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23 園遊会

 とうとう当日となった園遊会の昼前。

 ロザリンドは、それまで自分が準備してきた物が形になったその様子に、感激で胸がいっぱいだった。


 昨日は使節団との社交は無かったので、最後の準備に大忙しだった。

 王宮を端から端まで歩き回り、就寝することが出来たのは空が白み始めてからだ。

 今日はアネッサに寝不足のために化粧が大変だと文句を言われたが、そんな苦労も、美しく、思ったとおりに設えられた会場を見れば吹き飛ぶというものである。


 ウルフべリングを表す銀色と、竜王国を表す鮮やかな赤が夏の日差しに輝く会場は、花に溢れている。

 テーブルのクロスは竜王国の赤い織物と、ウルフベリングの銀の織物を交互に重ね、ともすれば派手になりすぎそうなその上に落ち着いた色合いの花が飾られ上品によくまとめられている。

 夏の日差しをさけるために、頭上にはレースのリボンが下がりその上をさらに花が飾って夏の日差しに柔らかい色を返していた。


「素晴らしいわロザリンド。よく頑張ったわね。」

「王妃様…。」


 この一ヶ月、至らない自分のために様々にアドバイスをしてくれた、ブロンドの貴婦人を見上げる。

 彼女はロザリンド以上に忙しかったに違いないのに、今日もその装いに一分の隙も無く完璧だ。

 その眩しさに、憧れにも似た思いで目をすがめたロザリンドへ、王妃はにっこりと優しく微笑みかけた。


「ふふふ、お疲れ様。ここから先は、ぜひ楽しんで。ついでにわたくしの仕事も見ていただけたら嬉しいわ。」

「はい!」


 喜色をその返事にのせて返事をしたロザリンドに、王妃は優雅に頷いて、会場を見渡す。

 すでに楽団も入り、料理も運び込まれた会場は、あとは開場を待つばかりである。


「ところでエランはどうしたの?パートナーをほうっておくなんて困った子ね。」


「エラン様は、さきほどグレイン子爵に呼ばれて少し席を外していらっしゃいますわ。すぐお戻りになると思いますけれど…。」


「あら、そう。」


 美しい眉を寄せて不満げに言う王妃にロザリンドがエランが去っていたほうを指し示せば、彼女は少しなにかを考えるそぶりをした後頷いた。


「ロザリンド、あなたは会場のセッティングの仕事をしっかりとこなしたのだから、ここから先はわたくしの管轄よ。だから…そうね、もし何か起こっても気になさらずに思うように動いてちょうだい。」

「…はい、わかりましたわ。」


 何か含みのある王妃の言葉に、ロザリンドは首をかしげる。

 そんなロザリンドに、王妃はにこっと笑った後にウィンクを投げて、国王の横へ歩いていった。


「ローザ!今日の会場、とても素敵ね!さすがだわ!」


 王妃を見送っていたロザリンドの後ろから、聞き慣れた親友の声がかかった。

 振り向けば、今日は涼しげなふんわりとした布地のドレスを着たアリィシャが、こちらに足早に歩いてくる。

 花があふれる庭の中にいると、彼女は本当に妖精のようだ。

 その後ろをアリィシャを見守るように歩いてくるウルベルトも同じ考えのようで、いつもはキツめなその瞳が、今日は優しく緩んでいる。


「ありがとうアリィシャ。今、王妃様にもお言葉を頂いたところでしたの。任されたお役目を全うできるということはとても嬉しいものですわね。」


「ええ、こんな素晴らしい会場ですもの。今日は皆あなたの働きに心をはずませるに違いないわ。」


「そうだな。私もそう思う。素晴らしい出来だな。さすがロザリンド嬢だ。」


 にっこりと笑って、歩み寄ってきた親友の手をとりお礼を言うと、アリィシャとウルベルトが口々に称賛の言葉を贈ってくれた。

 自分の仕事に贈られるその言葉はくすぐったくもあったが、それ以上に認められることの幸福感がロザリンドの心を満たした。

 ロザリンドは、今まで本人が望む望まないに関わらず王太子妃の筆頭候補であったので、小さい頃からそのための能力や知識を特に彼女の祖母から叩き込まれてきた。

 そのことに関して煩わしく思ったことは無く、たとえ違う道を選んだとしてもかならず身につけた力は自分のためになるだろうと思っていたが、やはり、今まで蓄えた力を発揮できる大きな場所が与えられるというのは嬉しいものだ。


