表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の放浪記   作者: owl
91/121

魔力を使いました

「…凄まじいな」

俺は結界を集中させ、どうにか豪雨の様な攻撃を受けきった。

女神パールファダの一撃すら受けた結界である

範囲を限定し、自身の目の前に展開できれば受けきれないことはない。


「ほう、まだ生きているとは。少々プライドが傷ついたよ」

こちらを見下ろすローファン。


…この魔族は強い。


すべての武器の性能を余すところなく引き出している。

他にどんな手があるのか未知数な上に、油断もなく隙もない。

このローファンと言う魔族、魔力なしで勝てる相手ではない。


魔族である俺の身体能力で受けきれないのは今までになかった。

このローファンと言う魔族、実力的にクラスタよりも上。

もしかしたらオズマと同等かそれ以上。


「あきらめる気になったかね。私の目的はイーファベルドのみ。

ここで引くのならば見逃してやってもいい」


「それはこちらのセリフだ」


「やれやれ、蛮勇を気取るか。玉砕するつもりかね?」


現在オズマはバルハルグと戦っている。

ここでこいつを逃せば間違いなくこいつはオズマの場所に向かうだろう。

そんなことは断じて認めるわけにはいかない。


オズマはこんなふがいない俺のことを主と認めてくれた。

ならば俺はオズマの主として無様な戦いはできない。


魔力を行使する、痛みが電撃のように全身を駆け巡る。

『天月』に魔力が注がれる。


「ユウ殿」


「エリスは下がって」


俺はエリスに結界を張った。

激痛が電撃のように全身を貫く。

攻撃のとばっちりを食らわないためと、その場から動かさないためだ。

頑固なエリスのことだ。

俺と喧嘩してでもこの戦いに参加しようとするだろう。


「ユウ殿…何を…」

追ってきたエリスが声を出す。

エリスの動きに澱みがある。

木に叩きつけられた衝撃でやはりエリスはどこか痛んでいるようす。


「後は俺に任せてくれ」

俺はエリスを見て笑ってみせる。


こいつをオズマのところまで行かせるわけにはいかない。

ここでエリスにまかせるつもりはない。

こいつはここで俺が止める。


こいつは俺しか止められない。これは俺の意地だ。


「二人で戦えば少しは勝機はあったものの」

あいにくこっちは体が限界っぽい。

全身が悲鳴を上げ続けている。活動現界までもうわずかだろう。


「だが同じこと。また再び初めから繰り返すがいい」

ローファンは紅貫弓パルミッサを出現させ、引き絞る。


俺は『天月』を抜き、無造作に矢を斬る。

衝撃がローファンの頬を切った。

ローファンはあまりのことに目を見開いている。


魔力を使ったことで全身の痛みで意識が飛びそうになる。

だがここで倒れるわけにはいかない。

俺は歯を食いしばり飛びそうな意識を手繰り寄せる。


「我が矢を斬ったのか」

ローファンが唖然とした表情を見せる。


「全力でこい。次で勝負を決めよう」

俺はできる限りの挑発をローファンに行う。

ここで逃げられればこの体には追える余力は残されていない。


「了承した」

俺はローファンの言葉ににやりと笑う。


ローファンは紅貫弓パルミッサを手に出現させ、引き絞る。

矢にはローファンの魔力が集約していく。

ローファンは怖ろしいまでの魔力を矢に込める。

掛け値のなしの全力。次に来るのはローファンの必殺の一撃に他ならない。


「避けろ、ユウ殿」

エリスはその刹那、その力がどんなものか理解する。

先ほどの受けた攻撃とは別次元の攻撃だ。

完全に本気で引き絞った矢に、ローファンの魔力が乗せられている。

どれほどの力を持つのか計り知れない。


だが魔力を乗せられるのはこちらも同じ。

俺は『天月』を鞘から抜くと魔力を注ぎ込む。

銀色の『天月』の刀身が黒くなる。

全身を焼けるような痛みが襲う。


「我が魔力を込めた最大にして究極の一撃。山脈すらも貫く一撃を食らいたまへ」

ローファンは俺にそう告げると引き絞った弓から指を離す。


ローファンの放った紅の閃光がものすごい速度でこちらめがけて一直線に進んでくる。


俺は『天月』を振り抜いた。

二つの魔力の衝撃が地響きとなり、森をゆらす。


俺の『天月』はその矢を両断する。

矢は二つに分かれ俺の両側に分かれ地面をえぐっていく。

ローファンの服に縦に筋が入り血が噴き出す。

相殺されていたのか十分な威力ではない。


エリスもローファンもこれには言葉を忘れあっけにとられていた。


神の結界すら叩き斬った『天月』の力だ。一介の魔族の攻撃など容易く両断できる。

だがこれ以上は体が言うことを聞かない。

足を動かし、距離を詰められない。

ローファンにニ撃目を撃たれれば防ぎようがない。

俺は心の中で舌打ちした。


「なんという神々しい…」

ローファンは傷を受けながら『天月』に見惚れていた。


「そこの魔族、名は?」

ローファンは警戒する俺に名を聞いてきた。


「ユウ・カヤノだ」


「ユウ・カヤノ…よいでしょう。今の一撃に免じ今回は私が引くことにしましょう」

ローファンは手にした紅貫弓パルミッサを元のステッキに取り換える。


「それではごきげんよう、ユウ殿」

シルクハットを取り、一礼するとその魔族はその場から立ち去った。


俺は魔力探知と『ルート』を使い周囲にローファンがいないことを確かめる。

ローファンが立ち去ったことを確認すると俺は安堵し魔力を解いた。


バキン


安堵した瞬間、体の芯から嫌な音が全身に響く。

不思議と痛みは感じなかっただが、体の自由が効かない。

俺は口から大量の血を吐きだし、その場で前かがみに倒れる。


「ユウ殿」

俺は遠のいていく意識の中、たしかにエリスの声を聞いた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