30: チェンジアップで縦スライダーなキャッチボール
「ちょ、ちょっと待って、秩序を整えるって何!?
法則が崩れるってどういう事!?ちゃんと説明して!?!?」
≪ああ、すまぬ。そうだな。
まず今からやろうとしている事から説明しよう。
端的に言えば、その宮椋仄葉という娘を助けようと言う事だ。
具体的な行動は秩序を整えに行くという事。
そしてその秩序を整えに行くというのは、“法則が崩れる”という事と関係している。
では、咲よ、一つ問いに答えて貰おう。
ずばり、法則とはどういうものだと認識している?≫
ええっ、ここで質問!?
本当に脈絡がない会話しかできないの!?この神は!
……
はぁ、もういいや。考えよう。
えーと、法則とは何か?
え、法則は法則でしょ。
法則って聞いて一番に思いつくのは数学とか物理の○○の法則とかだけど、、、、
うーん、ああいうのってとにかく覚えることしか考えてなかったからなぁ。
なんか、ただそういうものっていう風にしか認識してなかったと思うなぁ。
「えっと、特別な認識ではないけど、なんか、決まり切ってるそういうモノっていう事しか考えつかないよ?」
≪おお、思いの外的外れではないぞ、その答え。
そう、そうなのだ。法則は法則として完結していて、また、原則の発展であり、秩序の塊もしくは連続体である。
さらに、原則は法則であり、法則もまた原則である。
ただ、何にしてもそれらを証明することはできない。
そういうモノだ。≫
うーん、良く分からない…まあ、でも、なんでもいっか。
ほのを助けられるっていうなら、秩序を整えるんだか何だか知らないけどやるしかない!
でも全然具体的じゃない!!
「なるほど。なんとなく今の私には分からないことが分かった。
それで?
どうすれば秩序を整えることが出来るの?」
≪ズバリ、魔法を行使するということだ。≫
「何の魔法?」
≪時に咲、魔法その物について深く考えたことはあるか?≫
まずあたしの質問に答えて……
というか、また、質問?
でもまあ、さっきの質問よりは単純明快ね。
「もちろん、考えたことなんてないわ。あたしは宮椋博士じゃないからそんなこと興味ない。」
≪まあ、そうだろうな。
当たり前に使える力に深い興味を持つのは何時であろうと、何処であろうと、その力を赤の他人のために使おうと思う人間のみであるからな。
なぜかな。≫
「なにっ!?あたしが気配りのできない自己中だって言いたいのっ!?」
腹立つっ!!!
なんなのっ!ホントに!
この無駄にきらきらした鱗を持つまともな会話をしようとしないデカブツっ!!!
≪そうではない。そもそもそれは的外れな感想であるな。
まあ、そこはどうでもよい。≫
全っ然よくない!!
少しは会話をしてる相手の感情を推し量りながら喋って欲しいんですけどっ!
≪では、お主たちのいう魔法、いや正確に言えばそのように見えている不鮮明な何かについて話してやろう。
端的に言えばあらゆる事物事象の根源のひとつにして、一つの法則だ。
人間達のいう科学技術も魔法なくしては生まれていない。
そもそもあらゆる生物は魔法がなければ生まれていない。
そしてもちろん、生物そのものも魔法によって生きることが出来ている。
人間の認識としてはどうやら、
魔法は過程をある程度飛ばしてそれなりの結果を得ることが出来る、便利で、それでありながら曖昧なものであり、
科学技術は明確な過程を経て確実な結果を得られるものである、と捉えているようだがとんだ間違いだ。
どうやって科学技術が発展していったかを考えれば、それが魔法の派生物、つまり魔術の一端であることくらい簡単に辿り着きそうなものだが、どの世界でもそこまでたどり着く生物を見たことはない。
なぜならほとんどの世界で魔法と高度な科学技術が同時に発展することはほぼないからだ。
それはそれとして、なぜ科学技術も魔法であるか教えてやろう。
その前に、これからの話に出てくる魔法が本来の魔法の事で、いわゆる魔法というのが人間達の認識している魔法であり、それを魔象と呼ぶことを前置きしておこう。
科学技術とは、数字という魔法と自然の秩序・法則/現象である魔法を比較・検証し、それによって仮定の原則・法則を導きだし、それを自らの時間と努力と引き換えに扱いやす形の法則に丸め込んだものがまとまったモノ、もしくは、それに準ずる力の事である。
その努力の内容とは血肉を消費し、心を削り、汗を伴いながら、紙などに文字を書くもしくは図を描くことである。
それに対し魔象は、自身の素の力、咲達の世界の認識でいえばオドの力を削るもしくは消費し、気を集中させながら、必要があれば詠唱やイメージでの補足をし、血肉を捧げ、魔法陣を描くことで完成する力が引き起こす事象である。
魔術もまた、魔象と同じような手順で、しかし、魔象を発現させるよりも時間をかけ魔法陣を描く。
魔術のそれははっきりとした文法や幾何学に則った記述を必要とする。
そして、それらをモノに記すことで魔象の定着ができ、結果多くの人間がそれを利用できるようにしたのが魔術と呼ばれる技術の一つだ。
流石の咲も今の説明で分かっただろう。
これら3つのモノがどれも何かを犠牲にした結果生まれた同質のものであると。
しかし、これだけでは咲達にはいまいち掴めないだろう。
これらをお主たちの世界での具体的な事例で説明しよう。
例えば、あらゆる科学の研究はどの分野も未だ留まることを知らないが、それはなぜか。
