第二十四話『日尾野唯美とアーカーシャ』
会議が行われた次の日俺達は能力研究所に来ていた。俺達と言っても来ているのは実際に戦う人間だけ、つまりミカとこの前来ていた名取先輩以外の全員だ。ミカには早速武器を作ってもらっている。今日ここに来た目的は全員の力を把握するため虚空人間と戦ってもらい、能力の使い方、戦闘スタイルなどのデータをとっておくためだ。
この前もお世話になった河辺さんにお願いしたらすんなりとオーケーが貰えた。
「こんにちは。今日君たちを担当する河辺です。よろしく。では、早速あのアーカーシャと一人ずつ戦って貰います。まずは日尾野ちゃんから。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
「じゃあ向こうで準備してね。」
そう言われ唯美は準備室へ向かった。虚空人間はアーカーシャという名前だったらしい。アーカーシャも確か虚空とかいう意味だったからハズレてはいなかった。そんなことを考えていると唯美の準備が終わったらしい。アナウンスが流れる。
『戦闘プログラム起動。計測開始。』
そのアナウンスと同時に仮想世界に唯美とアーカーシャが現れる。俺の時と同じく唯美は武器を持っていない。武器を持っていない唯美を見たのは初めてだからどのような戦い方をするのか気になっていたが、早速唯美は能力を使用した。
「全体強化・制御」
そして唯美は両手を顎辺りまで上げると小さな拳をグッっと握りファイティングポーズを取った。まさか、殴り合い?
次の瞬間予感的中、唯美は地面を蹴り、アーカーシャに近づき胸ぐらを掴めるほどの距離になった時強烈なボディーブローを放った。すると唯美の拳はアーカーシャの身体を貫き、唯美が拳を引き抜くとアーカーシャの身体には大きな穴が開いた。だがアーカーシャはこれだけでは終わらない。開いたばかりの大きな穴はどんどん小さくなり、最終的には穴を完全に塞ぎ、元通りになった。この間僅か三秒である。
「ええっ!?」
唯美は驚きの声を上げ、少し間合いを取る。そして少し考えてから唯美は右手を強く握りしめ、体勢を低くし左手を前に出す。
「攻撃全力強化!!」
さっきと同じように地面を蹴り、アーカーシャを殴った。ただ威力が桁違いだった。唯美の拳がアーカーシャに触れた瞬間、物凄い風と共にアーカーシャは液体だが見えなくなるほど粉々に分裂して吹き飛んだ。その威力はビル一棟くらい余裕で倒せるのではないかというレベルだった。俺があれだけ血を使いようやく倒したアーカーシャを唯美は簡単に一分もかからず倒してしまったのだ。
『計測終了。戦闘プログラムを終了します。』
唯美が準備室から出てくると河辺は言った。
「凄いね日尾野ちゃん!瞬間威力がトップレベルだ。なるほど『ブースト』か.....」
唯美は少し照れながら笑った。唯美と目が合った俺はもしこれを人間が受けたらと考えるだけで恐ろしいことを想像してしまい苦笑いをしていただろう。このかわいい見た目に反して恐ろしいほどの威力のギャップに困惑しつつ、この日俺は唯美だけは絶対に怒らせないようにしよう。と天に誓った。




