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第三十二話『審判』

「やっぱり駄目だったか。幸嗣、そっちはどうだ?」

「ああ、こっちもやっぱり駄目だ。」


 隠者との対決の末、幸嗣のショットガンと俺のハンドガンは発射機構が潰れ、使用不能状態となり、俺の装備は残り剣とナイフのみ、能力での武器の追加は行動不能に繋がる。それに既に一回使用しているため、こんな早くから使うわけにはいかない。


「幸嗣、武器の予備はあるのか?」

「一応あるけど生憎ハンドガンは持ってこなかった。すまん。」

「別に幸嗣が謝ることじゃない。ないならないで上手くやるさ。そろそろ上に行こう。」

「ああ、そうだな。急ごう。」


階段を上りながら名取先輩達にFHTで連絡を試みる。しかし、名取先輩にも、唯美にも、先に行った筈の四人との連絡が取れなかった。


「......おかしい。唯美達と繋がらない。」

「本当か?FHTの方が故障したんじゃないのか?」


四人中四人に通信ができなかった。試しに幸嗣にかけてみると、つながった。つまりFHTの故障ではないということだ。


「こいつはまずいな。」

「とにかく急ごう。」


階段を全速力で駆け上り次の階に到達した。潜望鏡で敵を確認する。


「右に一人だけだ。幸嗣、能力を頼む。そして合図したら太腿に一発撃て。」

「了解。」


幸嗣は能力を発動させた。常時発動系の能力ならもう気付いているはずだから、そういうタイプじゃないな。


「......三、二、一、今。」


幸嗣は撃った。彼女の太腿に。すると彼女は尻もちをついた。


「痛ったぁ。」


そう、そこに居たのは隠者と同じアルカナの幹部と思われる女性、というか女の子だった。幸嗣に撃たれた太腿から流れる血を小さな手で止めようとしている。シンプルなデザインの黒いパーカーにホットパンツを履いた紫髪の少女は何か武器を持っているわけでもなくそこに居た。

ということはここで唯美達に何かあったのだろう。ここに唯美達の姿はない。つまりこの女の子がやったのだ。俺はすぐに階段から飛び出し、女の子に接近、あと一センチでも前に出せば頭に刺さるくらいの至近距離まで剣を突きつけこういった。


「このままだと大量出血で君は死ぬ。そして俺達はそれを止める手段がある。死にたくなかったらさっきまでここに居たはずの人達の情報を教えろ。」

「嫌ですね。」

「そうか、残念だ。」


そう答えると同時、俺は剣に力を入れ、少女の命を断つ。その刹那、爆発音と同時に俺の身体は吹き飛んだ。真後ろに吹き飛ばされ、しばらく床を滑り、俺の身体はようやく止まった。


「能力は封じてたはず......」

「馬鹿だねーほんとに。爆発(これ)、能力じゃないよ。」

「何?」


幸嗣が時間を稼いでくれたおかげで大分動けるようになった。生身なら死んでいたが戦闘服の防御力によりダメージは少ない。次は隙を突いて容赦なく断ち切る。爆発の衝撃で剣を手放してしまい、現在はナイフしか使えない。


「わたしの能力は位置の変化、あのかわいい子たちは私の世界にご案内してあげた。」

「それは何処だ!」

「ゆーわけないじゃん。わたしを殺したら解放してあげる。」


幸嗣が敵意を向けたその瞬間、俺は奴の首目指して全力で飛んだ。そのままナイフで切ろうとナイフを構えた。がその構えはすぐに崩れた。またしても身体は吹き飛び、上に高く飛んだ俺の身体は勢いよく天井に当たり、そのまま落下、そして床に激突した。


「あは♡わたしには指一本触れられないよ。」

「クソッ」

「位置の変化......審判か。」

「よくわかったね。でもその名前嫌いなんだよね。二度と言えない身体にしてあげる。」


幸嗣がアサルトライフルを構え、審判をハチの巣にしようとした。が、横に吹き飛んだ幸嗣にはできなかった。


 その後も何度も何度も何度も何度も、爆発しては起き上がり、また爆発しては起き上がる。その繰り返し俺も幸嗣も戦闘服も限界を迎えようとしてた。声を出すにも精一杯なこの状況でもまだ形勢逆転できる方法をまだ探している。

 

「......望、能力が、使えれば、奴を倒せる、か?」

「わからない、でも、策は、ある。」

「なら、ちょっと待ってろ。」


幸嗣はそのボロボロな身体で立ち上がった。


「しつこいなぁ。しつこい男は嫌われるよ。」

「うるせぇ!スキルブレイク、限界突破!!」


その言葉と同時に自分の中でロックが外れるような音が聞こえた。


「まさかここで限界突破するの?少年漫画みたいで熱いね。わたしそういうの大っ嫌い。」


「望!やっちまえ!!」


ありがとう幸嗣、俺はやるよ。たとえこの身が滅びようとも、元は捨てた命だ。この身に意味を与えてくれた人達の為にこの身を捧げよう。生きる意味はそれで十分だ。


 能力最大解放、制限解除、第二能力解放。


「ここからは俺のターンだ。」


血の霧を纏い、片手に作成した剣を握りしめ、紅く光る眼は殺意に満ちていた。


血は狂化の合図。俺はこれを壊すまで壊れ続ける。

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