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第十八話『バベルの塔』

 その塔は何よりも高い。この発展した世界でもこんな高さの建物は見たことがない。こんな高さのものを普通の人間が作れる高さではない。そもそも高さに対して一つの階が狭すぎるため物理法則すら無視しているかもしれない。まさにバベルの塔だ。これから勝手にバベルの塔って呼ぼう。結果これは人間が能力で生み出した塔だろう。そこまでの考えを皆に伝える。すると幸嗣から意見が出る。


「この塔が能力で造られたのは間違いないだろう。だがこの塔が直接アルカナに関係あるとは限らないんじゃないか?」


幸嗣の質問は確かにこの場の俺以外の全員が思ったことだろう。だが何故俺がこの塔をアルカナと関係あると思ったのには根拠がある。


「ここからは俺の推測なんだが、この塔が見つかりネットにあがったのは一週間前、そして今年の四月から五月にかけて能力高校の生徒数名行方不明になっている。ちなみにそこから先は行方不明の記録はない。どういう事か分かるか?」

「四月から五月の間に記憶改竄の能力を持った生徒を誘拐し、戦力にしたということか?」

「あぁ、多分そうだ。ということは実際誘拐は四月から下手したら今でも行われている。そんなに戦力を求めているということは恐らくアルカナはつくられたばかりの組織なんだろう。そして誘拐を繰り返すうちに塔を造り出す能力を持った生徒を戦力にすることに成功した。それが一週間前のことだ。そしておそらく増えた戦力を置く場所がなくなってやむを得ずあの塔を造ったってところだろう。」


そこまで話すと幸嗣達は納得したような顔をしていた。この塔がアルカナのものだということを証明できた証だろう。だが、実は他にも根拠がある。大アルカナのタイトルの一つには『塔』というものがある。それが俺の中の一番の決め手だ。


「だがこの塔を攻略するとなるとかなり時間もかかるし、戦力が足りないだろ。そこんとこはどうするんだ?」

「それを今から考えるんだ。」


痛いところを突かれた。今のアルカナの戦力がどれ程あるかは分からないが、俺達より戦力がある事は確かだろう。本当にどうしようか。案は無くはない。だが七森文(しちもりふみ)を安全に救える可能性が薄く、俺が死ぬ危険性も高い。この案は最終手段として残しておこう。


「今日は報告会です。最低限情報の交換もできましたし、もう案も出ないようなのでこのへんでお開きにしませんか?続きは明日にでも...」


唯美がそう意見を言った。俺は賛成だ。これ以上考えても思いつく気がしない。それにしても調べるのってかなり疲れるんだな。疲れたしとにかく今は寝たい。他の二人も同じ意見らしく、今日はもう自室に戻ることになった。鈴は夏海の部屋に泊まるそうだ。


***

 俺達は寮までは同じ道で帰り、唯美と夏海そして鈴は女子寮、俺と幸嗣は男子寮に別れた。俺と幸嗣はエレベーターに乗り、俺達の部屋がある三階を目指す。こんな元の世界の未来のような世界でもエレベーター独特の揺れ方は変わっていない。


「幸嗣、話したいことがある。夏海と唯美も呼んでくれ。」

「あぁ分かった。でもなんでさっき言わなかったんだ?」

「大事な事を言い忘れていた。鈴は連れてこないでくれ。」

「それは、鈴には話せないって事なのか?」

「そうだ。鈴には知られてはいけない。場所はアクシズの屋上、時間は18時で。」

「了解。メッセージ飛ばしとく。」

「ありがとう。」


 これはこの誘拐事件に首を突っ込む上で考えておかなきゃいけない可能性の話だ。アクシズというのは前戦ったショッピングモールの名前だ。英語で軸という意味らしい。ここまで決めているのに自分で連絡しないのは言うまでもない、連絡先を知らないからだ。会話が終わってから約三秒、エレベーターのドアが開き三階に到着する。俺の部屋である二〇四号室で幸嗣と別れる。

 まだ集合の時間まで2時間ほど時間がある。ファミレスで昼食を食べたとはいえまだ腹が減っている。俺は人目を気にするとあまり食べられないタイプなのだ。ということで冷蔵庫を適当に漁って腹一杯になるまで食べた。その後シャワーを浴びて丁度残り三十分で集合の時間だ。俺はチャック付きのパーカーを着て外に向かう。外は少し肌寒かったが心地よい肌寒さだった。

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