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異世界の放浪記   作者: owl
27/121

嫌がらせです

バルマ・ボールダーは自室で過ごしていた。

葡萄酒を一気に飲み干す

それでも気分は晴れない。


あの男とんだ食わせ物だった。


泊まっている宿屋も移動していた。

キラーエイプの討伐も最低でも五日かかると試算していたが二日で終わらせた。

移動を除けば実質一日だ。

その上今年は例年の倍以上の魔石を取得したという。

投石を使って仕留めていたと言うがそんな話聞いたこともない。

さらに中にはジャイアントコングという討伐ランクBクラスの魔物も含まれているらしい。


それだけならばいい。魔石の量から考えれば今回の討伐は黒字になる。

問題はそこではない。

こちらの飼っていたガルダ盗賊団をすべて捕まえられてしまったことだ。

これではギルドを私兵で満たし、乗っ取る計画も頓挫してしまう。

すぐにギルドに手を回したが中央からの兵がやってきて王都に護送していった。


…にしてもあまりにも動きが早すぎる。

中央の差し金…?まさか。中央では後継者問題で、今地方に手を割く余裕はないはずだ。


領主として統治を認められているが、一定以上の裁判権は王都の裁判所にある。

盗賊等は国境をまたいで行動することが多いのがその理由だ。

私兵の一部も使っていたためにこちらの関与がばれる怖れもある。


完全な誤算だ…。万全を期して数名私兵を混ぜたのが失敗だった。

中央の貴族に手を回してもみ消してもらうには手ぶらではだめだ。

連中を動かすには金だけでは高くつき過ぎる。


…そうだ先祖返りがいる。


明日の朝私兵を使いセリアとかいう先祖返りを手に入れる。

幾人もの先祖返りを見てきたがあれほど完璧なものは初めて見る。

今までは体の一部が変化したものばかりだったが、それでもかなりの額がついた。

あの娘はきっととてつもない額になるだろう。

ひょっとすればあの大臣と直接話をつけられるかもしれない


幸い盗賊の捕縛等でこの街は封鎖されている。

先祖返りはまだリバルフィードから出ていない。

手に入れれば交渉材料としてこれ以上ない代物だろう。

オズマとかいう男もいるみたいだが、こちらは百名以上の私兵を有している。

数にものを言わせてこの街の宿と言う宿を検めさせてもらう。


バルマ・ボールダーは次の行動を考えていた。

だがそんな彼の思考は荒いノックの音により中断させられる。

「入れ」

許可すると扉から私兵が入ってくる。

「ボールダー様大変です」

バルマ・ボールダーは不快な表情を隠すことなくその私兵に接する。

私兵がありえないほどに動揺していることに多少の違和感を覚えながら。

「どうした?」

「それが…外が…街が…」

要領の得ない問いに苛立ち、立ち上がりバルマ・ボールダーはテラスに向けて足を進める。


まさか、兵に包囲されている?もしそうならば隣の街から知らせが届くはず。

だがこの兵士の混乱ぶりはどうだ?


ありとあらゆる状況を考えながらテラスに出ると、予想もしない光景が目の前に飛び込んできた。


屋敷の周囲はうっそうとした木々に囲まれている。

見慣れた街の風景はかけらもない。

眼下では私兵が猿の魔物と戦っている。

キラーエイプだと?

キラーエイプは魔の森にしかいないはず…一体どうなっている。

何が起きたのか理解が追いつかない。

バルマ・ボールダーが現状を正確に把握するためにはもう二時間ほど時間が必要だった。



「ユウ殿、アレでよろしかったので?」

巨大な狼となったオズマが語りかけてくる。

「いいよ。次来たら容赦はなしだ」

「御意」

どう考えても戻るまでに徒歩で二日以上かかる。

明日には俺たちはリバルフィードをを立ち去ってるだろうし。

それでまだ執着されるのなら、次は容赦なくやってもいいだろう。


「それよりもこれをどうするか…だな…」

オズマが足を止めた先には金銀財宝が山のように積まれていた。


ゲヘルからもらった指輪。

このマジックアイテムの権能として住宅をそのまま指輪の中に入れました。

街まで入るほどの容量を持っているならば領主の屋敷ぐらい簡単に入るだろうと思ったわけで。

領主の屋敷を一つのアイテムと考えたわけだ。


結果はこの通り。金をすべてここで抜きとり、例の森に屋敷ごと元馬鹿領主を放置してきました。

魔の森の最奥にぽんと。

私兵もいるから死にはしないだろうが。


こんな馬鹿げた現象が個人の力で引き起こされるとは夢にも思わないだろう。


目の前にあるのはこっちがどん引くほどの金銀財宝。

指輪を使って文字通りあの元馬鹿領主の手持ちの財産をこの場所ですべて抜き取ったのだ。

金庫の中だろうが、隔離された地下室だろうが関係ない。

指輪の中ならばそれは自在に出し入れできる対象である。


俺の命じたのは二時間以内に入れたモノから金目のモノをすべて出せだ。

目の前の宝はあの領主の文字通り全財産である。


馬鹿げたほどの指輪だと思う。

限界が来れば指輪が赤くなるらしいが、あの邸宅をすべて入れても宝石の青色は濁りもしなかった。

真っ青な輝きを保ったままだったのだ。

それも小さな村すらすっぽり入るぐらいの豪邸である。

この指輪、まだまだ出し入れ可能ということになる。

とんでもないマジックアイテムだ。


で、これどうするべきか。目の前の金銀財宝に向き合う。

個人に預けるにしても手に余る。

ここの行政府に預けるにしてもこの金額は大きすぎる。

下手に使えば出所を疑われかねない。


…うん、見なかったことにしよう。


俺はそれを黙って指輪の中に戻した。

領主というぐらいだから結構持ってるとは思っていた。

まさかこんなに持ってるとは思わんかったが。


元々は領民からすべて巻き上げたものである。

託せる人間に会うまで預かっておくことにしよう。


「さあ、帰るか」

巨大な狼となったオズマが頭を下げる。

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