第三十三話『深紅の剣の雨』
爆発音だけが響いている。爆発による煙がこの空間を覆い、何も見えない状態に近い。そんな煙のなか濁ったような赤色がゆらゆらと幽霊のように動いていた。煙が消え、彼が姿を現した。爆発で両腕の大部分が損傷していて原型を保っていなかった。骨の一部も持っていかれているであろうそれを辻見望は見せつけるかのように持ち上げた。深紅に光っていた彼の眼は更に光る。すると腕の傷は瞬く間に修復されていき、傷一つない元の腕に戻った。
カーディナルメイクの応用、カーディナルリペア。その大量の出血を利用し、骨、細胞などを作成、体内から損傷した箇所に放出、パズルのピース埋めていく感覚で必要な個所を骨や細胞などで埋める。そんな高度な技術と能力の熟練度が必要な芸当を彼は意識を失ったまま行っている。そう彼、俺は今意識を失っている所謂暴走状態だ。まるで他人が自分の身体を操っているかのように全く自分では動かせない。だから今はこうして第三者として見ていることしかできない。
「キモっ!?なにこれキモっ!?」
どれだけ爆撃を浴びせても彼は倒れない。幾らでも再生する彼を気持ち悪がっている彼女、審判もまだ傷一つついてはいない。それは彼が手加減しているのではなく審判がただ単純に強いのだ。投げた剣は爆発で飛ばされ、撃った弾丸は躱され、近付いても爆発で吹き飛ばされる。爆発も在庫がなくなる気配がない。そんな状態が三分は続いている。それ故裁判にはまだ余裕がある。この状況を意識なしで突破できるのか?
彼は小さなマシンガンを二丁作り出し、裁判を狙い一斉掃射した。床が上がり壁となり審判の身を守った。がしかし、彼は弾が無くなると同時にマシンガンを投げ捨て急接近し、瞬時に作った二本の剣で容赦なく切り付けた。だがその攻撃も真下からの爆発により中断された。足が吹き飛び、身体が宙を舞う。その状態で剣を大量に作成、そして次々と最大速度で放出していく。爆発による大量出血で実質作る制限はない。その剣の雨は彼女を殺すか彼が死ぬまで止むことはない。
「嘘でしょ!?」
絶え間なく飛んでくる剣に爆撃での対応では追いつけなくなり審判に五本ほど突き刺さる。その五本の内の一本は審判の心臓に刺さっている。自身の足を再生し、生命活動を終了しようとしている審判に近づく。深紅の眼が左目だけ黄色に光る。
「.......二種、持、ち?」
それが審判の最後の言葉となった。
彼は目的を果たした。剣の雨も止んだ。しかし暴走は止まらない。この状態の彼は目の前に人間がいる限りそれを殺すため暴れ回る。自分が死ぬまで。そして次の標的は上原幸嗣だ。俺は両手の剣で幸嗣を切り裂こうとしている。全力で抵抗しても止まる気がしない。馬鹿じゃないか?守りたい人の為に暴走して、守りたかった人を自分の手で殺す。本末転倒だ。止まれ、止まれ、止まれ!
「目覚ませ!望!!」
俺の剣が幸嗣の首を刎ねる直前で剣は止まった。幸嗣の能力で俺の能力が打ち消され、身体を支配していた能力から解放されたのだ。
「...幸嗣、ごめん。」
そう言った直後、俺は倒れた。




