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33: 子龍の産声

「あ~、すいませ~ん、ご飯とお味噌汁とキャベツのお代わりくださ~い!」

「はっ、はいぃ、かしこまりましたぁぁぁ」

「咲、あんたどんだけ食べるの………」

「しょうがないじゃん。だって、昨日の2限目位からずっと気絶したままだったんだよ!?確かに、今日帰ってきてからお弁当4個食べて、ジュース3本を飲んだけれども!!!丸々2食なし!水も取れなかったんだからそれを取り戻すくらいにはたくさん食べるよ!?」

「そうだとしても定食に追加カツ3皿でデザートも頼んでるのにお構いなくエンドレスお代わりをしてるのを見てるこっちとしてはツッコミたくもなるわよ………」


そんな会話をする私達は、とんかつ琶紅(わこう)にて早めのランチをしている。

営業開始の11:00に入店しに来たのと、今日が火曜日であることも相まってあたし達の他には2組しかいない。

頼んだのは“ロースかつ鍋御飯”と単品の“ロースかつ”、“チーズ入りささみカツ”と“キャベツメンチカツ”を5個ずつ、それに“わらび餅とアイス(バニラ)”。

まあ、確かに皆からすれば多いかもしれないし、店員さんもなんだかこの世の生物ではないモノを見るような眼をしてはいるけども、そんなことを気にしていてもしょうがない。

あたしは食べたい。

だから食べる。


いや、何かと言えばヤケ食いに近いとは思う。

なぜかといえば、もちろん例の名前も言いたくないあのクソ龍のせい。

朝、保健室で昨日の夜の事を現実逃避してみたものの、やはり一度覚醒したのは間違いなくて、あの龍鱗も幻視とかではない事は明らかで。

あたしは琶紅に来る前にクソ龍を『加護に祝福を』で呼び出してそのことを問い詰めた。

なぜか何も捧げてないのに顕現したからすごく驚いたが、貢物に関しては前払いが出来るようで、昨日の神の領域での会話や夜のアレで発生した感情がその代償になったと聞いて、遊ばれたんだなと分かって一発殴った。

あれの正体は防御魔法の一種だと言う事は分かった。

それをあたしの体に強制的に発現させて私の反応を見て楽しんだというわけだ。

その魔法について喋った後は、ついでと言わんばかりにペラペラと『曖昧性と魔法の強さの関係』みたいなことをひたすら語られたがいろんな意味で疲れたあたしの脳では理解できなかった。


そんなことを思い出してしまって、遊ばれた腹立たしさと語られた内容になんかモヤモヤしてる気持ちを食欲にぶつけながら、ミリアが戦った時の話とママ達が戦った話、フィーロアさんが見た空の虫島の話(何やらシュニーさんが『話さないって約束したよね!?』と喚いていたけど)、午後家に来たらしい芳田憂子と楓の話を聞いた。

どの話も驚きの内容で、口に含んだモノが飛び出しそうになったり飛び出したりした。


あたしからは気絶中に神の領域に居た話をした。

今もあたしの頭の上で黙ってグデーッと寝転がっている見た目だけは可愛いドラゴンを指さしながら、コイツと喋った話をした。


あたしがデザートまで食べ終わることで琶紅ランチは終了し、心なしか安心したような店員さん達を尻目に帰宅するに至った。






お腹も頭も目一杯になったあたしは自室にてぼけぇーとしている。

休暇を貰えたはいいけど、あたし目線からは今まで全く休めていない。

まあ、肉体的には休んでいたかもしれない。

少なくとも意識的には今も目の前で黙ったままフヨフヨしている憎たらしくも見た目は可愛いドラゴンのせいでいわば異界に閉じ込められていたわけだ。

起きた後も友奈先生という天然の災害に心を乱され、帰ってからも平静とはかけ離れたとは言わないまでも落ち着くことが出来たかと言われれば出来ていないと答えざるを得ない状態ではあった。


そんなこんなでやっとの事でのんびり出来ている訳だ。

アニメのサウンドトラックをヘッドフォンで聞きながら、マッサージモードになっているソファベッドに腰かけて、少し暗めのオレンジに光るランプライトを眺める。

(あ” あ” あ”~~、癒される~~~ぅ!!!

