31 竜の血
時は遡って、使節団が訪れた二日目のお茶の時間も過ぎようかという頃。
随分日が高くなったために、夕方に差し掛かろうかという時間であっても室内は大変明るい。
クライムに渡されたロイド=デーツへの調査報告書を読みながら、エランは機嫌よく椅子を回した。
レースのカーテンの影が揺れる紙面には、黒い文字でなかなかに興味深いことが書かれている。
エランは、ロザリンドに近づく男には身辺調査を行っていた。
その中で、つい一ヶ月程前、デーツ伯爵家の長男、ロイドの調査書の中に、面白い記述を発見したのである。
それは、デーツ伯爵家がここ数年、魔法医や薬草等を集め、熱心になにか医術関連の研究をしているようだ、という内容だ。
デーツ伯爵家は、その血筋に、ウルフベリングの貴族の血が流れている。
彼等が医術に興味を示したのは、かの国の戦争後からだ。
しかしロイドはたしかにあの戦争に従軍したが、兵士としてでは無く文官としてである。
もちろん、伯爵家に戦争での死傷者は居ない。
それらのことから、ある仮説を立てたエランはロイドを田舎に飛ばすことにした。
丁度彼がロザリンドに転がされた後だったのは幸いである。
色ボケした王太子が、恋敵を僻地に飛ばしたと思われれば良い。
そうやって様子を見ていれば、間もなくエランの元へ知らせが入った。
その内容は、ほぼ予想どおりのものだった。
彼等は、ウルフベリングの第一王子であるロランジュの身柄を、国葬で遺体を偽装した上で、ウルベルトの遠征帰りの一団に運ばれた、戦死者の中に紛れさせて亡命させていた。
それまではデーツ伯爵領の城でかくまっていたようだが、領地が王都からほど近いこともあり、今回の使節団来訪を警戒して、彼等はその身柄をロイドの赴任先へ移動させた。
城の奥深くにしまい込まれては手が出せないが、移動中であれば知ってさえいれば確認のしようはいくらでもある。
エランが配備した密偵が彼等の旅程の中でロランジュの姿を確認し、厳重に身元を確認した上で、今日、この報告書が上がってきた。
「なかなか面白い者を持ち込んでくれたものだな。」
ロランジュは、戦時に受けた傷のせいで、いまだに意識が戻らないらしい。
ウルフベリングの第二王子が立太子を遅らせたのは、十中八九、彼の存在のためだろう。
エランは常々、馬鹿な血統主義以外の障害が無いにも関わらず、ウルフベリングの第二王子が立太子しないことは疑問に思っていた。
国の後継者が定まらないことは、国が揺れる要因になる。
にもかかわらず、彼は立太子せず、それによって生じる貴族たちのいざこざを掃除してまわっていたのだ。
しかし隣国としては、そんな不安定な状態でぐらぐらと揺れられては困るのだ。
それに、ウルフベリングからは、まだ先の戦での返礼がされていない。
戦後処理が収まれば、第一王女を長とした使節団がやってくるはずである。
それはロザリンドを口説き落とすのに大変都合が良かった。
第二王子が、妹である第一王女を随分と大事にしているらしいことはゲイルの報告書でわかっていた。
だからこそエランは、年明け前、ウルフベリングへ露払いついでに派遣していたゲイルに指示を投げた。
ネズミをさりげなくつついて、妹姫のまわりを少しばかり騒がせてやれ、という内容だ。
ついでに、その騒ぎの中で、誰が国の柱をかじって揺らすネズミなのかも見極められれば尚良しとする。
ゲイルが調べてよこした勢力図を見れば、誰が怪しいのかはぼんやりとはわかる。
それも一緒に送ってやれば、彼は内政干渉と思われぬよう上手く立ち回った。
どうせ、こちらが手を出さなくてもその内起こっていた事態である。
それを少しばかり早めただけなのだからなんの問題もない。
かくして、第一王女にも危険が及んだことにより、第二王子はようやく重い腰を上げて立太子した。
