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第三十五話『問い』

 暴風を纏った名取先輩は白髪能力者の攻撃を全て受け流した。水も、火も、石も、全てを風の流れで飛ばした。そんな戦闘を俺は遠くから見ることしかできなかった。名取先輩が空を飛び、地上戦から空中戦に切り替わる。攻撃を受け流しつつ両手に(かか)えた暴風を放ち、白髪の能力者に攻撃する。しかしその攻撃はバリアによって防がれた。まとまっていた風は四方八方に散らばり、俺も少し風を受けた。これでは埒が明かない。お互いに攻撃が通じず、ダメージを受けることはない。よってこの戦いはスタミナの削り合いだ。そう思った瞬間、白髪の能力者が舌打ちをした。決して大きな音ではなかったはずなのにしっかりと俺の耳にその音は届いた。そして戦況は一転した。名取先輩が風の制御を失い風はしばらく暴れた後、散った。おそらく敵に能力無効の能力も持っていたのだろう。名取先輩は風に体を奪われ、散々振り回された後落下した。あのまま地面に直撃したら即死だろう。


「唯美、お前の力借りるぞ。『脚部強化(レッグブースト)』!!」


(あし)に力が流れ込んでくる。唯美を元の世界に飛ばすときコピーした『ブースト』の能力を使用した。戦闘服の身体強化も合わさりかなりの速度が今なら出せる。俺は一歩目を全力で飛ぶように駆け出した。落ちてくる名取先輩に速度を調節しながら走る。自分の脚で走っているとは思えない速度で障害物だらけの地面を低くジャンプしながら駆けていた。三歩走ってからジャンプ、また三歩走ってからジャンプといった感じで繰り返した。名取先輩に近づいてあと百メートルほどになったとき全力でジャンプする。名取先輩をキャッチしてそのまま落下する。着地に成功し、名取先輩を地面に降ろす。名取先輩は気を失っているが息はしている。どうやら無事だったらしい。名取先輩を『位置の変化』で元の世界に戻し、俺はあの白髪の能力者で一騎打ちとなった。あの人数を一人で戦闘不能まで追いやった奴だ。普通に考えて勝てるわけがない。絶対に無理だ。


「お前がアルカナのボスか。」

「そうです。私がこの組織を作りました。私の理想を実現させる為に。」

「何故こんなことをする?戦力を必要とする?お前の理想とは何だ?」

「貴方に話す必要はありません。」


俺はあの眼を知っている。あの白髪の眼は復讐という感情に全てを任せている眼だ。現実社会を憎しみ、心の内に積み重なっていった憎悪が限界に達し、その一つの感情に全てを支配されている眼だ。そいつの考えていることぐらいわかる。根拠は無いが俺と彼はどこか似ている。そんな気がした。


「あの腐りきった世界を創り直すのか?あの腐りきった地球を。」

「貴方が何故その言葉を知っている!?」

「タロット、それはこの世界には存在しなかった。なのにその名前を持ち、その意味通りの能力者が集まったこの集団、この世界の住民では知り得ない情報を持つそのボスは、異世界転生者。」

「・・・・・・」

「思ってもいなかったよな?異世界転生者が他にもいるなんて。」


薄々気付いてはいた。地球の情報と一言一句違わないタロットの情報とこの組織の情報が結びついた時から俺の他にも異世界転生者はいる、と。


「なら貴方にもわかるはずです!あの腐った社会の醜さが、歪んた平和と平等が、どれだけ酷いものか死にたくなるほど味わってきたのではないのですか!!」

「そうかも知れない。ただこの世界の人達は関係ないだろ。」

「違う!!人間なんてどの世界でも変わらない!!いつだって同じ人間で争い、奪い、いがみ合い、醜い姿をさらしてきた。その事実はここでも変わらない!!」


これは説得は無理そうだ。完璧に感情に支配されている。他人の意見を聞く余地など残されていない。


「僕と手を組みませんか?腐っていると言った貴方なら成し遂げられる。あの苦しかった過去も、歪んでしまった今も貴方となら変えられる。一緒に未来を変えませんか?」


思わす迷ってしまった。このまま生きていくのが正解なのか不正解なのか、今では分からない。今まではまちがいだらけの人生だった。何一つ成し遂げた事はなく、流されるがままに生きてきた。その結果こんなみじめな姿になってしまった。

 

 再度問おう、果たしてこのまま生きていくのは正解なのだろうか。

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