第二十八話『最終確認』
この二週間準備は順調に進み、今日はいよいよ作戦決行前日つまり最終確認の日である。全員に配られた装備『身体能力上昇スーツ』は文字通り身体能力を底上げできるスーツで、バベルの塔最上階に行く可能性も考えて低酸素状態でも戦えるように酸素が供給されるなどの仕組みもある。今までの身体と違う身体を使うようで、なかなか慣れなかったがこの準備期間で全員が完全に使いこなせるようになった。それに加え、個人の武器の制作が終わり、ミカの手によって最高の装備を揃えることができた。
準備は万全、全員体調に異常なし。この作戦がいつもの戦闘と違うのは現実で行うということ。それはつまり痛覚、怪我、、そして死、全てが現実となり最悪の場合この世から去ることになる。それを覚悟した全員がこの場に立っている。全員が集合し、唯美の司会によって最終確認が始まった。
「それでは最終確認を始めます。まずは持ち物の確認です。資料一を見て下さい。」
俺達は配布された資料に目を向ける。言うまでもなくこれは俺が作ったものだ。自分の作ったものなので内容は頭に入っている。だからこの時間は誤字脱字をチェックしていたが俺の仕事に不備は無かったようだ。
唯美が持ち物を全て読み上げ、質問タイムに入る。
「ここまでで何か質問がある人はいますか?」
しばらくの沈黙、どうやら質問は出てこないらしい。唯美もそう感じたのか次の議題に入る。
「ないようなので次に進みます。次は日程の確認です。当日は......」
細かい日程を説明し終えた唯美はさっきと同じ問いを投げかける。
「ここまでで何か質問がある人はいますか?」
名取先輩が手を挙げた。
「名取先輩どうぞ。」
「これは質問と言うより確認だけど緊急時はこれで連絡を取るってことでいいのか?」
そう言った名取先輩が持っていたのはペンのような形をしたデバイスだった。そのデバイスは最新型通話機器でポケットやバックパックに入れているだけでイヤホンやマイクを着けなくても通話ができるというこの近未来ならではのアイテムだ。正式名称はFree Hand Telephone call、通称FHTだ。テレビ通話をする場合画面が浮き出てくるらしい。これが元の世界のホログラムの進化形態なのか、能力を応用したアイテムなのかはわからない。
「はい。基本は最低でも二人一組のチームで行動しますが万が一離れてしまった場合や、他のチームと連絡を取りたい場合はFHTを使います。」
つまりこのFHTは全員に配られている。能力違法使用対策局の備品だったらしく名取先輩がさりげなく借りてきてくれた。
「では次に進みます。」
***
最終確認は順調に進み、ついに終わりを迎えた。
「以上で最終確認を終わりにします。明日は三時半に駅で集合なので今のうちに寝ておいてください。では解散。」
スムーズに進んだため最終確認には一時間も掛からなかった。それぞれが自分の寮、自分の部屋に戻っていく。
「俺買うものあるから先帰っててくれ。」
と幸嗣はアクシズで買い物を。それに
「あたしもいくーー」
と夏海もついていった。先輩ペアはいつの間にか帰っていた。よって必然的に取り残された唯美とミカと俺は一緒に帰ることになった。
「それじゃ行きましょう。」
「ああ。」
アクシズを出て寮へ向かう。何気ない会話をしながらしばらく歩いていると十字路でミカが急に止まった。
「いよいよ明日だね。私は戦えないけどこっちで応援してるから......二人とも頑張ってね。」
「はい!ありがとうミカちゃん。頑張ります!」
「いい報告ができるよう頑張るよ。」
少し悲しそうだったミカの表情は俺達の答えを聞いて明るくなった。そう、こうして期待してくれている人のためにも、絶対に失敗するわけにはいかない。絶対に、失敗は赦されない。
「必ず帰ってきてね。じゃ、私はこっちなので。」
そう言ったミカの目には涙が浮かんでいた。その涙を隠すように走って行ってしまった。
「これはますます失敗はできませんね。」
「当然だ。唯美明日は絶対勝つぞ。」
「はい!望くん!絶対勝ちましょう!」
自分のため、仲間ため、ミカのため、七森姉妹のため、唯美のため、信じてくれている人のため、絶対に成功させなくてはならない。そのための準備はしてきたはずだ。自信を持て、俺はできる。仲間を、七森姉妹を、救う。