今思えば、三年待っても意識が戻らない者を、待つのにも限界ということだったのだろう。
ロランジュは、このままでは竜王国にとっては火種になりかねない人物だ。デーツ伯爵家には、なんて物騒なモノを持ち込んだのだという気持ちが無くもない。
しかし、意識を戻してやれば、今回の使節団来訪で、ネズミを罠にかける餌にできる。
ネズミは狡猾だったが、一つ、ミスを犯した。
それは功を焦って春先に、弟の想い人であるアリィシャに手を出したことだ。
ネズミは本来であれば、エランではなくウルベルトに噛みつきたかったはずだ。その横に居たアリィシャは、随分と邪魔だったに違いない。
しかし目の届かない隣国では難しいが、自分のテリトリーの中でのことであれば、ゲイルからあがっていた報告書も合わせれば、その背後を調べることはエランにとっては容易いことだった。
おかげで調子に乗って竜王国の柱をもかじろうとするネズミが誰なのかは、もうエランにはわかっている。
彼を泳がせて見張らせておけば、勝手に罪状を作ってくれるだろう。
しかしそのままでは、ウルフベリングとの溝になりかねない。
使節団の一員が、来訪先の貴人相手に罪を犯すなど、宣戦布告と受け取ってもおかしくない事態である。
このネズミが、どちらの国にとっても敵だということを示す必要がある。
その餌は、第一王女で十分だろうとは思っていた。
しかしロランジュがいるのであれば、もっとネズミを太らせることができるだろう。
きっと彼という名の餌に食いつけば、それまで慎重だったネズミは、それに浮かれて、肥え太った身体で簡単に足を踏み外すに違いない。
そこまで考えて、エランは椅子から立った。
「陛下は今日、どうしている?」
「今の時間であれば、夜会の準備で自室にいらっしゃるかと思います。」
エランの問いに速やかに答えた侍従に頷いて、彼を従え執務室を出て父王の部屋へ向かう。
夏の夕方の、傾いだ日に照らされた文様の入った赤の絨毯が行き着く先、王族の居住空間の最奥に位置する、ひときわ立派な扉の前で足を止める。
左右に並び立つ近衛に目配せすると、彼等はエランが来たことを部屋の主に伝えた。
程なくして、扉が開き広い室内にエランは足を踏み入れる。
父は、夜会用の服を着て寝室横の応接室のソファに座っていた。
「どうした、先触れも出さずに来るなど。お前、夜会の準備はもういいのか?」
「ええ、少し急用がありまして。それはこの後にいたします。人払いをしていただけますか?」
訝しげに言う父にエランが柔和な笑顔で頷くと、彼はため息をついて人を下がらせ、向かいのソファをエランに勧めた。
「手短にしろよ。オードリーを待たせるとやっかいだからな。」
どうやら父は、そろそろ母を迎えに行こうと思っていたようだ。
どうせいつも彼女の準備は夜会の直前までかかって、迎えにいっても、待たすどころか待たされるばかりだというのに、随分と気が早いことである。
この父は、何かと理由をつけては母の近くに居たがるのだ。
しかしそんなことを指摘しても話がそれるだけだ。エランはにっこり微笑んで、話を切り出した。
「これなんですが。」
そう言って、手にしていたロイドに関する報告書を渡す。
国王はそれを受け取って、書面に金色の目を走らせると、片眉を上げた。
「穏やかでは無いな。」
「ええ。それで、父上にお願いがあるのですが、竜の血と、転移陣を使用する許可を頂けませんか。」
エランの言葉に、国王は渋い顔をする。
しかし手にした報告書と、エランの顔をしばらく見比べた後、深い溜息をついてそれを了承した。
「今から転移陣の使用許可証を出すなど、面倒なことをいいおって。私がオードリーに怒られたらお前のせいだぞ。」