「ここまで出来たのは、ご助力くださった王妃様や王宮の皆様のおかげですわ。おかげでとても楽しく仕事ができましたもの。」


「そうか、母があなたに仕事を頼んだと聞いた時は負担になるのではと思ったが、杞憂だったようだな。」


 会場を見渡しながら言うロザリンドの視線を追いながら、ウルベルトはちらりと国王の横にいる王妃へ目を向ける。

 そこには相変わらず仲睦まじそうな国王夫妻が何か歓談していた。


「あら、ウルベルト殿下にご心配いただいていたなんて意外でしたわ。」


「まあ…その、あなたはあまり公務がお好きでは無いのかと思っていたので…」


「ローザは王太子妃の立場を敬遠していたものね。」


 ウルベルトが自分を気にかけていたということを意外に思い、ロザリンドが顔を上げると、彼はアメジストの瞳から逃げるように視線をそらした。

 そんな彼の濁された言葉の裏を、さらっとアリィシャが頷きながらすくい上げた。

 なるほど、つまり彼はロザリンドが仕事の忙しさに、ますます王太子妃の座を敬遠するのではと心配していたのだろう。

 一応、アリィシャとウルベルトの婚約は一年後には決まってはいるが、彼にしてみればその時期は早ければ早いに越したことは無いはずだ。

 二人の婚約時期を早めるにはエランに婚約者が出来る必要がある。

 そんな魂胆もあり、兄の恋の応援をしているというわけか。


「まあ…それは…そうですわね…。」


 たぶん今日も、花に囲まれ、まさに妖精、といった様子のアリィシャを婚約者としてでは無く恋人という不確かな状態で他の男の目に触れさせたくないのだろう。

 ウルベルトの手が、しっかりと彼女の腰に回されているのに視線を落としながら、ロザリンドは曖昧な返事をする。

 自分に、王太子妃が務まらないとは思わない。しかしその仕事が楽かといえばそうでは無いだろう。今回任せられた仕事はほんの一部で、本来はもっと忙しい中こなさないといけないことが多いはずなのだ。

