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「‥‥‥龍は、先生の?」
フリーズした心臓のまま私はなんとか唇を動かした。
「美樹さんからいつもマコトの話を聞いてた。どんなにマコトが好きかって。」
「先生が?」
「俺は、美樹さんにそんなに愛されてるマコトがどんな奴か知りたくて!お前に会いに行った。それで、美樹さんが愛する真琴が女だって知って、訳が分からなくなって、池袋でお前に声をかけた。」
「ほら!やっぱり先生は私が女だって言ってなかったんだ!やっぱり私と先生は間違いだったんだ!」
「間違いなんかじゃねぇ!美樹さんのすることに間違いなんかねぇ!」
「嘘だ!嘘だ!嘘だ!先生は私を捨てたんだ!面倒臭くなって、先生はっ!こんな私をっ!間違いだからっ!」
興奮して自分でも訳がわからなくなった私の、汚い言葉を吐き出す私の、唇を塞ぐために、龍は私に無理やりキスをした。
「ーーーー!?」
「美樹さんは間違いなんかしねぇ。」
龍はそれだけ言うと、そのまま服を着て、ホテルを出ていった。
龍に置いてきぼりにされるの初めてで。
それよりも私は、唇の感触を感じていた。
私はこれから、何年間もただただ私を生かしてくれた先生の優しい唇の感触を思い出すことはきっともう出来ない。
思い出すのはきっと、驚くくらいに熱いのに、愛情の一切籠っていない龍のキス。