「大丈夫ですよ父上。私の予想では母上の準備はまだかかります。」
「早めに行っておくに越したことはないだろう!まあいい。わかっていると想うが竜の血はそれとわからないように使うんだぞ。」
「もちろんです。」
エランが頷いたのを確認して、国王は自ら寝室のほうへ足を運ぶと、紙とペンと、小瓶に赤色のナイフを持ってきた。
それを机の上に置くと、赤色のナイフと小瓶をエランの前に差し出す。
「もちろんお前がやれよ!私は痛いのはごめんだ。」
「ええ、心得ていますよ。」
普段威厳に満ちた顔ですましている父が、つまむようにしてよこしたナイフをエランは苦笑しながら受け取ると、その刃をすっと手にあてて、浅く切り傷を作った。
そして傷口から滴った血を、小瓶に落とす。
「おい、見えないところでやれ!見ているだけで痛いぞ!」
「父上、そんな歳してそのようなことをおっしゃってもまったく可愛くありませんよ。」
ひええ、と拳をにぎって胸の前におき、身を引く父に、エランは肩をすくめる。
もう少し自分の歳を考えてほしい。
そんなエランに、国王は非難めいた視線を投げてから、手元の紙にサラサラとペンを走らせた。
その様子を横目にとらえながら、エランは傷つけた掌を見つめる。
ひりつく痛みはあるが、もう血は止まっている。
これなら夜会の時にはもう、この傷は塞がっているだろう。
一応、傷跡が見えないように手袋でもはめておくか。
一般に、竜とはその身に傷を受けても、非常に回復速度が早い。
竜王国の王族も、その血のおかげなのか受けた外傷を治癒する能力に優れている。
これはその血を受け継いだ者であれば王族ほどではないが、発現することが多い能力で、体が丈夫で、身体能力も高いために騎士団には王族の血が混じっている者がよくいる。
竜王国の騎士団がその強さを誇る理由でもある。
正直王族とは言え外からの血を取り入れているのだから、何故特に高い能力を発揮するのかについては疑問なところだ。それは髪や目の色にも言えることである。
始まりの竜は、未だ彼女の騎士の墓を抱えて、王家を見守っているという伝説があるし、もしかしたら、血だけが関係しているのでは無いのかもしれない。
エランの能力は王族としては普通だが、ウルベルトは特にその力が強く、たぶん、剣で切られても次の日にはその傷がふさがっているだろう。
一応王族の機密であるためおおっぴらに宣伝して回ることは無いが、アリィシャにウルベルトが矢を受けても死なないと言ったのは嘘では無い。
本当は、この面白い体質を利用して、これからネズミがかじりつこうとするだろうロザリンドを自らの身で守りたい。
そのほうがずっと簡単だし、罪状を水増しできる上に、彼女へ自分の気持ちが表せるだろう。だから最初は、そのつもりだったのだ。
しかし、それはもうできない。
ネズミの子が踏み抜いた瓦からロザリンドを守った時、次からは自分の身を危険に晒して彼女を心配させないと、約束したからだ。
彼女が望むのであれば、少々骨は折れるかもしれないが、すべての危険は彼女の前で牙をむくまえに、その牙を抜いてしまおう。
あの日、震える手を握り込みながら、鋭く自分を見上げたアメジスト色の瞳の輝きを思い出し、エランは口元を緩める。
ロザリンドは、すでに一度、エランの身体を心配して怒ってくれたのである。それで彼には十分だった。
「ほら、これでいいだろう。ウルベルトにもサインを貰えよ。」
「わかっています。」
少しして、顔を上げた国王が出来上がった書類をエランに手渡した。
それを受け取り確認してから、一つうなずいてエランは席を立つ。
「それでは、お忙しいところ失礼しました。母上によろしくお伝えください。」
「どうせすぐに後で会うだろう。」
「たしかに。そうですね。」
