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異世界の放浪記   作者: owl
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勇者が仲間になりました

俺はラクタの通りのベンチで座りながらセリアと日向ぼっこしていた。

カルナの崩御から三日、俺たちはラクタの街に滞在していた。


オズマはギルドで放火犯を捕まえたことを認められ、

報奨金が出たそうなので取りに行ってもらってる。

「この串肉の味付けが…隠し味に何使ってるんだろ」

肉串を片手にセリア。

隠し味を究明しようとがんばっている。

さすが料理長。


「あの店主に教えてもらえなかったのか?」

セリアはそれを聞き出すために何度も店に通っている。

昔いた世界でいうところの焼き鳥に近い味である。

この世界、調味料等全く異なるので俺は口出しできない。


「何度も聞きに言ってるんだけど、口が堅いのよ」

ラクタでも指折りの名店だという。

遠方からはるばるその味を求めて訪れる人もいるのだとか。

俺もオズマも何度も食べている。

まさに絶品と言っても過言ではない。

どうも特殊なたれを使っているらしく、セリアは先日からその解明を試みていた。


「…もうちょっとでわかりそうなんだけどな。なんだろう…」

眉間にしわを寄せながらセリア。


「がんばれセリア」

俺は全力で応援中である。

あの味を再現できるのなら幾らでも投資しよう。


俺たちの目の前では火事の撤去作業が行われている。

例の火事で焼失した宿の人のところにはこっそりと見舞金として多額の金を置いておいた。

もちろんバルマ・ボールダーから奪い取った金である。



ゲヘルの話によると聖王カルナの力は相当に衰えていたそうだ。

ここ十数年は持ち前の『予知』という能力もほとんど使えなかったらしい。

そのために聖王国内に腐敗がはびこってしまったのだという。


それは他国からも国境を責められる一因になる。

エリスの村が襲われたことも彼女とは無関係ではなかったのだろう。


俺はもう一つのカルナの残した言葉について考えていた。

協力者という存在。

彼女は見せてくれたと言った。

ならばその者は同じ『予知』という能力を持っているか、

もしくは他者の能力を扱えるということになる。

どちらにしてもかなりチートだ。


ゲヘルに聞いてみたが

「いずれわしらも知ることになるじゃろうな」

と煮え切れない返事が返ってきた。

この件は胸の内にしまっておくことにしよう。


「そう言えばその剣の名をまだ決めておらなんだ」

そういえばヴィズンに名前を付けるように言われていたことを思い出す。


「そうだな…

聖都の結界を切ったのが初めてだったな。

空には月が出てたっけ。

脳裏に月に照らされた大地がよみがえる。


「『天月』(あまつき)ってのはどうだろう?」


「アマツキ…」


「昔いた世界で天にある月って意味。初めて使ってやったときに月がでてたからな」


「いい名じゃな」

噛みしめるようにゲヘル。

こうしてヴィズンからもらった剣の名前が決定したのだ。



「エリス」

セリアがエリスを見つけ走っていく。

ゲヘルの


「全部片付いたようだな」

エリスはカルナの崩御の後、少しごたごたしていた。

公式にすべて行っていれば一カ月以上かかる上

貴族連中から目の敵にされるだろう。

そのためにゲヘルがエリスに少しだけ知恵を貸したらしい。

戻ってきた彼女の腰には『聖剣ゼフィール』が無かった。


「『聖剣ゼフィール』はデリス聖王国に置いてきた。もう私は勇者ではないよ」

勇者でなくなった彼女はどこか吹っ切れたような表情をしていた。


「カルナ様は私に好きに生きるようおっしゃられた。

だが私は勇者以外の生き方を知らない。だから私はまず世界を知る必要がある」

堂々とした物言いである。


「そのためにというか…何と言うか…あなた…いやあなたたちといたいというか…」

もじもじしながらエリスさん。

自分の気持ちを伝えるのが苦手らしい。

やっぱりこの人、どこかぽんこつだ。

俺とセリアは顔を合わせて苦笑する。


「わ、私を仲間に加えてはもらえないだろうか?」

答えなどもう決まっている。

「喜んで」

俺たちはエリスに手を差し出す。

エリスは花のような満面の笑みでその手を握り返してきた。


こうして俺たちの仲間にエリスが加わることになった。



リバルフィードの街の屋根の上で一人の女性が街を見下ろしていた。

身に着けた白いローブが風にたなびく。

白のフードで顔は全く見えない。


「カルナは私に道筋を見せてくれた。私は違えない…必ず…」

北からの風が吹き抜けると彼女もまたその場から消えていた。


その時は俺はまだ知ることはなかったのだ。

彼女こそがカルナの共犯者であり、完全なるイレギュラー。


そして、俺は彼女と次の衛星都市リーブラで運命の出会いを果たす。

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