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最終話『存在理由』

 異世界(ここ)に来るまでは全てが嫌いだった。裏切られ、他人を信じることをやめた。助けてもらえなかったから誰も助けなかった。何をしても何も変わらないから自分に期待するのもやめた。そうやって生きてきた。意味もなく引き伸ばしてきた。ただこの世界に来てからは少し変わった。例え上辺だけだったとしてもそこに裏切りはなかった。いろんな人と助け合いをした。鍛えれば鍛えるほど強くなった。この世界はあの世界とは違う。そう思っていた。

 白髪の能力者の言うことも分からなくもない。この世界の人間も争い、利用し、騙す。そんなニュースを見たこともある。実際に他人の命を奪おうとした人間と戦ったこともあった。つまり、変わらないのだ。どの世界でも人間はそういうものなのだ。ただ俺がこの世界に来てからは良い人に恵まれていただけ。きっと時間が経つにつれ分かってくる。その事実から目を逸らしていた。この世界は良いものだと自分に言い聞かせてきた。それを意識してからは一概にこの生き方は正解だとは言えなくなった。ただ今はこう思う。正直この生き方は多分、正解ではない。



「一緒に未来を変えるかって聞いたよな。答えはノーだ。未来なら自分で変える。」

「交渉決裂ですね。」

「いや、交渉の代わりと言っては難だがゲームをしないか?命を賭して行う人生で一度切りのゲームを。」

「貴方は面白い人ですね。......いいでしょう。その勝負(ゲーム)受けて立ちます。」

「ルールは簡単だ。俺達二人で殺し合う。相手を殺すか戦闘不能にした方が勝利。勝者は敗者に命令でき、敗者はその命令に逆らうことはできない。」

「わかりました。合図で開始ですか?」

「いや、もう始まってる。」


俺の邪悪な笑みを見た白髪の能力者は戦闘態勢に入った。

 今の俺の能力は『カーディナルメイク』、『模倣と再生』、『位置の変化』、『ブースト』、『フレイム』、『スキルブレイク』、『衝撃波-斬』、『エア』の八つ。白髪の能力者の能力数は未知数。勝てる可能性は零に近い。しかしそれはまともに戦った時の話。卑怯に、醜く、まともに戦わなければ勝てる可能性はある。

 超至近距離で最大火力のフレイムをぶっ放す。白髪は水の能力で相殺。そして俺はそれを白髪の背後で見ていた。腕に炎を巻き込んだ台風を纏い、ブーストも平行して使う。

腕部強化(アームブースト)

 炎が肌を焼き、台風で腕がねじ曲がりそうになる。しかし全力で殴る。台風と炎と衝撃が同時に白髪に襲い掛かる。咄嗟にバリアを三重に展開するも作りたてだと脆いのか全てのバリアを砕き、その破片をも巻き込んだ拳が白髪の能力者に直撃する。吹き飛び壁に打ち付けられ血を吐いた。服は燃え、バリアの破片が刺さり、幾つもの切り傷もあった。食らえば即死レベルの威力だったが硬化の能力を使っていたらしく、身体が潰れずに済んでいた。一方俺はというと、腕は焦げ、普段曲がらない方向に腕は曲がっていた。しかしそれも十分あれば完全再生できるだろう。相変わらず痛みはない。

 右手が使えなくなろうともすぐに次の攻撃を仕掛ける。同じ作戦で行く。位置の変化で白髪の近くに移動し、左腕にさっきと同じ能力をかける。そして『模倣』した『硬化』も発動させ、腕がまた使えるよう対策もした。これを続けていればいずれは倒せるかもしれない。拳が白髪に当たる手ごたえがなかった。空振りしたと思ったが白髪が瞬間移動していた。そこから白髪は数々の能力を発動し、俺に攻撃する。俺は模倣したバリアを使いその攻撃を防ぐ。

 そこからはまさに激戦だった。白髪が能力を繰り出し、俺がバリアで防ぎつつ能力を模倣し反撃、それを白髪が防ぎ、更に手数を増やし攻撃。難易度が高いシューティングゲームのような感覚で次々と技が繰り広げられる。


「貴方とは分かり合えると思っていました。」

「今からでも遅くはないんじゃないか?」

「どうですかね。」

「そういえば名前をまだ聞いてなかった。」

「私はレイ、天堤零(あまつつみれい)。」

「辻見望だ。」

「望さん、それではさようなら。」


地面で燃えてた炎が消えた瞬間戦いは再開した。



 戦いは終わった。激しい戦闘の末、生まれた血の海と能力の後、ひび割れた壁、壊れた武器、未だに燃え続けている炎、戦いの残滓はその戦いの壮絶さを物語っていた。唯美達が目を覚ますと目の前には解放されたが意識を失っている七森文ともう動くことはない辻見望の姿があった。

 後日、塔は崩壊し、七森文も無事目を覚ました。アルカナでの記憶は無く、鈴の知る姉は戻ってきた。そして元凶のアルカナは行方をくらましたがその存在は大きく世間に知れ渡ることになった。

 唯美達のため、ミカのため、文と鈴のため、平穏に暮らしている人のため、辻見望は戦うことができたのだろうか。人のために生きることができた。存在していた理由はそこにあったのだと、今ではそう思う。それで十分だと。なぜなら、


 俺が居ない世界で彼女らはまだ生きていくのだから。

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