さっさといけと手を上下にひらひらとふって示す国王に一礼して、部屋を出る。
夜会までそんなに時間がない。
父では無いが、今朝贈ったドレスを着たロザリンドの姿を早く見たい。
そう考えて、エランは足早に赤い絨毯の上に歩を進めた。
〇・〇・〇・〇・〇
「クライム!」
エルランド王の肖像画の前を横切り、丁度執務室へ戻ろうという時、部屋に呼ぼうと思っていた自らの側近が綺麗な姿勢で歩く影を廊下に見つけて、エランは後ろから声をかけた。
呼びかけてすぐに、スルリとこちらを向いたその顔には、なんだか嫌な予感がする、と正直に書かれている。
「執務室にいらっしゃったのでは無かったのですか。いかがなさいました?」
声音にはその内心をのせず、平坦に問われた言葉にエランはにっこりと微笑んで首肯した。
「ああ。急用だ。少しこっちへ来い。」
あたりを見れば、廊下にも一定間隔で近衛が立っている。
あまり人に聞かれて良い話ではない。
エランはクライムをすぐ横の、朱色に染まる会議室へ入るよう促した。
彼はそちらに目を向けると、特に否は無いのか、ため息をついて素直にそちらに足を踏み入れる。
ついてきていた侍従にドアの前から人払いをするように申し付け、彼も下がらせてドアをしめた。
「今から少し、お遣いにいってくれないか?」
「今からですか?」
人の気配が無いのを確認してから告げられた言葉にクライムは、半分カーテンがかかった窓から外を見る。
もう、日が傾いでおり、朱色の光が城の庭に長く黒い影をいくつも描いている。
今から出れば、彼は今日の夜会は欠席になるだろう。
まあ、それでなくても少し仕事を積んでおいたおかげで、常であればすでに夜会用の服に着替えているはずの彼は今は普段遣いのコートを着ている。
どうせ夜会からは途中参加だったのだろう。申し訳ないがここは仕事を優先してもらうことにする。
「陛下から転移陣の使用許可を頂いた。ちょっとひとっ飛びしてロイドのところへこれを持っていってくれ。」
言いながらエランは、先ほどの小瓶と手紙、そして数枚の書類をクライムに渡した。
小瓶の中の血は、今は赤ワインで薄められ、深い真紅の色をたたえて夕日の朱色の光を反射して揺れている。
「転移陣を使用してですか!?」
告げられた言葉に、クライムが灰色の瞳を瞬かせて素っ頓狂な声をあげた。
転移陣は文字通り、ある場所からある場所へ一瞬で行き来するための術だ。
聞くだけでは大変便利だが、その使用には非常に金がかかる。
また、悪用されかねない技術であるため、国王の許可と近衛騎士団長であるウルベルトが持つ鍵が必要な上、戦時等の緊急事態でしか使用されない。
それを利用して移動しろとは、なかなかに物騒な話に思えたのだろう。
つまり、今回のエランからの任務は王命なのだ。
間違っても『ちょっとひとっ飛び』などと表現されることではない。
「まさか、今進行中の案件で何かあったのですか。」
「あったと言えばあった。しかしまあ、そんな危険なお遣いではない。お前は行って、この手紙をロイドに渡して、彼が頷いたのならそこの誓約書にサインをさせた上でこの瓶を渡せ。まあ…近衛をつけるからちょっと脅しても良い。できるだけ首を縦に振らせろ。」
言われてクライムは渡された書類の中の一枚に目を滑らせる。
灰色の瞳が文字を追い、金の眉毛が寄せられた。
「これは…彼の受け渡しですか…?この瓶は?まさか毒では無いでしょうね?」
「ははは!いや逆だ。何、私も少しばかり腕の良い医者を知っていたのでね。ロイドに協力してやろうと思ったんだよ。もし先方にも同じことを疑われたのならお前が目の前で少し舐めてやってもいい。これから数日、お前も忙しくなるだろうからね!」
この真っ直ぐな側近は、任務であっても人に毒を渡すような真似は好まないのだろう。