マジで疲れた………


今日何しよう。とりあえず龍の防御魔法の練習でもしよっかな。

あー、休暇中にすることじゃないか。

休暇になってない。


それならストレス発散のために射撃場にでも行くかなぁ、ん~、でも、歩いていくには遠いし、そのために送ってもらうのも悪いし、、、、マジカルスクーター、、、は操作したくない。

また飛んだりしたらどうしようもないし。あれ、結構トラウマ。


大人しくしてるのもつまらないしなぁ。

やっぱ龍の防御魔法の練習しよっ。)


「ねえ、ちょっとあの龍の防御魔法、練習したいから付き合って。」

「ん?我に言っているのか??」

「あんた以外に誰が居んのよ。」

「…………。

なあ、咲よ。フランクに話してくれるのは嬉しいのだが、もう少し敬意を含んで話してくれてもいいのだぞ?」

「は??何言ってんの??自分が何したか自覚ある??敬意を払ってほしいんだったら言動を振り返って盛大に反省して謝罪してほしいんですが???」

「いや、な、アレ以降我は何もやっていないのだ。だから少し考えてほしいというだけd」

「何???敬意を含んでないといけない理由でもあるって訳??」

「……分かった、分かった。練習、行こうか。」






あたしは龍の防御魔法、改めドラゴシールドの練習のためにみわたし林地に来た。

家を出る時に皆にどこに行くのか聞かれたので答えたら皆も見たいというので全員が来ている。

皆はみわたし林地に設置されている木製のベンチテーブルに座っている。


「じゃあやりますか。もきゅゴンは「来い!」って言ったら木を折るくらいの物理攻撃をお願い。」

と二言呟いて、午前中クソ龍に言われたドラゴシールド自体の事と曖昧性と魔法の強さの講義を思い出す。


(えーと、なんだっけ、そもそも魔法を行使するのに具体的な手順を踏むようなイメージは必要ないって話だった気がする。まずは今までの防御魔法でやってみよう。でもなあ、具体的な手順を踏むようなイメージをしないって難しいなあ。


あ、運動エネルギーとかそういうのを考えなくって良いってことなら、動かない盾とかをイメージすればいいってこと?


動かない盾。

動かない盾。

動かない盾。)


あたしのイメージに沿って、目の前に透明であたしと同じくらいの高さの盾が現れる。


「来い!!」


と叫んだ瞬間にZDaaaanという激しい音とともに打撃か斬撃か分からないような攻撃が盾に直撃する。


(おおっ?!数メートル押されただけっ?!弾け飛ばされるくらいの覚悟はしてたけど……。思ったより出来てるのかな??


うんうん。思ったより簡単かも。肉体的には結構しんどかったけど、あんまり魔法を使ったっていう感覚はないなぁ。

でもあれだね、結局、盾そのものが具体的なイメージを形作っているから物理法則がある程度働いちゃったみたいな感じか。

それで想像の生物である龍をイメージすることでより曖昧にしてるのかぁ。なるほどね。じゃあ想像の生物ならなんでも強くなるのかなぁ。


うーん、想像の生物ねえ。ゲームでよくいるのはサラマンダーとかケット・シー、ゾンビ、人魚?どれも魔法耐性が強そうなイメージがあるなぁ。


物理耐性が高そうなイメージのある想像の生物………。

巨人、ドラゴン、、、、ゴーレム?え、全然思いつかない。ゴーレムはロボットって考えちゃうと意味ないし……。なるほど。ドラゴン。


よし。

ドラゴンがあたしを守る。

ドラゴンがあたしを守る。

ドラゴンがあたしを守る。)


イメージに沿って、あたしに覆いかぶさるように若干金色を纏ったドラゴンが現れる。


「おぉ?なんか思ってたのと違う……」


というミリアの声を横耳に挟みつつ、


「来い!!」


と叫ぶと、クソ龍の放つ攻撃は先ほどのような爆音もなくドラゴンに直撃し、さらにあたしの方には全く衝撃が来ない。

(え?)「『「「「え?」」」』」


……


「いい感じではないか?咲。その感じで、自分が龍だと思い込んでみよ。」


あまりの現象に戸惑っていると、アホ龍の方から嬉しいレビューと妙なアドバイスを送られる。


(マ、マジかぁ、こんなに効果あるのかぁ、、、、

でも、結構だるい……、結構オドのマナ汚れた気がする……。

で!?なんだって!?!?自分を龍だと思い込む!?

