表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の放浪記   作者: owl
51/121

その女性と出会いました

総会をしている会場内ではスタンピードがでたという情報が飛び交っている。

会場全体が動揺し、中断している。

それでも体面だけでも会議を続けているのは、

ここに皆が残っているのは総会という一年に一度の大事な会議を、

不確かな情報で中断するわけにはいかないという考えるによるものだ。


加えて東の城門にある魔の森はここのギルドや騎士団によって定期的に間引かれている。

魔の森は主要街道の近くであるために人目につくのだ。

領主の体面や責任問題に直結する問題でもある。

そのために数百年の間この地はスタンピードを経験していない。

そのことが中断と言う判断を遅らせることになった。


そんな中、オズマは困惑していた。

もし本当にスタンピードだったとすれば、城門を破られたら魔物が波となって侵入してくる。

いかに騎士団をもつリーブラだとしても魔物に蹂躙されるだろう。

そうなればこの都市を守るためにオズマ自身が全力で対処してどうにかなるかどうかの案件になる。

本来ならば自身が動いて情報を集めるところだが、ここを放置して動くにはいかない。

スタンピードの話はあれど、未だ総会は継続中で、一時的とはいえ雇われているためだ。

一時的に雇われただけの自分がここでの判断に口出ししていいのか?

幾度かスタンピードを経験したことのあるオズマは判断しかねていた。


そんな中、ふと慣れ親しんだ匂いが鼻孔に広がり、オズマは一人窓際に移動する。


「オズマ、総会の方は問題ないか?」

木の上からユウはオズマに話しかけている。

オズマは振り向くことなくそれに応じる。

「はい」


「東の城門にエリスと向かったんだが、魔物の群れがやってきている」


「では…」

オズマに緊張が走る。


「だがエリスが言うには今回のはスタンピードの規模ではないだそうだ」


「それは良かった」

オズマは胸をなでおろす。エリスはスタンピード経験者である。

その彼女が違うというのならばそれは確実だろう。


「その魔物の群れはエリスにまかせてきた。

ゲヘルからもらった魔剣を存分に試してみたいと意気込んでいたよ」


「なるほど…」

オズマはその光景が瞼に浮かび口元を緩める。

エリスとは何度か手合せしてその実力を知っている。

勇者の称号を冠していた腕は伊達ではない。

さらに魔剣『レヴィア』を手にした彼女ならば、

魔物の群れが相手だろうと問題はなく対処できるだろう。


「ユウ殿は?」


「俺はちょっと気になることがある。こっちは別で動くよ」

余計な心配をかけるわけにはいかないし、それもあくまでユウ自身の予感に近い。


「御武運を」

完全に俺を信頼しきった声でオズマ。


「…最後に一つ、人為的に魔物の群れを作り出すことは可能か?」


「…そういったことは聞いたことがありませんが…」


「わかった。引き続きがんばってくれ」

そう言い残し、頭上からユウの気配は消え去った。

オズマは最悪の可能性が消えたことで平時の思考を取り戻していた。

そのまま真っ直ぐに議場に向かう。

「失礼」

議場の中央でオズマが止まる。

黒く大きな偉丈夫の登場により会場は一時中断する。


「私は元七星騎士団で『黒獅子』と呼ばれていた者だ」

オズマの自己紹介に会場中がざわめく。

それもそのはず、七星騎士団の『黒獅子』と言えば当代最強と言われる戦士である。


「信頼できる筋からの情報によれば、今回のものはスタンピードではない。ただの魔物の群れだ」

オズマの告白に会場が驚愕に包まれる。


「現在、私の信頼できる仲間がその魔物の群れと交戦している。

間もなく魔物の群れは鎮圧されるだろう」

その一言に会場全体が安堵する。

オズマが立場を晒したことで信用を得たのだ。


「ただ万が一にでももしこの会議を妨げるものがいるとするのならば…」

オズマは手にした黒槍の鍔を地面に叩きつける。

会場中に響き渡り、それは見る者によっては地震を引き起こしたようにも感じられた。


