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異世界の放浪記   作者: owl
17/121

旅の途中です

ドルトバの街から三つ目の街。

現在俺たちはリバルフィードという街のギルドにいた。

魔石の換金である。


魔石六つでカルネ金貨二十枚ぐらいになった。

まだ手元に魔石は残っている。

カルネ金貨一枚は日本円にしておよそ二万円だから四十万円ぐらいだ。

(物価はそれぞれ違うがであくまで目安)

これだけあれば旅には当分困らない。

だが俺はちょっとした理由からちょいと稼ぎたいと考えていた。


俺たちは帰り際に依頼板の前に足を止める。

手持ちは不足してないが、もしかしたらいい仕事があるかもしれない。

この世界に来てからセリアから文字の読み書きは一通り教えもらっている。

勉強のかいがあってギルドの依頼ぐらいは読めるようになっていた。

(書類の形式が決まっているので楽である)

できれば魔物討伐みたいに時間をかけずにスパッと終わるものがいい。

小口の依頼は多く、大口の依頼は一件だけ。

小口は薬草の採取だったり、魔物の牙とかの奪取だったりは時間がかかる上に日数がかかるものが多い。

そのため今回は対象外だ。


では大口の依頼に目を向ける。

「キラーエイプ討伐?」

ちなみに討伐ランクはB-。以前倒したレッドベアと同じぐらいの難易度である。

ギルド挙げて討伐するとなっており、討伐の参加の日付は明後日となっている。

期間は二三日とされていて討伐報酬はカルネ金貨十枚。

いわゆるゲームのレイドみたいなものかな?


条件としてDクラス以上と書かれている。

一応手持ちのギルドカードではDクラスとなっている。

発行時に行ったレッドベアの討伐が考慮されたのかもしれない。

バタバタしていて確認する暇はなかったが。


参加はできそうだが日数がかかる。

それに一週間もこの街にとどまるつもりはない。

素直にあきらめるとしよう。

他に目新しいものもないし、この街は明日にでも出ていくことにする。


目的地は王都カーラーンなわけだし。

その前にやっておくことがある。

それはもちろん観光である。

ただ通り過ぎるだけではもったいなさすぎる。

そこにある名産品とか食べておかなくては。

俺は相方の方に目を向ける。

「セリア…」

少し目を離すとセリアには男どもが群がっていた。


ドルトバの街を出てからしばらくたつが、こういう馬鹿が多くなってきた気がする。

そもそもセリアの外見が人目を惹きすぎるのだ。

目の覚めるような金髪、森の緑をそのまま瞳にしたような碧眼、整った顔立ち。

それもそのはず彼女はエルフに似た特徴を持っている。

俗に先祖返りとも言われている。

辺境ではごくまれに生まれるという。


「はいはい。ごめんね」

俺は人ごみを押しのける。

「なんだよあんた」

「こいつの保護者」

不機嫌そうな顔を見せると群がっていた男たちは周囲に散っていった。


「まったく、この世界はロリコンばかりな」

俺は小声で愚痴る。セリアは十代半ば。

自分の年齢の半分ちょいである。

こんなガキをナンパするなどロリコン以外にあろうか。

「…キミ、後で承知しないから」

口元は笑っているが眼は笑っていない。

しまった、こいつ異様に耳がいいんだった。


複数の視線とは別に妙な視線を感じた。

値踏みされているようなからみつく嫌な感じのやつである。

この世界に来て魔族になってからというもの、視線を以前より強く感じるようになった。


「出るか」

「うん」

俺たちはギルドを後にする。

値踏みされているような視線は無くなったが背後から数人の男がついて来る。

丸わかりである。

馬鹿なのか、それとも隠す必要がないのか。

宿までついてこられるのも困るし、とにかく撒くか。


俺はセリアの手を引きそのまま路地裏に駆け込んだ。

「舌かむなよ」

セリアを抱き上げると俺はそのまま跳躍した。

「見失った」

「くそ、探せ」

見失った男たちは大慌てで俺たちの行方を探している。

屋根の上から俺はセリアを抱いて連中を見下ろしていた。

「柄の悪いの多くなったなー」

魔力の操作は前よりもスムーズに出来るようになっている。

屋根の上に飛ぶなど今なら朝飯前なのだ。


俺は人間相手に戦ったことはない。

もし戦いになったら一瞬でミンチにすることも可能だろう。

というか確実にミンチになるだろう。

俺はスプラッターは好きではないし、たかがナンパでそれでは相手があまりに哀れだ。

犯罪者にならないためにも逃げるが勝ちである。


ふと無言のセリアが気になった。

こんな強引なことすれば真っ先に怒鳴り散らしてくるはずだが

怖ろしいほど静かである。

「セリア、舌噛んでないか?」

俺は抱えているセリアを見た。

セリアの顔は真っ赤だった。

「だ、大丈夫か」

「本当か?」

「本当だってば」


不意に俺たちの間に風が吹き抜ける。

風が来た方を見れば昨日超えてきた山が視界に入る。

「そう言えばあっちがドルトバか?」

二つほど山を超えてきただろうか。

魔物等の襲撃も何度かあったが問題なく倒している。

「うん、あの山の向こうがドルトバの街」

ずいぶんと遠くまで来たもんだ。

俺たちが目指す王都カーラーンはさらに南にある。

冬入りまではまだ二か月ぐらいの時間はある。

もう少しゆっくり行っても悪くないかなと思える。

その油断がここでの滞在を長引かせてしまうとはこの時俺たちは露ほども考えていなかった。

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