42: 壊れかけの5色に彩られた船
(ッッッ!)
…………
?
(ここは、どこ?)
(私は、洞窟に居たはず…………)
……
(こんな地形、見たことない…………)
(つまり日本じゃない??)
(あ、以津真天に聞けば…………)
「以津真天、聞こえてる?」
≪うん、聞こえてるよ。おはよう、仄葉ちゃん。随分と長く寝てたみたいだね。≫
「はは、そうみたいだね…………。それで、ここはどこ?」
≪えっと、……、ごめん、ちょっと言えない…≫
?
今まで話してきた以津真天の話し方と全く違う雰囲気を纏った言葉が私に届く。
申し訳なさそう、というか引いているというか、控えめな感じのする“声”だ。
…………
(もしや、、、まさか!?いや、、しかし、、、、、でも、それしか考えられない、、、、)
「はぁ」
≪えっと、仄葉ちゃん??≫
「あー、もしかしてだけど、私、暴走してた?」
≪!!!≫
(まあ、そうだよね。それしかない。だって、私が覚えてるのは以津真天と言い争っているトコロ。その後、暴走モードになってなんやかんやあって今ここにいるんだろう。)
「とりあえずさ、私と以津真天が言い争ったあとどういう経緯を経て私達がここにいるのか教えて?」
≪え、そこまで覚えてるのにその後が分からないのっ!?≫
「そうなんだよ。私の暴走するタイミングって良く分からなくってさ、急に来るんだよ。そもそもそのタイミング分かってたら頑張って暴走しないように抑えるし。」
…………
「大丈夫。怒ったりしないから。」
≪……ホントに?また暴走しない?≫
(んー、多分だけど、大丈夫だと思う。うん。)
「大丈夫。だって、今の私の魂ってそんなボロボロじゃないでしょ?」
≪…今の間はちょっと怖いけど、確かに魂自体は回復してるよ。。≫
「じゃあ大丈夫だよ。」
≪…分かった。あ、でもあんまり詳しく話すと、暴走しそうで怖いから簡単に話すね。≫
「いいよ。」
そこから以津真天にここに来た経緯を聞いた。
私が覚えている本当に最後のシーンは以津真天に怖いと言われたところ。
そこまでは記憶と一緒だった。
しかし、そこから記憶が飛んでいる。
内容はこうだ。
私が怖いと言われた後、私は急に静かになった。
そこから数分間、少しずつ殺気の様なモノを増幅させながら黙っていた。
私から殺気の様なモノが溢れすぎてとても怖くなった以津真天は私に震えながら“声”を掛けた。
その“声”に私がキレて、その殺気を持って以津真天を脅し、洞窟から脱出する方法を無理やり使わせた。
洞窟から闇夜逃避で移動した先がこの孤島。
孤島に着いてから、私は苦しみながら規模の大きな攻撃魔法を連発し、孤島を半壊。
力を使い切ったのちに気絶。
そして、今に至る、というわけだ。
これを聞いてまず思ったのが、私のクズさ加減だ。
勝手に世界を恨んでだんまりになって、怖くなってるから落ち着こうと言われ、それに逆ギレ、その流れで脅し、脅したあともしばらく恐怖映像を見せるという、どんなヤクザでも悪人でもやらなそうなマッディーな事をやってしまっている。
もう少し心に余裕があれば、今までもこんなことあったな、で済んだかもしれないのに無理しようとしたせいで、以津真天に心配を掛けさせてしまった。怖がらせてしまった。
全ての原因を悪魔側にしてしまえば、私に悪いところはない。
しかし、それではダメだ。
確かに、悪魔は私の意思に関係なく、悪魔の生存のために私の体に侵入してきた。
しかし、私がそれに抵抗できてしまったためにほとんどの悪魔を追放した。
ゆえに悪魔は“人間無骨”を使わざるを得ず、結果、以津真天・化蛇・牛鬼の3悪魔が残った。
3悪魔の力を持って私を操り、この世界で生きていくための糧を創ろうとしたが、これも私が抵抗することで上手くいかず、共生しようという話になった。
私は、自らの手を汚さないために、悪魔にスカイツリーを倒させ、そののちに私の体を取り返していった。
その過程で牛鬼は支配域が無くなったことで私という枷から離脱。
その後は時間をかけて悪魔の絶望ノルマを消し去ることに成功して、今回の出来事が起こったというわけだ。
悪魔に乗っ取られ始めた時から今までの流れを考えると、やはり、私が以津真天を怖がらせていい理由にはならない。
一度共生するという話に賛成してしまったからには、私達は一心同体。
共に支えあっていくことを誓ったわけだ。
(あれ、そういえばまだ化蛇の“声”聞いてない気がするんだけど。。。)
「ねぇ、以津真天、化蛇はどうしたの?」
≪うぅっ、はぅっ、、、、はぇ?≫
?