「いかなるものであろうとこの私が全力を持って排除することを約束しよう」

オズマの迫力が安心感を与えたのか、その後は動揺も収まった。


その少し後、魔物の群れはスタンピードではなかったことと、

一人の銀色の女性に鎮圧されたという報告がもたらされることになる。



俺はリーブラの大通りを歩いていた。

スタンピード騒動のために夜だというのに騒がしかった。


取引の場所では目立った動きはなかった。

東の城門の方に意識を向ける。あっちはあっちでそれほど騒ぎにはなていない。

エリスがうまくやっているのだろう。


ではこれを仕掛けた者がいるとして、今その者は何をしている?

そもそも目的は何か?

何か大事な部分を見落としている気がする。

俺の考え過ぎか…?


「こんにちは」

考えながら道を歩いていると一人の女性から声がかけられる。

その女性は通りの端に座っていて誰も気に留めない。


「そこの人、お困りのようね」

通りの雑踏の中でその声は妙にはっきりと聞こえた。


「ここであったのもなにかのの縁。ひとつ占ってみませんか?」

俺は吸い寄せられるようにその女性の元に歩み寄る。

白いフードをつけ表情は見えない。


「…わかった。お願いするよ」

手掛かりのない今の状況ではわらにもすがる思いだった。

女性が手をかざすと水晶が鈍い光を放つ。

俺はその水晶を覗き込む。


「何か見えるのか?」


「…ここから真っ直ぐ進んだところにいる人があなたの欲しがっている答えを持っています」

女性は道の先を指し示した。


「大事なもの?」


「またね。ユウ」

数歩進んでその女性に違和感を覚える。

…待て…俺、名前言ってなかったよな。

その声に妙な既視感を感じ振り返る。


その女性の姿は消えていた。

まるで白昼夢でも見た気分だ。


とにかく今は手がかりがない。その女性の言葉をたよりに大通りを進む。


その男は俺を見ると目を見開く。

見知った顔がそこにはあった。

旅人の風体をしていて

俺が足を止めるとその者も俺の存在に気付いた様子である。

「君か。もうカーラーンについている頃だと思っていたよ」


「ダーシュ?リバルフィードにいるんじゃなかったのか?」

その男はダーシュと言うリバルフィードで出会った男だ。

細目で中肉中背の体躯で『王の目』という役職に就き、

サルア王国の裏事情に精通している男。


「リバルフィードでの処理は後任に丸投げしてきた。

ちょっと王都で気になることがあってね。そうしてきてみればスタンピード騒動だ。

本当に呪われてるんじゃないかって思うよ」

ダーシュの目の下にはうっすらと隈があった。

かなり疲れが溜まっているのが見て取れた。


「どうやらお困りのようだね。僕で良ければ相談に乗るよ」


俺とダーシュは人通りのある路地から人目のつかない路地裏に移動する。

そこで俺はリーブラに着いてからのことをダーシュに話した。


「マルペット商会に警護を依頼されたと。今あの男はそれで出払っているわけだね」

ちなみにダーシュがここでいうあの男と言うのはオズマのことだ。

ダーシュとオズマの仲は犬猿の仲と言ってもいいぐらいである。


「やれやれ君を見てこの件に何か関わっているんじゃないかと思えばまさに当事者じゃないか」

ダーシュはふっきれたようにけたけたと笑う。


「…それでキミはどうしてここにいるんだい?」

ダーシュの言葉に俺の思考が止まる。

通りの喧噪がここまで聞こえてくる。


「どういう意味だ?」

ダーシュの言っている意味が解らず俺は聞き返す。


「キミはセリア君の価値をまだ理解してい無いようだ。

貴族連中が先祖返りを求めているのは知っているね。

この王都カーラーンに近いこの場所で彼女の存在は金塊よりも価値は高い。

ましてセリア君はエルフに酷似した容姿をしているともなれば…」


ダーシュが言い終わる前に俺はその場から離れた。


「…おやおや。行ってしまったか。ほんと、せっかちだね」

そうぼやくと残されたダーシュは元来た道を戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