で仄葉のこと薄れてたのに。。

はあ、仄葉ぁ。。。)


そんな浮かない気分を紛らわせるように、戦闘用マジカルスクーターを爆走させて宮椋研究所に着く。


グリフォンは宮椋研究所でお世話されている。


馬屋に着く。


グリフォンは緑っぽい薄青の蝶のぬいぐるみみたいな物の顔をこちらに向けるように咥えてこちらを見ている。


………


ん?


『あっ、はいっ、私がっ、リャビィですっ。』

「あっ、渦井・S・海璃和です。。。何を、、、してるんですか?」

『先ほど、シュニーさんから、連絡が入りまして、海璃和さんと会いに来るとの事だったので、それをトモ君に相談していたんですが、そしたらおもむろに、私の幼精を咥えたまま、なにも喋らなくなってしまって、こんな状態になってます。。。』


(トモ君?あ、グリフォンのことかな?)


『おお~、流石トモ君。リャビィの事分かってるねぇ。どうせ隠れたまま何も喋ろうとしないと思って、どう頑張っても喋らなきゃいけない状況をセッティングしたわけだ。』


シュニーの話がしっかり理解できているのか、トモ君は頷く。

相当賢い様だ。


(ってそうじゃなくて)


「あの、リャビィさん、と、トモ君、あの時は助けてくれてありがとうございました!」

『い、いえ、とんでもないです。あの時助けることが出来て本当に良かったです。』


トモ君の目も心なしか柔らかい笑みを浮かべているように見える。

どういたしまして、と言っているのだろう。

すると、今度は翼を器用に動かして、招くような動作をする。


『ど、どうぞ、トモ君の傍に。ゆっくりお話し、しませんか?』


確かに今日も寒い。

トモ君の体温とリャビィさんの魔法で温めてくれるのだろう。


(とにかく、寒いし気を休めたいし、お言葉に甘えて)


「それでは失礼します。色々聞かせてください。」


色々読み直しながら書いていったんですが、海璃和の苗字、渦井、ですね。。。。

やばい、結構ミスってるとこありそうだぞ。。。

明日以降直します。。。

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