 それでも、ロザリンドは一年前よりも、自分がその立場を敬遠していないことには、もう気づいていた。先日のお茶会でもベリンダに指摘されたばかりである。


 しかしたぶん、それはその仕事が、思いの外興味をひいたからだけでは無いように思う。

 そんなことを考えるロザリンドの脳裏に、昨日自分の腰を抱き寄せて、楽しげにダンスを踊って揺れていた赤い髪と、シャンデリアの光を散らした蜂蜜色の瞳が揺れる。

 あれから結局、夜会の最後まで、ロザリンドは彼の横から離してもらえなかった。


「ローザ、大丈夫?顔が赤いわよ?」


 心配そうなアリィシャの言葉に、思考に沈んでいたことに気づいたロザリンドははっと目をあげた。


「も、問題ありませんわ。少し、動き回っていたから暑くかんじておりましたの。じっとしていればじきに冷えますわ。」


「おや、では冷たいものでも持ってきますか?」


「きゃっ」


 あわてて取り繕ったところへ、柔らかい声が頭上から振ってきてロザリンドは小さくはねた。

 恐る恐る見上げれば、そこには先ほどまで思考の渦の中に揺れていた、無駄に美々しい顔がこちらを見下ろしている。

 彼は今日も鮮やかな赤い髪をさら、と肩からすべらせて少し首をかしげてこちらを伺う。


「すみません。いきなり声をかけて驚かせてしまいましたね?」


 一瞬自分の思考が読まれたんじゃないかと錯覚して跳ねた胸に、落ち着くよう内心言い聞かせて、ロザリンドは姿勢を正して淑女の微笑みをその顔に浮かべた。


「いえ…。もうお仕事のお話はよろしいんですの?」


「ええ、最近はクライムが随分頼もしくなりましたので。おかげでつい酷使してしまうのが問題ですね。」


「あら、そういえばわたくし、グレイン子爵を最近社交の場でお見掛けしておりませんわ。」


 ロザリンドは、クライムを初日の晩餐会以降見ていなかった。

 忙しいのかとは思っていたが、やはりエランにいろいろと申し付けられているらしい。

 ご機嫌な様子のエランを見れば、彼には少し気の毒ではあるが、王太子に気に入られているというのは悪いことでは無いだろう。

 思わず園遊会の会場に目を向けて、金髪に長身の王太子の側近が会場に居ないことを確認したロザリンドの横で、エランが何か動く気配がした。


「ローザ、少しこちらを見ていただけますか?」

「なん…」


 頭上から呼ぶ甘い声に、ロザリンドが不思議に思って顔を上げると、エランの手にそっと顎をつかまれる。

 顔に触れられた驚きにロザリンドが思わず口をあけると、その中に、何か甘いものが落とされた。


「!?」


 まさか吐き出すわけにもいかず、ロザリンドはとっさに口を閉じて中に入れられた物の味をたしかめる。

 ブドウくらいの大きさのそれは、チョコレートボンボンだったようだ。

 ほろ苦く甘いチョコレートの味と、ブランデーのとろりとした感触が口の中に広がる。


「今日出るお菓子らしいですよ。チョコレートはお好きですか?」


 もちろんチョコレートは好きだが、くれるにしてもやり方というものがある。

 ロザリンドは物が入っていて言葉を発せられない口の代わりに、アメジスト色の瞳でエランを睨みあげて抗議した。

 そんな彼女の瞳を、いたずらが成功したと言わんばかりのエランの蜂蜜色の瞳が見下ろしてくる。


「ふふふ、申し訳ありませんでした。ほらベルト、これはアリィシャ嬢の分だよ。」


 チョコレートを咀嚼するロザリンドに、口の中に広がる甘さに負けないくらい蕩けた笑みを向けた後、エランはご機嫌な様子で小さな小皿をウルベルトに渡す。

 その上には、ロザリンドの口に入れられたものと同じらしいチョコレートがころりと乗っていた。

 ウルベルトはそれを受け取ると、特に疑問も抱かない風にそれを取り上げてアリィシャの口に放り込もうと彼女を振り返る。

 ロザリンドと同じ運命をたどると察したらしいアリィシャが、そんな彼から体を離して一歩後ろに後ずさった。


「では、もうすぐ開場のようですし、主催席に参りましょうか?」

「……ええ、お願いいたしますわ。」


 ようやく口の中のチョコレートを飲み込んだロザリンドの前に、エランが優雅にその腕を差し出してくる。

 悪びれないその様子に、文句を言うタイミングを逃して、ロザリンドは渋々ともう随分となじんだ彼の腕に、手をのせた。

 彼女の手が自分の腕にのったのを見て、エランは嬉しげに微笑むと、その足を主催席にむける。

 後ろで聞こえる、「自分で食べられます!」というアリィシャの抗議の声を聞きながら、ロザリンドはもう一度会場を見渡す。

