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荘厳な玉子  作者: 丸山 純一
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市井にぶん殴られた小松を乗せたベンツは春日通りを抜け、鴬谷に有る事務所に辿り着いた。


鴬谷ーー東京最後の異世界の様な街である。

東京都台東区に有り上野の隣に位置し、ドヤ街の山谷、歓楽街の吉原も近くである。


鶯谷駅の北口改札出口を出ると目の前にいきなり、数十軒を要するラブホテル街がいきなり出現する。という周囲の街と比較すると異次元の様な街となっている。


そんなこの街には未だに立ちんぼは居るが、みどりの窓口は無い。

外国人の立ちんぼや、デリヘル嬢が昼間から我が物顔で男性客を連れ行軍闊歩しており、そんな砕けた街だからこそ、昼から営業している居酒屋も数多く、それらを求める中年男性の聖域となっている。吉原の入口にもなっているこの街では風俗産業を中心に、それに群がるハイエナ達も数多く、人種も入り乱れた多国籍のアングラな人間模様が繰り広げられている。


我妻はこの街を大東信販の事務所開設に選び、見事に成功させた。


鴬谷には交番は有るものの、数多くのデリヘルが点在する街柄、当然それらのビラ撒きもハンパ無く多く、そこらの電柱や壁にはいかがわしい、いわゆるピンクチラシがベタベタと貼られたまま放置されている。

交番勤務の地域課の人員の、ゆうに100倍を数えるデリヘル嬢のビラ撒き攻勢に叶うはずも無く、この街でビラ撒きは公然とまかり通っている。

そこに目をつけ、ビラを撒きまくり顧客を増やした。

何だかんだでインターネット等、流行りのスタイルより、ヤミ金融の客はアナログなものだ。

右を見ても左を見てもラブホテルのこの街のラブホテルとラブホテルの間の、共同トイレの汚ない、外壁舗装もされていない剥き出しの外観の雑居ビルに事務所をかまえた。


その共同トイレからサンポールを拝借し、事務所に戻る。

廊下で同じ階に事務所を構えるヤミ金融の若いのが「お疲れ様です」と挨拶してきた。

この大宗ビルでは、自分も事務所を構える四階には三社のヤミ金融が、ビル内全体では十社以上のヤミ金融が営業している。

皆、共存共栄しており共同トイレや一階から五階の廊下等の共用部分は、ビルに入るヤミ金融全ての中で一番下っぱ三人が交代で掃除している。

確か今の若いのが最近の掃除当番だったはずだ。

すれ違い様に10000円渡してやる。若い自分もこうして小遣いに助けられた。それは忘れない。

受け取れません!の声を無視し事務所のドアを開けると、椅子に縛りつけられ、川島に金属バットの乱打を食らい血を撒き散らす小松の姿が視界に入った。

川島は横浜でヤクザをしていた。トラブル相手を高速のSAに拉致し、太ももを匕首(ドス)で抉り、SAの駐車場の植え込みにトラブル相手を放置し、出血多量で死に至らしめた。

ドスは、脅すが語源らしいが語源も虚しく、脅すを通り越した所業をおこなった川島は逮捕され、懲役10年の判決を受け服役(アカオチ)した。

10年後に出所(ほうめん)し、ヤクザも破門になりウチに流れてきた。

たまにその狂人ぶりを見せるが、今日はその狂人の面目躍如といったところだろう。

「おい、頭と内臓はほどほどにしとけよ」

「分かってますよ。まだ慣らしです。」


「オラ!飲み干せ!」

サンポールのボトルを開けると、小松の口に突っ込んだ。邪魔をした歯が2本折れたがかまわずボトルを突っ込みグリグリ回しながら中身を出す様にボトルを押しながらサンポールを飲ました。

「空きっ腹にウォッカとかより、断然焼けるだろ!? 金は?いつ払う!?」

備え付けの物だから中身は少なく、すぐに空になった。

空のサンポールのボトルを小松の頭に降り下ろす。


パカァーン!と、間抜けな音が日本庭園に有る竹のアレみたいに事務所に響いた。

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