あからさまに嫌そうな顔をした彼の顔がおかしくて、思わず笑いながら首をふる。
クライムは、そんなエランをジトっと見つめていたが、自分が主人に毒殺されるようなことは無いと思ったのか、最後には、素直に一つ頷いた。
「わかりました。彼の身柄を確保した後は、いかがなさいますか。」
「それもお前に頼みたいところだけど、仕事が多すぎるね。ゲイルに渡しておいてくれ。話は通しておく。ああそうだ、その瓶の中身はすべて使わせろ。一滴も残さないよう見届けてくれ。」
ゲイルには、この年始にあのネズミをつついた経歴がある。
彼に任せれば、上手く餌をネズミの前にぶら下げてくれるだろう。
「承知いたしました。……帰りも転移陣ですか?」
「まあ、行き先は片道6日かかるからね。お前にはさっさと帰ってきて仕事をしてもらわないと困るよ。怖いのか?」
「いえ…そういうわけではありません。」
転移陣はものすごく低確率ではあるが、事故を起こして目的地とまったく別の場所に出ることがある。
それを危惧しているのかとクライムを見下ろせば、彼はなんだか呆れたような顔をして、ため息をついた。
「悪いな。本当は私が行きたいんだが、ローザを一人で夜会に出すわけにはいかないからね。羨ましいぞ。たぶんすごく面白い見世物が見れる。」
「そうですか。それは楽しみですね…。では、私は参ります。他になにか連絡事項などはございますか?」
「いや、ない。なるべく早めに片付けて戻ってきてくれ。」
「承知いたしました。」
エランが首をふると、クライムは美しい礼をして、キビキビとした動きで部屋を出ていった。
エランも部屋から出て、少し離れて控えていた侍従に、話は終わったことを視線で告げる。
あとは、結果待ちだ。
王族の血には、その持ち主の治癒能力を高める他に、もう一つ効果がある。
竜の鱗で作られた傷から落ちたその血は、口にした者にも、体の中にある間、持ち主と同等の治癒能力を与えるのだ。
別に、死んだものを生き返らせるような効果は無い。
しかしそれでもあまりに危険すぎるその内容は、王族にだけ伝えられる最高機密だ。
なにせ、その血肉が不老不死の薬になると言って全滅の危機に瀕した幻獣は一種類や二種類では無いのである。
今回、ロランジュは病等ではなく戦場で受けた傷が原因で意識が回復しないという。
だとすれば、竜の血で目を覚ます確率は随分高いだろう。
「さて、餌は手に入るかな?」
もしロランジュが目覚めなければ、彼の身柄は厳重に隠蔽した上で隣国との交渉の際の切り札としても良い。しかしその場合には、慎重にやらねば逆に火種になりうるだろう。
意識の無いままの彼をウルフベリングに戻せば、また彼の国が王位継承問題で揺れかねない。
どっちに転んでも利はあるが、やはり利は大きいほうが良い。
それに彼が目覚めたほうが、彼女も喜んでくれるのでは無いか。
大きな獲物を捕まえてみせれば、エランの想い人が、彼の仕事をあの輝く笑顔で称えてくれるかもしれない。
それはきっとどんな外交上の利よりも、エランの胸を踊らせるだろう。
エランは、自室に戻りながら窓の外に目を向けた。
もう日は地平線に落ちようかという頃合いであり、夜会の開場時間まではあと2時間も無いといったところか。
ロザリンドは今日は、彼が贈ったドレスを着てくれるはずである。
なぜならロザリンドの侍女から、彼女が今日着るはずだったドレスを、ネズミがかじったらしいと報告が来ていたからだ。彼女は他に、着るものが無い。
あのドレスを着たロザリンドは、きっと素晴らしく美しいに違いない。
まずは、未来の彼女よりも、現在の彼女に愛を乞わねばなるまい。
エランは自分の色を纏う恋しい人の姿を思い描きながら、足取り軽く、自分も夜会準備のために自室へ足を向けたのだった。




