第二十六話『工房』
能力研究所での検査が終わり、俺達は準備、トレーニング期間に入っていた。高校は連休で部活でもない限り行く必要はない。連休はピッタリ二週間ある。そのうち最終確認と作戦当日の二日間以外の全てを準備期間にあてている。そして俺達が能力研究所に行っている間、名取先輩は武器のオーダーを済ませていたらしく、昨日ミカから『名取先輩の設計図出来ました!』とメッセージが来た。元の世界ではスマホが鳴ることなんて片手で数えられるほどしかなかったからとても新鮮な気分だった。
そして今日、名取先輩と下町先輩を除いた俺、唯美、幸嗣、夏海はミカの工房に来ていた。下町先輩は武器を既に持っているらしく、作る必要はないそうだ。出迎えに来てくれたミカは紺色のつなぎを着ていた。おそらく作業服だろう。ミカは寮で生活しているわけではなく実家暮らしで、ミカの家の敷地内には部屋二つ分くらいの大きさの小屋があり、それをミカが工房として改造したらしい。
「「「「お邪魔します。」」」」
俺達四人はほぼ同時にそう言って工房の中に入った。工房の壁紙は黒く、床に青い線が何本が入っている。そして壁には剣や銃が飾ってあり、設計図と思われるものも何枚か貼ってある。さらに机が二つ右と左に置かれていて、左の机には道具や設計図、部品などが散乱していて、右の机には剣が一本、銃が一丁とマガジンが三つほど無造作に置かれていた。工房といったらもっとごちゃごちゃと物が散乱しているイメージだったが、ミカの工房はかなり片付いていた。
「それじゃここに座っててください。」
そう言ってミカは背もたれのない椅子を四つ持ってきた。指示通り俺達はそこに座った。
「じゃあ皆さんアイデア出してください」
アイデアというのは事前に頼まれていた大体の武器の構図だ。こんな形でこんなことができる。と最低限書いてあれば良いらしい。全員が一枚ずつ紙をミカに渡す。その紙をミカはしばらく「なるほどなるほど。」と言いながら見つめていた。
「じゃあ簡単そうな上原さんから」
招き猫かのように手招きをしながら幸嗣を呼ぶ。幸嗣はミカの座っている近くまで椅子を移動させ、そこに座る。
「防刃防弾の戦闘服は人数分作るからいいんだけど、後のナイフと銃か。ナイフはこれでいいかな?」
ミカが壁に飾ってあったナイフを一本手に取ると幸嗣に渡す。幸嗣はナイフを受け取ると片手で持ちサイズを確認する。ただでさえ幸嗣は筋肉質でデカいのにナイフなんて持たせたらナイフがとても小さく見える。下手したら素手の方が強いんじゃないかという錯覚に陥る。
「ちょっと小さいか。じゃあこれを大きくしたのを用意しとくね。そしたら銃か、上原さんの能力の特性上有効射程が五十メートルあればいいから、ショットガンがいいか。カバー範囲広いし。」
ミカはあれこれ言いながらメモ用紙に素早く何かを記入する。ミカのその様子はとても楽しそうだった。心から物作りを楽しんでいる。本当に物作りが好きらしい。
「はい。上原さん終わり!次夏海ちゃん。」
幸嗣と夏海が入れ替わり、次は夏海の番だ。夏海は目を輝かせながら話をはじめた。
***
夏海も唯美も武器開発の相談が終わり最後は俺の番だ。俺はこの能力を使い始めた時から欲しい装備があったので、一つは確定だ。それだけだと戦力的には心細いので追加で更に頼むことにした。もう一つ何を頼むかは悩んでいた。剣は使い慣れているし、銃は中、遠距離からでも攻撃できる。槍も捨てがたい。他にも武器には色々な種類がある。そんな数多くの武器の中から俺が選んだのは......