ほぼ全ての事象・事物が魔法に則って役割を得ているからである。
それはその研究自体も魔法から派生したモノであり、その研究対象も魔法により存在を確立しているものであるからで、つまりそれは一つの法則を持って、その法則の一部を証明しようとしている事と同義であり、もちろんできないことは自明である。
多くの分野に分かれることが出来たのは様々な差異を切り捨てたからである。
例えば、スマートフォンは様々な技術が詰まっているが、利用するモノはその動作原理を知らずとも容易に利用できる。
森の奥に住む原住民族にでも、それを“使う”ことはできるであろう。
例えば、生物の進化は遺伝子の突然変異であるとか、厳しい環境が生物を進化させるだとか言われているが、その真理は、それぞれの生物が仲間の命を代償に自らの小さき意識がそれぞれに生への活路を所望するという努力の積み重ねにより、新しい姿あるいは力を手にすると言う事である。
この例に出てくるあらゆるモノはそれ自体が曖昧である。
また、それぞれの過程にも段階は異なるがどれも魔法が適用されており、それゆえ魔象が発現させられることで生まれたモノとして認識できる。
それ以前に人間の定めたあらゆる物理法則や数学法則は、小さすぎる値を無視しそれでありながら、それを完全としている。
その小さすぎる値を無視しても理想に近いもしくは理想な結果を出せるのは、数字を信頼しているからであるが、数字そのものもやはり人間の定めたものであり、数字という原則がそれ自身を証明できないがゆえに、そして、その数字を真実としてとらえているがゆえに、それを利用した法則全てはやはり曖昧なもので、それは科学技術が魔法の補助を受けているからこそ成り立っていると言う事を示しているようなものだ。
今一度、ここで魔法が何であるか述べよう。
魔法とは、その曖昧性を核とした法則の一つであると。
魔法であると。
つまり、我が先ほど述べた“魔法の行使”とは、魔象を引き起こそうという事と同義であり、新しい法則の創出であるということを指している。
ここでやっと初めの質問に立ち返れるわけだが、法則が“崩れる”とは、それが“散乱” することと同義であることは分かると思うが、故に整理するという意味で“整え”る必要があると表現したわけだ。
法則と秩序がニワトリと卵の関係にあるゆえに秩序を整えると言ったが、それは法則を整えるという事と同義である。
そして、そのためには新しい法則を創出する必要がある。≫
…………
ええっと、つまり??
≪ふむ。いまいちよく分からないという顔をしておるな。
まあそれもそうか。
では、端的に言い直そう。
仄葉ちゃんを助けるには新しい魔法が必要だよ、と言う事だ。≫
じゃあ、さっさとそう言いなさいよ!!!
わざわざ遠回りに難しく言わなくていいからぁ!
分かんないからぁ!
こんなに長々と言われても脳みそに入らねぇから!
というか、私達のホノを気安く仄葉ちゃんとか呼ぶんじゃねぇぇぇぇぇ!!!
≪ついでに言えば、秩序を整えに行こうと先ほど我は咲を誘うような言い方で述べたが、我に、否、神に出来ることは魔法の実行をサポートする以外何もない。
まあ何にせよ、咲が頑張って考えて心友を助けるための魔法を作ってね、という事だ。≫
「はぁいぃ~!?!?」
え?なんで?
今までの流れはどう考えたって、ハイエンリー神が無条件に私達を助けてくれるっていうあれじゃないの!?
神様として皆を救ってやろう的なあれじゃないの!?
それともあれかな、さっきハイエンリー神が言ってた巫女かどうとかっていうのが関係してるのかな。
はあ、分からないこといっぱい………
何をするにしたって早く現実に戻らないと何もできないし、ハイエンリー神に意識を元に戻してもらえるように頼まなくちゃ。
「じゃあ、色々話を纏めたいし、現実に戻してくれない?」
≪そうだな。いいだろう。
しかし、こちらとしても話したいことはまだたくさんある。
この際、咲たちの世界には多くの事を伝えようと思う。
だから、起きたら椋平の場所に行ってくれ。≫
「わかった。」
≪では、後でな。あ、起きた後もしかしたら体が不思議な感じになっているかもしれないが決して騒ぐのではないぞ!≫
「えっ!?なに!?私に一体何をしt」“◎∧∇]γΦ}■δ” “щδ”
########################################
ハッ
……
…………
……………………
見慣れない、淡く白い、天井、、、
暗いのかな……
消毒液臭い空気、、、
淡く白いレースカーテンに、囲まれたベッド
ここは、、、
「んんっ、……
よいしょっとっ」
保健室だね。
でも、誰もいないし、部屋も暗い。
窓開けよっと。
ん~、風が気持ちぃっ。
月もキレイだねえ。
満月と下弦の月の間くらいのが昇ってますねぇ。
さて、時計はどこかなぁっと。
ええっ、もう深夜の1時じゃん!
起きたら宮椋博士の所に行けとか言っといてこの時間はアホだろ!
あのクソ龍めぇっ!!!!!
しかも乙女をこんな時間まで捕まえてるなんてっ。
なんて卑猥な龍なのっ!!
あ、そういえばクソ龍なんかヤバいこと言ってなかった?
体がどうとかって……
電気付けて確認しよ。
ええと。
あ、あった。
パチッ
ん、点いた。
鏡鏡。
え
………
いや、これは夢。
うん、絶対に夢。
多分起きたら治ってる。
だからこの夢ベッドで寝るっ!
寝るったら寝るもんっ!
もうやだぁっ!
おやすみぃっ!




