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異世界の放浪記   作者: owl
74/121

神を殺せ

この場所に来れたのは『天の目』とあの女性のおかげである。

あの白ローブの女性と女神の戦いはいい目印になってくれた。

あの光がなければもう少し遅れていたかもしれない。


俺は女神の前に立つ。

複数の目がこちらをぎろりと向く。殺意と敵意のむき出しになった目だ。

屋敷の時とは全く別物である。


「ただの魔族風情がこの神であるわしにたてつくと?」

女神の威圧は俺個人に向けられたものだ。

怒りで既に感覚が麻痺しているのか不快感しか感じない。


「あんたはあれだけ多くを殺しておいて何か言うことはないのか」

この歪な異形に今は憎悪しか感じない。

こいつはオズマ達のカタキだ。女神などではないただの憎むべき敵だ。


「は、とるにたらん矮小な虫など幾千幾万殺そうとも意味などあらぬ。

むしろわしの手にかかり死ねたことを感謝するべきじゃろうよ」


オズマやクラスタも等しく虫と言うことらしい。

王都での阿鼻叫喚が脳裏によみがえる。


ブチン


その女神の一言に俺の中の何かが切れた。


「人を虫と呼んだな。ならお前は虫以下の糞だ。糞は糞らしくとっとと消えろ」

腹からくる怒りが

こいつなら殺してもいい。


「は、神に向かってそんな口を聞いたことを後悔させてやろう、魔族風情が」


ここなら本気でいける。こいつ相手なら本気を出せる。


俺は『天月』を解き放ち魔力を込める。

どす黒い魔力が『天月』に吸い込まれていく。

今までその並外れた威力をずっと封じてきたが、この化け物を殺すためならどんな手段もいとわない。


殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。

殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。

殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。

殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。


「糞女神」


「虫けらが」


俺の剣が女神の障壁に阻まれる。

女神の結界を切り裂けない。

とてつもなく硬い。カルナッハの纏っていたものと比べて数倍はあろう。


「残念じゃったの。どんな攻撃だろうとわしの『断界』の前では無力。

わしを傷つけられるものなどこの世におらぬ」

勝ち誇ったように女神。


「言ってろ」

俺は剣にさらに魔力を込める。

俺の魔力により『天月』の刀身が真っ黒の魔力に包まれる。

俺の魔力による刀身への負荷が怖かったが『天月』には問題はなさそうだ。

剣の持つ何層にも叩き込まれた付与と俺の魔力が一体となっていく。


そして『天月』の力が完全に解放された。


結界ごと女神の一部が斬り飛ぶ。女神の表情が変わる。

自身が虫けらと呼びあなどっている存在が自身を傷つける手段を持っていたことに。


「小僧…一体何を…何をしたっ」

俺は黙って女神を斬り裂き続ける。

女神のムカデの様な肉体が見る見るうちに削られていく。


「再生しないじゃと…馬鹿な…」

ただの斬撃ならば女神を傷つけたとしても回復されただろう。

今の『天月』ならば女神と言う概念すらも切り裂けるということか。


俺はただひたすらに願う。

こいつを殺すために。

少しでも早く、少しでも多く、少しでも深く剣閃が届くように。


「うおおおおおおおお」

剣閃が加速し、女神を切り刻む。


もっと早く。


俺は機械にでもなったかのように

縦横無尽に飛び交い女神の結界ごとそのムカデの様な肉体を削っていく。

反撃の暇など与えるものか、このまま畳みかける。


「小癪なぁ」

女神が叫ぶと女神の障壁ごと周囲が爆散する。

核が爆発したような衝撃が周囲に拡散する。

カルナッハの使った『ディストーション・フィールド』に近いが規模も威力も桁外れである。


予想もできない攻撃に俺は爆風に一瞬、飲まれるも『天月』で爆風を切り裂いた。

もちろん無傷ではない。


「フフフ…あっはっはっはっは」

俺は笑いが止まらなかった。

あれほど脅威と感じていた攻撃すら脅威と感じない。

痛みはあるが全く痛くない。

俺が本当に恐れていたのは仲間が傷つくことだったのだと理解する。


…もう失ってしまったが。


体の傷は癒えているが女神の体の大きさは先ほどの半分以下になっている。

女神から命が失われているのを感じさせた。


こちらの攻撃は確実に効いている。

俺が、俺ならば、俺だからこそこの女神を殺すことができる。


「ここまでとはな…。わしの姉様たちとあの忌々しい六魔神以外にわしに傷を負わす事が

出来る存在が居ようとは…。敬意をわしの全力をもって相手をしてやろう」


直後、女神から幾千幾万の光線が俺に向けて放たれる。

逃げる場所すらもないほどの全方位攻撃。

『天月』で斬るにしてもこの量は不可能だ。

圧倒的物量でこの女神は俺を倒すつもりなのだろう。


「粉々になるがいい」

収納の指輪に収納した瓦礫を出現させる。

王宮でカルナッハが壊したものを収納したものだ。


「効かねえよ」

瓦礫に触れ光線が爆散し、次々に誘爆を巻き起こす。

逃げる場所すらないのであれば、届く前に処理すればいい。

飛んできた破片に傷を負いながら、俺は女神に向けて一直線に進んでいく。


「死ぬがいい」

射線が見えるのは相手も同じ。女神は指先に力を集約させていく。

今の攻撃とは違うタイプの攻撃。となると力を集約した貫通攻撃。


「お前がな」

俺は足元に瓦礫を出現させそれを足場に加速する。

足場の瓦礫を蹴ったことで、女神の放った光線の射線からわずかに外れる。

俺の頬を光線がかすめ、肉をえぐる。


俺の間合いに標的が入る。

俺は『天月』を握ると力の限り振りぬいた。


「うおおおおおおおおおおおおお」

俺は女神を『天月』で何度も切り裂いた。


何度も何度も何度も何度も。

切り裂かれた女神の一部が地上に落下していく。


「ムシごときがああああ」

女神の背後の光輪がより強い光を宿す。

女神全身からハリネズミのような全方位攻撃が放たれる。

それから逃れるすべは俺にはなく、視界がすべて白で埋まった。

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