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異世界の放浪記   作者: owl
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野郎どもの飲み会です

開いている酒場を見つけて俺たち三人は入る。

夜も更けてきたためか、ほとんど人気がなくなっている。

俺たちは奥の席に着き、葡萄酒をジョッキで注文する。

考えてみれば男同士で飲む機会はあまりなかった。

こういう場所をもう少し早く作っておくべきだったとちょっと後悔。


「やっぱりうめえぜ。都の葡萄酒ってのは」

クラスタは出てきた葡萄酒を一気に飲み干す。


「やっぱり違うのか?」


「ひどいところだとぶどうカスが入ってるからな」

満足に蒸留されていないものもあるらしい。

カーラーンにいる間に収納の指輪に大目に酒を買って入れておこう。


「クラスタは人間界いろいろとまわったんだな」


「さすがに西にはいかなかったけどな。

デリスなんてほとんど田舎で見るところねえし、マルドゥサは物騒だしな」

デリス聖王国出身であるエリスが聞いたら激昂しそうだ。


「魔導国には行ったことがあるのか?」


「一応な。ゲヘル爺の作った国って聞いてたから興味があってな。

ありゃ、酒も何にもねえ坊主たちの集まる国だ」

クラスタはつまらなさそうにつぶやいた。

学術大国と言った感じかな?

セリアを学校に通わせる候補はいい。


「春になったらそこに向かおうと思ってるんだが」


「うーん、まあいいんじゃね?ただし隣のキエフ共和国は絶対寄ってくれよ?

あそこの酒はうまいんだ」

なるほど、キエフ共和国はお酒と…。

ヴィズンにいい土産になるかもしれない。

ふと気が付けば、クラスタは俺の耳につけられた『ルート』をまじまじと見つめていた。


「それにしても『天の目』の八基目完成していたとはなー」


「…まさか…他にもあるのか?」

思い返せば『ルート』と似たものをネイアは両耳に着けていた。


「ああ、あるぜ。俺が出てきたのは七基目ができた直後だったしな。

製造期間を考えればそれが八基目だろう。

それを持ってるのはうちの中でもそれを持ってるのはネイア姐さんと四熾天の四人だけだ。

ちなみにネイア姐さんはそのうちの三基保有してる」

この剣と魔法の世界で軍事衛星七基持ってるとか…。

魔族の軍事力どれだけだよ。

魔族の連中、本気で戦えば苦も無く世界征服できるんじゃなかろうか。

ちょっと怖くなってきたので話題を変える。


「クラスタはネイアさんが苦手なのか」


「ああ。嫌いじゃねーけどいつもこっちの頭ごなしに言ってくるのがな…。

それも間違ってはいねえし、反論できねえ。口答えしようものなら後が大変なんだ」

そう言えばクラスタは手にした葡萄酒を口に入れた。

クラスタにちょっと親近感がわいた。


「大将、あんたも強いのは認めるが奴は別格だ。

あんたがいくら強かろうがネイア姐さんだけには喧嘩は絶対に売るんじゃねえよ」


「わかってるよ。ネイアさんたちには俺、ぼこぼこにされてるし」

俺の一言に一瞬の間が空いた。


「…ぼこぼこにされた?」

クラスタがこちらを見つめてくる。

オズマもその言葉に反応した様子。


「そう言えばずっと気になってたんだが、なんでネイア姐さんのこと知ってるんだ?

しっかもあろうことかネイア姐さんから迫られていた気がするんだが?」


「あれはこの『ルート』の使い方を教えてもらっただけだって」


「そもそもどうしてそんなものもらうことになったんだ?

うちの一族のもってる門外不出の技術を集約した代物だぞ。

何であんたはそんなのもらってんだよ?」

クラスタの砕けた物言いにオズマが横から殺気を放ちはじめてます。


「オズマ、酒の席だ」

俺は殺気を放ち始めたオズマを諌めた。


「以前ネイアさんを含めた六人にぼこぼこにされてさ。そのお詫びにもらうことになったんだよ」

俺はそのときのことを思い出す。

この世界にやってきたばかりで何もわからなかったときだ。

ぐうの音も出ないぐらいぼこぼこにされた。


「六人?」

その一言にオズマもクラスタも表情を変える。


「…ゲヘル爺さん、ネイア姐さん、ゲヘルのおやじ、ラーベさん、ゼロスにクベルツンか」

ここで二人の動きが止まった。

二人とも険しい表情である。


「…一人ではなく?六人と?」

オズマもクラスタも目を白黒させている。


「ユウ殿、幾つか質問よろしいですか?」

そこからはオズマの事情聴取が始まった。


「ネイア様は一体どんな攻撃をユウ殿にされたのですか?」


「クラスタがこの間オズマにした攻撃と似た奴。

ネイアさんのアレ、クラスタのとは全然違うのな。

弾数には終わりがないし、地面えぐられるし、魔力で防御していても痛かったよ」


「…痛かった?おいおい…あれ食らってそれで済むのか…」

クラスタは口に入れていたつまみがこぼれる。


「…ラーベ様は一体何を?」


「ああ、自身の体を黒い霧に変えて俺を包むやつ。そのあと体中に激痛が走ったね。

黒い霧を刃物に変えたんじゃないかって思うんだけど」

オズマが頭を抱える。


「…一応聞いておきますが…ヴィズン様はどんな武器で攻撃してきましたか?」

あの形状変化した武器のことか。


「槌だな。ラーベの霧が晴れるとなんか振りかぶっててさ、手に魔力を込めて受け止めたんだが

マジで腕の骨が折れるかと思ったよ」

今度は二人は難しい顔になった。


「…まじかよ…。あのヴィズンのおやじのあれを…受け止めたのか」


「ヴィズン様が槌の形状で放つ攻撃は一つだけ…だが…まさか…そんな…」

魔族二人組は何やら呟いている。

俺は二人の顔芸が面白いなと思いつつ酒を口に入れる。


「他に受けた攻撃とかは…」

真剣な眼差しでオズマ。


「後は…クベルツンにはあの口のようなもので喰われそうになったな」

俺はつまみを頬張る。


「へえ。あの影野郎はそんな攻撃するのか…」


「他には?」

オズマは身を乗り出して聞いてくる。


「そうだな…ゼロスには拘束されていきなりゲヘルの魔法でずどんと。

目の前いきなり真っ白になって記憶が飛んだよ」


「…ゲヘル様から受けた魔法で何か覚えていることがあったら教えていただけますか?」


「ああ、メギドなんちゃらっていってた。目の前真っ白になったし、気が付けば倒されてたし。

今まで喰らった攻撃の中で一番やばかったよ」

俺が葡萄酒をあおりながら懐かしげに語っている横で二人とも青ざめ固まっている。


「大将、俺一生あんたについてくわ」

熱のこもった目を俺に向け、俺の両手を握りしめクラスタ君。


「へ?」


「主様、無礼を承知で言わせていただきます」


「うん?」


「…なんで生きているんですか?」

オズマさんに今までで一番傷つくこと言われました。

何気にユウ殿から主様に呼び方が変わっている。

飲みの場所だし特に気に留めず、俺は葡萄酒のおかわりを頼んだ。


そうしてカーラーンでの夜は更けていくのだった。

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