「もしかして泣いてたの?」
≪ぅん。仄葉ちゃんがぁ、考えてる時の“声”ぇ、聴いてたら泣けてきちゃってぇ。。。。≫
「そっか。それで、化蛇は?」
≪あぁ、あのヘッピリ蛇はぁ、仄葉ちゃんの恐ろしさに魂の髄まで溶けて“人間無骨”を介して仄葉ちゃんの魂に混ざっちゃったんだぁ。≫
…………
……
「んんんんん?!はぁぁぁあ!?それはいったいどういう事なの!?!?え?ん?混ざったって何!?」
≪えぁ、そのままなんだけどぉ。。。≫
「も、もうちょっと、具体的に言えない??」
≪えっとねぇ、悪魔そのものが意識体と魂だけで出来てるって話ぃ、覚えててくれてると思って話すねぇ。化蛇はねぇ、意識体が恐怖でどっかに飛んでっちゃってぇ、それで魂だけ残ったんだよぉ。でもでも、魂だけで存在できる時間て長くなくってぇ、普通ならそのまま砕けてぇ、一部が近くの強い魂力を持つ魂に引き寄せられてぇ、残りは空気みたいになっちゃうんだよぅ。まあ、化蛇の場合はぁ、魂が仄葉ちゃんと“人間無骨”で繋がってたからぁ、塵も芥も残さず全部仄葉ちゃんの魂に混ざったよぉ。≫
「ふ、ふーん……、え?じゃあ、魂力が大きくなったってこと?」
≪そうだねぇ、そうなんだよ~。実はぁ、私もたくさんの魂の欠片を吸収してるんだよぅ。悪魔は基本不死身だけどぉ、“聖”な力で致命傷貰っちゃうと死んじゃうんだぁ。悪魔が死ぬときもぉ、先に意識体が消滅してぇ、後で魂が崩れるんだよぉ。私の魂力もそこそこ強いみたいでさぁ、近くで仲間が死んじゃった時に、私は少しずつ魂的にどんどん強くなったねぇ。たまに、権能ごと吸収することもあってぇ。ぐすっ。。。≫
「そ、そっかぁ、じゃあさっきから感じてる違和感って、翼と尻尾なの?」
≪私にはぁその違和感が分からないけどぉ、そうなんじゃないかなぁ。。≫
「適当かよぉ。。。それにしたって、まじかぁ、翼と尻尾完全に私のモノになっちゃったかぁ。」
≪なっちゃったぁ~≫
「あぁ~。っていうかさ、そんなに簡単に意識体って飛んでっちゃうモノなの!?」
≪どうなんだろうねぇ。実際の所ぉ、元の世界でもたまに聞いたからぁ、飛んでいくことは飛んでいくんだね~≫
「ほへぇ~。と、ところで以津真天さん、そのなんか間抜けな“声”はどうしたの?」
≪え?わっかんなぁい。なんだろ、仄葉ちゃんの声聞いて安心したからかなぁ。なんかいろんな感情がごっちゃごちゃで何がなんだかだよぅ≫
「ふぅん?んっ?待って、私が気絶してからどれくらい経ったの?」
≪うぅん、体感で3週間は経ってるかなぁ。でもぉ、確信はなぁい。なぜならぁ、私は外の様子も音も熱も何一つ情報を貰えてなかったからぁ≫
「3週間………」
(3週間の気絶ってヤバイ。魂が自然に完全回復するのにそれだけの時間を要さなければならないほどの疲労と暴走。一体どれだけ暴れたんだか)
以津真天とそんな風に話ながら、私を中心とする浅い、しかし、半径が10mはあるパラボラ状に窪んでいる、恐らく自爆跡と思われる穴から抜け出す。
すると、私の目に青と白と灰色の広大な荒地が映る。
青は空と海、白は砂浜、灰色は草木が燃やされた結果生まれた灰だ。
(よし、とりあえずこの島を探索するか。)
ところどころに穴が開いている。
穴をのぞいてみる。
とても深い。
見えている部分は陶器のように光沢があって、太陽光が反射して眩しい。
触ってみると、ボコボコとしているのが分かる。
炭化した大木が仁王立ちしている。
立派に私の攻撃を受けて死んだらしい。
指で突っつくだけで表皮がボロボロと落ちていく。
綺麗な動物の骨が散乱している。
炎系統の上位の攻撃を受けたのだろう。
骨になってからの時間も短く、大地も豊かなモノでなくなっているのか、全く風化していない。
骨を持ってみる。
ツルツルな肌触り。
そして軽い。
投げてみる。
岩に当たって、
カァン
と乾いた音が広がる。
駆け寄って見てみる。
ヒビ一つ入っていない。
逆に、今度は岩を魔法で浮かせて、骨の上に落としてみる。
ドッバン
「≪いやいや、それはおかしいって」≫
あまりの光景に、私と以津真天の声がハモる。
なぜか。
それは、もちろん岩が割れたからだ。
理由は良く分からないがこの骨は相当密度が高いらしい。
武器に丁度良さそうなので拝借しておく。
「おっと、これはレールかな?」
人工物を見つけた。
こげ茶色で何やら腐った臭いのする、格子状で平べったいささくれがたくさん付いているモノが連なっている。
朽ち果てた木製のレールだろう。
私が居た地球の文明レベルではなさそうなので他の世界のモノだろう。