何その拗らせた中二病みたいなアレは!?


ま、まあ、やってみよう。


あたしは龍。

あたしは龍。

あたしは龍。)


イメージに沿って、あたしの体から黄金のオーラが出てきたと思ったらそれが龍鱗と思しき形を作っていく。


「『「「「おぉお~」」」』」


皆の感嘆に頬を少し赤らめつつも、


「来い!!」


と叫び、三度目の同じ攻撃を、龍鱗を纏った腕を掲げることで防ぐ。


「ぐふっ!!!」


しかし、防ぎきれない。

あたしは訳も分からず地面を転がる。

同時に皆が駆け寄ってきてくれる。


「「「咲!!!」」」

「大丈夫……、外傷はないから……。」

「本当!?シュニー診てみて!」

『落ち着いて、ミリア。今診てるから。


………………

…………



うん、大丈夫かな。全体的に簡単に治療出来る程度のダメージしかなかったよ!』

「よかった。。。」

「あ、ありがとう、シュニーさん。なんかスッキリしたよ。」

『いいってことよ!!』


(それにしたって、防ぎきれないって何?さっきのドラゴンを取り憑かせるイメージをしたけどそれじゃダメなの?でも、魔法行使の疲労はさっきと全然違う……、そんなにマナを使ってない……)


「どうする、咲よ。続けるか?」

「うん……、でもその前に、なんで今ダメだったか分かるなら教えて?」

「そうだな。二回目のイメージが強く残っていたから良かったが、“守る”事に対するイメージが足りなかったのだな。今のではイメージ次第では即死だったかもしれん。」

「え、え、ちょっと待って!?もきゅゴンっ!!それじゃあ、攻撃しないで下さいよ!」

「落ち着くのだ、ミリアという名の少女よ。大丈夫だと分かっていたから攻撃したのだ。流石に殺しはせん。」

「そ、そう、ですよね……」


(うん、今のを聞いて興奮しない方がおかしい。まあいいや、そこを問い詰めたところで意味ないし。実際軽傷で済んだわけだし。もう一回やろっ。


それで、守るイメージが足りなかったんだっけ?

且つ、曖昧なイメージと。


じゃあ、これで行こう。


あたしは硬い龍。

あたしは硬い龍。

あたしは硬い龍。)

先ほどと同じように、イメージに沿って体から黄金のオーラが出てくる。

違うのははっきりとした輪郭の龍鱗が腕に刻まれていく事。


さっきみたいに皆から感嘆は挙がらない。


「来い!!」


攻撃が来る。

あたしは腕を掲げて受け止める。


…………


爆音も衝撃もない。

少しの痛みも襲ってこない。


「うむ。いいのではないか?ひとまずは完成と言ってもいいだろう。」

「そうなの!?ふーっ!!!疲れたぁ!」


あたしは若干の緊張から抜け出せた達成感から大きく息を吐いて地面に仰向けで倒れる。


(思ったよりすんなり習得は出来た。でも、もきゅゴンの今の言い方だともっと質を上げられそうね。)