 夏の日差しの中で煌めく園遊会の会場は、彼女のアメジスト色の瞳に眩しく映った。


 〇・〇・〇・〇・〇


「エラン様!御機嫌よう。本日のお庭の飾り付けは、とても素敵ですわね。両国の友好を思って、わたくし感慨深いですわ。」


 園遊会が始まってからしばらくして、今日もセドリムにエスコートされたセレスがまっすぐこちらへやってきて、満面の笑顔で挨拶をした。

 彼女は花が好きなようで、会場を褒めるその言葉は、裏を感じさせない。


「王女殿下、お楽しみ頂いているようでなによりです。本日の会場の飾り付けはローザが担当したのですよ。そう言っていただければ私も鼻が高いですね。」

「あ、あらロザリンド様が…。」


 柔和な笑みで答えるエランに、セレスは少し口を引きつらせてロザリンドのほうをちらりと見る。

 それにこちらも懇親の笑顔で返してやれば、少し悔しそうに目を伏せた。


「王女殿下、お食事はお口にあっていらっしゃいますか?本日は我が国の王妃様がウルフベリングと、竜王国のお菓子を用意させましたの。わたくしもウルフベリングのお菓子は初めて頂くものが多いのですけれど、優しい味で大変美味しいですわね。」


「ええ!竜王国のお菓子は華やかで可愛らしいですわね!わたくしもとっても新鮮でしたわ!」


 エランに続いてロザリンドが声をかけると、セレスは顔を輝かせて頷く。

 お菓子を愛する心は、万国共通の乙女心であるらしい。

 そんな彼女の様子に、ロザリンドは扇子を口にあて息をはいた。

 その視線に、うっかり楽しく会話をしてしまったことに気づいたのか、セレスが顔を赤くする。


「あ、えーと、その、ロザリンド様、本日のドレスはこの陽気の中では少し重たいのでは無くて?見ているととても暑そうですわ。」


「あら、お気遣いありがとうございます。大丈夫ですわ。本日は我が国の技術者の方が庭に冷却魔術を敷いておりますの。セレス様こそ、寒くなどはございませんか?」


「まあそうなの!なんだか涼しいと思ったら冷却魔術が敷いてありましたのね。こんな広範囲に術を敷くなんて素晴らしい技術ですわね!」


 セレスの嫌味に切り替えしたロザリンドに、またも彼女は瞳を輝かせた。

 その後ろに、全力で振られるしっぽを幻視してロザリンドは苦笑する。

 その横で、感心したようにセドリムが相槌を打った。


「そうですね、ウルフベリングは竜王国より夏は暑いですから、羨ましい技術です。毎年夏はこのように術を敷かれるのですか?」


「いえ、さすがに我が国でもこれほど大掛かりな術は重要な催しがある時にしか使用しません。通常であればこの時期は、皆涼しい高原などに避暑に参ります。」


「ということは、今回は我らのためにご用意頂いたのですね。その心遣いは大変ありがたいことです。」


 エランが柔和に微笑みながらセドリムに答えれば、彼はなるほど、と頷いた。

 竜王国にとって、ウルフベリングの使節団の来訪が重要な意味を持っているという言葉に、その顔は明るい。

 そこへ、給仕が飲み物をもってやってきた。

 空になっていたロザリンドのグラスに、赤いブドウジュースが注がれる。

 その様子を見ていたセレスが、すん、と鼻を鳴らした。


 パン、パシャン、パリン


 そんな、軽い音に、ロザリンドが目を瞬かせる。

 口に運ぼうと思っていたグラスが手から落ち、ロザリンドのドレスに赤いシミが広がっている。

 そんな様子を、セレスが目を丸くして見つめていた。

 その手は、振り抜いたままの姿勢で固まっている。

 セレスが、ロザリンドの手の中のグラスを払って落としたのである。

 和やかに歓談していたその場が、一瞬シン、と静まり返る。


「これは…申し訳ありませんロザリンド様。王女殿下、一体何をなさるのですか」


 その静寂をやぶったのは、落ち着いた紳士の声だった。

 セレスたちの後ろで歓談していたドミヌク伯爵が眉を寄せてこちらに謝罪してくる。

 その声にはっと我にかえったらしいセレスが、その銀の瞳を宙にさまよわせた。

 ふらふらとその視線は行ったりきたりした果てに、こちらを何か言いたげに見つめてきたが、ロザリンドがその銀色の瞳を見つめ返すと、口を引き結ぶ。

 そして、胸をはり、その銀の髪を手で後ろに払うと、胸をはって冷たい視線をこちらに向ける。


「あら、ごめんなさいませロザリンド様。少し手元が狂ってしまいましたの。わざとじゃありませんでしたのよ?でも丁度よろしかったのでは無いかしら。今日はとても、暑いですものね。」