とすると拝借してきた骨の持ち主もこの世界の住人だったのか。
そして、この地も私達の地球と合体することになった世界の土地と考えるのが自然だ。
レールを辿って歩いてみた。
その結果、上り坂を見つけ、登り切った所に建造物の跡らしき場所を見つける。
複数ある。
土台や壁の一部が残っているのみで、それがどんな建物だったのかは判別できない。
ただ、丘の頂上にある事と、近代的な建築でなさそうな事を考えるに、物見やぐらとかそういう感じの建物だったに違いない。
道らしき硬い地面を歩いていくと、また建造物跡を見つける。
今回も大した数はない。
しかし、集落だったのではないか、という推測がなんとなしに浮かんでくる。
私が暴れた場所からかなり離れたのか緑が増えている。
マイナスイオンとマナを感じる。
森の中を突っ切ってきた。
森の中の木の背丈は、地球史上最高の高さなのではと思うほど高かった。
中学の修学旅行は鹿児島~沖縄だったが、その際に見た屋久島の屋久杉よりは確実に太く高いだろう。
そんな壮観な森を抜けることが出来た。
視界に映るのは白と青。
どうやら島を横断か縦断することに成功したらしい。
特別疲れてはいないが、体が自然と座る体勢を取る。
体の反応に身を任せて、そのまま砂浜の上に座る。
≪さて、これからどうするの?≫
「んー、何とかして帰る方法を考える。」
≪まあそうだよね。じゃあ“闇夜逃避”のランダム転移ツアーでもする?≫
「嫌に決まってんでしょ?それで出た場所が海の中だったり、戦争地だったりしたら。仮に一発で日本に行けたとしても、この姿で突然現れてみなさい。途端に大騒ぎになって、大変なことになるよ?」
≪そうなったらまた“闇夜逃避”で逃げればいいよ。≫
「それもそうだね。その“闇夜逃避”って魂力どれくらい使うの?」
≪おや?もしやノリ気?そうだねぇ、まあ、仄葉ちゃんの総魂力を100とするなら“闇夜逃避”で使う魂力は1だね。≫
「そんなに安いのかぁ~。そうなると帰還手段の候補に挙げてもいいかな。まあでも、こんなイイ天気だから、まずは無難に太陽の位置からこの島が北半球か南半球かくらいは確認したいよね。スマホか腕時計持ってれば大体の位置分かったかもしれないけど、ないモノはしょうがない。」
そう言って、私は近くの木から枝を折ってきて砂浜に刺して、枝の影の先端に印をつける。
太陽の動く速度は1時間に15度。
20分ぐらいに1回印をつけていけば日陰の軌道が描けるだろう。
20分を待ってる間は、特にすることもない。
サバイバルが必要な体であれば、今すぐにでも焚火をしたり、魚を獲ったりしなければならなかったと思うが、私はその必要がない。
目の前の広大な海をぼーっと見ながら印をつける事3・4回。
付けた点を結んでそれぞれの点に番号を付けて軌道を浮かび上がらせる。
それによると、現在太陽は昇っている最中。
東西南北も分かった。
北側に影が出来ているので、この島はおそらく北半球。
そして、影は短い。
つまり、赤道に近い。
実際、太陽の角度は日本より高い。
かなり見上げないと太陽が見えない。
これはまあまあラッキーな事だ。
いくら翼が生えていたって疲れない事は無い。
≪あとは経度が分かれば具体的にどの方向に向かうか分かったんだろうけど。≫
「そうだね。時間が分かれば良かったんだけど、なんか無いの?以津真天さん。」
≪えー、そんなこと言われても…、あ、牛鬼と連絡が取れれば何とかなるかも!≫
「おお!頑張って!」
≪魂力そこそこ頂くから、急激な疲労感来ると思うけど驚かないでね!≫
「いいよ!どーんと来い!!」
≪それでは行きます!せーのっ≫
≪“魂々隔結念話”≫(ああふぅっ!!!)
……………
(え、脂汗ヤバ)
………
(動悸がっ、はぁっ、しっ、深呼吸ぅ)
スーー、ハァーー
……
…
(ふぅ。)
「どう、ですか?以津真天さん。」
≪うん、牛鬼と連絡取れたよ。今居る国は日本で時間は20:38だって。ってことは、一回目の“闇夜逃避”で繋がった洞窟は日本のどこかだったんだね!≫
「OK。20:38ね。じゃあ、日本は20:00という事で。この島の現在時刻を11:00と仮定すると、緯度の差は9×15度で西に大体135度。真南から西に45度。南西方向に向かえば、日本周辺には確実に行ける。よし。」
≪まさかだけど、今から出発とかしないよね?≫
「まさか。そんなことしないよ。しっかり休むよ?でも、遅くとも一週間後には出る。」
≪分かった!じゃあ、それまではお喋りしよ?≫
「うん、いいよ。」




