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第四話 『コップメイク』

俺はまだ家具も少ない部屋の片隅で昨日発覚した能力を使おうとしていた。


「まずは何を作るかきめないとな。」


 とは言ったものの、生活に必要なものはほとんどそろっている。更に食料の問題もない。


「......コップでも作るか。」


 なぜコップなのか。その理由は今あるコップには取っ手の部分がない。それだとあたたかいものが飲めないのだ。ということで作るものは決定した。あとは実際に作るだけだ。

 裁縫用の針を机の引き出しから取り出す。能力の発動条件は、自分の血液を自分の手の表面に触れさせること。つまり自分の血液を出さない限り何も始まらないということだ。だが自分の体に自分で針を刺すというのは少し抵抗がある。だから針をしまい。カッターを取り出す。こっちのほうが幾分かマシだ。

 カッターで自分の腕を軽く切る。切った場所から血が滲んできて一つの線となる。その線を人差し指でなぞる。条件達成。能力発動。


「カーディナルメイク!!」


別に能力名を叫ぶ必要はないけどこっちの方がかっこいいじゃん?中二病のように能力発動を宣言すると手のひらが赤黒く光り、光の中からコップが出現する。

 出現したコップは小さく、イメージが弱かったのか形も崩れている。まるで幼稚園児が泥で作ったコップのようだ。いや何もかも幼稚園児よりもひどい。こっちは下に穴まであいているんだコップとして機能するわけがない。幼稚園児に失礼だ。

 とにかく前回の反省で実物のコップを横に置いてイメージを強く持つ。もう取っ手なんてどうでもいい。とにかくできればいい。

さっきの傷口から血を絞り出し同じように人差し指でなぞる。


「カーディナルメイク」


同じように赤黒く手が光り、コップが出てくる。そのコップはさっきと比べものにならないほど形が整っていた。しかし凄く小さかった。ウィスキーなどをストレートで飲むためのショットグラスと同じくらいの大きさだ。生憎(あいにく)まだ酒は飲めない。小さいということは血が足りないということか......

 試行錯誤して何度も何度も能力を使った。だが未だに納得できるものはできていない。


「......カーディナルメイク」


もうテンション下がってきた。手から出現したコップは実物をコピーしたかのような出来だった。

しかしこれだとコップが増えただけ。取っ手付き欲しい。

もう自分を傷つけることに抵抗はなかった。さっきより少し多めに血を出し能力を発動する。


「...カーディナルメイク」


自分の想像どうりのものができた。これで温かいコーヒーが飲める。それにしてもコップ一個作るためにこれだけ血を使うって燃費悪すぎだろ。そう思った瞬間意識が飛んだ。




......頭が痛い。フラフラする。重たい体を起こし時計を見る午後3時だった。お昼前に能力を使って貧血で倒れたのか。まぁでも今日の収穫は大きい。能力のコツは掴んだ。ただこれは連発して使うものじゃない。あとこの能力で作ったものは自分の意志で消せることが分かった。あの泥コップは消した。とりあえず今日休んで明日ぐらいには学校生活に必要なものを買いにいかなければ。

 頑張って作ったコップで温かいコーヒーを飲むのにインスタントコーヒーがない事に気付くのは三十分くらい後の話。

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