「王女殿下!」


 避難めいたドミヌク伯爵の言葉にも、ふん、と鼻をならしてセレスは視線をそらす。

 そんな様子にロザリンドはすっと瞳を細めて頷いた。


「まあ、大丈夫ですわドミヌク伯爵様。わたくし、部屋が近くですから、すぐに着替えることができますもの。少し、失礼いたしますわね。」


 にっこりと笑って言えば、ドミヌク伯爵は申し訳なさそうにもう一度謝罪の言葉を口にする。

 それに会釈をして答え、ロザリンドは横にいたエランに瞳を向けた。

 柔和な笑みで事態を見守っていた彼はロザリンドの視線に気づくと、にっこりと優しく笑って、行っておいでと頷いてくれる。

 それを確認し、ロザリンドは後宮の自分の部屋へ、一度引き上げる。

 その後ろに、ベリンダが従った。

 会場を出て、後宮の中までついたところで、後ろでベリンダがため息をつく音がする。

 それに振り向けば、彼女はいかにも残念、といった表情をしていた。


「あの王女殿下は悪役には向きませんね。姫のほうが随分様になると思いますよ。」


 何もきいていないのに、そんな感想を漏らすベリンダに、ロザリンドは胡乱な瞳を向ける。


「前半は同意するけれど、後半は聞き捨てなりませんわね。」


「そうですか?では聞かなかったことにしてください。」


 随分と勝手なことをいう彼女にため息をついて、ロザリンドは自分の部屋の前にたった。

 その扉をベリンダが開ける。

 そしてロザリンドが一歩中に入ろうとしたのを、彼女が制した。


「少々お待ちください、姫。」


 何事かと立ち止まれば、ベリンダがツカツカと寝室の中に入っていく。

 そしてバサリ、と音がしたかと思うと、また彼女が戻ってくる音がした。

 その手には何かを持っている。


「やあ、すみません。ベッドに何か気配を感じたんですが、ただのカエルでした。」

「カエ…」


 ゲコっとベリンダの手の中で、大きなガマガエルが鳴き声をあげる。

 それを、ひょい、と顔の前まで見せつけられ、ロザリンドは一瞬固まった。


「きゃああああああああ!!!!」


 次の瞬間、高らかに響き渡った悲鳴に、後宮の付近を警備していた近衛たちが駆けつけてくる。

 そこには、ぽりぽりと頭をかくベリンダと、ガクガクと震えながら廊下の端で縮こまるロザリンドの姿があった。


「申し訳ない。苦手だったんですね。」

「いいいぃ、いきなりそんなもの目の前に差し出されたら誰でもさ、さ、叫びますわ!ちょっと、やめて、近寄らないで!!!遠くに捨ててきて!!!」


 半狂乱になって手近な近衛の後ろに隠れるロザリンドに、集まってきた近衛たちは顔を見合わせる。

 そしてベリンダの手から、一人の近衛がカエルをそっと受け取ると、急いで王宮の外へ逃がすべく、走り去っていった。

 それを見送りながら、ベリンダが苦笑する。


「うむ、なかなかにやりますねあの王女殿下も。」

「やりませんわよ!!!ぜんっぜんたいしたことありませんわ!」

「はいはい。」


 涙目になりながらも首をふるロザリンドに、ベリンダは気のない返事をしながら、侍女たちに主人の着替えを手伝ってもらえるよう、頼みに足を向けたのだった。

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