第二十五話『残光』
唯美の次に幸嗣、夏海の順でアーカーシャとの戦いに挑んだ。
幸嗣は敵の能力無効でひたすら殴るといういつもの戦闘スタイルでアーカーシャを倒した。アーカーシャの再生は能力判定だったらしく、幸嗣が殴り続けると動かなくなり幸嗣の勝利となった。もはやあれはただのボクシングと化していた。
続いて夏海の戦いだ。夏海は距離を取り遠くから炎で燃やすという作戦だった。だがアーカーシャは自身の両腕を液体にし、そのうち右腕を前に突き出すと液体化した右腕は伸び、逆に左腕は縮む。右腕が夏海の近くまでいくと、先を針のように尖らせ夏海の左腕を貫いた。自分が戦っている時はあまり気にしなかったが夏海の戦いを見ると、アーカーシャの能力は液体と固体に変化できるといったところだろうか。液体となって夏海に近づき、固体で辛いた。模擬戦などでも俺は夏海の勝っているところを見ていないため俺は夏海が勝つイメージがなかった。
だが夏海は諦めていなかった。もう一度アーカーシャが同じ技を繰り出す。アーカーシャの腕が液体に変化し近づき、固体に変化するその瞬間、夏海は最高火力で液体となっているその腕を蒸発させた。アーカーシャの能力はあの攻撃を見ると体積が増えて腕を伸ばしているのではなく他の場所から移動させ、延長しているだけだ。減ったものが元に戻るのではく、全体を減らして元に戻ったように見せているに過ぎない。よって蒸発した腕は再生できない。夏海の炎はどんどん大きくなりアーカーシャの身体全てを包み込む。その炎が消えた時アーカーシャは消えていた。唯美の勝利だ。よく考えれば、唯美は海木との模擬戦で大量の水を一瞬で蒸発させるほどの火力を出している。あの程度液体なら全てを蒸発させることなど朝飯前だっただろう。アーカーシャに勝利という結果は当然のものだった。
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そして最後は今回の作戦で顔合わせをした第一高校の先輩下町淳貴、能力名は『衝撃波-斬』文字通り斬撃を飛ばす能力らしい。初めて下町先輩の戦いを見るのは初めてだ。俺が想像しているような能力だとアーカーシャと相性が悪いように思えるが下町先輩は第一高校所属だ。しかも焦っているようには見えない。まぁ無表情、無口なら得られる情報量はゼロに等しいが。
『戦闘プログラム起動。計測開始。』
仮想世界が展開され、アーカーシャと下町先輩が現れる。下町先輩の手には一本の刀が握られていた。俺の『カーディナルメイク』と同じように『衝撃波-斬』にも発動条件が必要なのだろう。俺の場合は血、そしておそらく下町先輩の場合はあの刀だ。
下町先輩がアーカーシャから離れたところで横に一振りする。すると刀は水色に光り、刀を振ったことで水色の残像ができた。その光の残像、残光はアーカーシャ目掛けて飛んで行った。高速で飛んでくるその光を避ける間もなく、斬撃はアーカーシャの首を切り落とす。アーカーシャの首はベチャと音をたてて地面に落ちた。液体となったアーカーシャの首は足に吸い込まれるようにしてアーカーシャの中へ戻り、ブクブクと首を再生した。ここまでは俺の予想通りだ。この調子だと同じことの繰り返しでおそらく多く体力を消耗する下町先輩が負けるだろう。だがこれだけで終わる筈がない。俺には確信に近い何かがあった。
下町先輩は刀を持った右手を上にあげ、頭の後ろまで下げる。すると力を貯めるように右腕全体に力が入り、プルプルと震えている。そして刀がさっきと同じように水色に光る。時間が経つにつれその光は次第にどんどん大きくなっていき、最終的には下町先輩自身よりも大きくなった光を纏った刀を右上から左下へ切り下ろすように全力で振る。すると大きな光はアーカーシャに向かっていくまでの間にも大きくなり二十五メートルプールほどの大きさの光がアーカーシャに直撃する。直撃すると同時にアーカーシャは跡形も残らず消えた。
『計測終了。戦闘プログラムを終了します。』
戦闘を終え準備室から出てきた下町先輩は相変わらず無表情だった。俺はあの馬鹿みたいな威力とまだ本気じゃないと思わせる無表情、もしあれ以上の火力が出るとしたら、そう考えるとあのバベルの塔もその一撃で破壊できるのではないかと思えた。後で最大威力の確認をしておこう。
とにかくこれで戦闘員全員の検査が終わった。戦力としては全員が平均以上、そして二人はトップレベル。さらに自分の能力を最大限に発揮できる武器がつき、戦力は底上げされる。相手の戦力は未知数だが、できたての組織と考えるとこのくらいで充分かもしれない。
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「河辺さん、今日はありがとうございました。」
「いやいや、こちらこそ貴重なデータが取れて良かったよ。データは後で辻見君のパソコンに送っておくから。」
「何から何までありがとうございます。では、失礼します。」
河辺さんに見送られながら能力研究所を後にした。そして駅で下町先輩とも別れ、電車から寮への帰り道、俺達第五高校のメンバーはこんな会話をしていた。
「あのアーカーシャとかゆう奴ちょーキモかったねー。」
「そうですよね!あの真っ黒いのがブクブク言って再生するところとか寒気がしました。」
女子がアーカーシャについて気持ち悪いと騒いでいる。今日だけで四回も倒された上に、女子に気持ち悪い扱いされたアーカーシャに少し同情してしまう。
ドンマイ!アーカーシャ。
他人事のように言っているが、アーカーシャがこんな扱いを受けているのは大体俺のせいである。