簡単な感想を心で呟きながら起き上がる。

駆け寄ってきた皆から「今日やる必要あった?」だの「怖かった」だの「ちょっとカッコよかった」だの言われながら帰路に着いた。







今は夜。

今も今とてまったりしている。

窓の外で輝く月を見ながら、ソファベッドに横になって毛布をかぶって寝る体制に入っている。

もきゅゴンもまた、窓辺に置かれたぬいぐるみのように動かず、外を眺め続けている。


「そうだ、咲。明日にでも椋平の下に行こうではないか。」


と、何の前触れもなくそう言うもきゅゴン。

意図を測りかねるあたしは無言のままもきゅゴンの方を見続ける。

しかし、もきゅゴンはこちらを見ずに話を続ける。


「この世界は既に数多の世界が夢融合して出来ている事が分かった。ああ、夢融合といっても分からないか。まあ、簡単に言えば不可逆な合体の事だ。確か、お主らの目標の一つに“元の世界に戻る”というものがあったはずだ。それが不可能であること、それ以外にもこの世界には特殊な事が多く存在するのだが、そこら辺の知識とプラスアルファをとりあえず教えてやろうと思ってな。この混沌な世界で生きるためには必要と思われることだ。」

「えっと、そういう知識を教えてくれるのはありがたいんだけど、宮椋博士も忙しいと思うからさ、アポイント取ってから行こう?楓の件もあるし、どうせ行くなら色々纏まってる方が面倒臭くないと思うんだ。」


あたしはもきゅゴンが喋った内容を咀嚼できないまま、適当な理由を付けてアポなし訪問を辞めるように言う。


「……、そうだな。」


もきゅゴンはそれだけ言うと、再び物も言わぬぬいぐるみに戻った。


あたしは、今の会話で楓の事を思い出し、LAINEを開いて[陽田楓]の[トーク]画面を開く。


[ヤッホー、おつおつ!

あたし、紫岸咲は復活しました~!(#^^#)]

[おお~!!よかった!

昨日来たときはいなくって心配したけど、大丈夫なの!?]

[うん、全然大丈夫~。

休暇貰ったはいいけど暇すぎて魔法の練習してたわ~(*‘ω‘ *)]

[ええっ!?それはそれでどうなの!?Σ( ̄□ ̄|||)

まあ、それなら大丈夫だね~]

[それよりもさぁ、楓は楓でなんか大変なことになってるねぇ(;・∀・)]

[そうなんだよ~(>_<)

ミリアちゃん達に聞いたと思うけど、何やら悪魔と天虫が私の中で戦ってるらしいんだよねぇ(@_@)]

[まだ戦ってるの?]

[うん………、なんていうかカオスだよね!]

[収まる気配もない感じ?]

[そうだねぇ、収まる気配というか、なんか私に二種類の声が掛けられてて、それぞれが私を手に入れるみたいな事言ってるんだけど、私がそれを「私のために争わないで!」みたいな事言ってるから、総合すると私が事を収めに行ってない感じだよね(^^)v]

[www

いや、V(イェイ)じゃないよ。

え、体に不調とかはない感じ?]

[そうだねぇ、そういうのはないね。]

[それならいいんだけど。

それでさ、こっちの都合で宮椋博士にアポ取ろうと思ってるんだけどさ、その戦いを収めるつもりはない?]

[なるほど~、それを言うつもりでLAINEしてきたんだねぇ?(-“-)]

[バレたかっ(‘Д’)

まあ、冗談はさておき、どうなの?]

[うーん、なんか怖いんだよね。片方が虫人ってことはそっちを受け入れればミリアちゃんと同じく魔法少女になれる訳でしょ?でもその時、悪魔の方がどうなるのかなって。そのまま出ていってくれるなら御の字だけど、出ていかなかった場合、私が爆発とかしないかなって。逆もまた然り、って感じで受け入れたくないんだよね。]

[なるほど。じゃあ、逆にそのままを維持し続けてよ!なるべく早くアポ取るからさ!]

[うん!それなら頑張れそう!

あ~、じゃあ、もうおやすみ~。私は明日も学校あるんで]

[あっ、そっかゴメン!m(__)m

じゃあ、おやすみ~~~]


この作品を読み続けて頂いている皆さま。

明けましておめでとうございます。

私は元気です。

相変わらず留年の身にあり、この1月が最後の勝負となるので






すが、マイペースに更新し続けようと思います。


これからも各話日付が大きく空くとは思いますが、

読み続けて頂ければ幸いです。

皆様が健やかに過ごせることを祈ります。

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