第十一話『今の力』
俺はやはり今の力を試したい。今の俺がどの程度なのか。そして俺は異世界で生きていくことができるのだろうか。俺は決断した。
「模擬戦やります。いや、やらせてください!」
「良い返事だ。では早速スタンバイルームに移動したまえ。場所はわかるか?」
「わかりません」
「そうか。上原、辻見をスタンバイルームへ連れていってやってやれ。」
「はい。」
中前先生が適切な指示を出し、俺は幸嗣の案内の元スタンバイルームに行くことになった。
幸嗣は歩きながら模擬戦の行い方について説明をしてくれた。スタンバイルームに行くための廊下に唯美の姿があった。
「唯美、お疲れ様。さっきの模擬戦凄かったな。」
「ありがとうございます。望くんはどうしてここに?」
まだ授業が終わるまで時間があるとはいえ長話をしているほどの時間はない。手短に模擬戦をやることを話した。
「望くんいきなり模擬戦やるの!?......頑張って。」
「ありがとう。頑張るよ。」
なぜ間があったのかはわからないが、唯美に応援してもらった。これはますます負けるわけにはいかない。
唯美と別れ、スタンバイルームへ移動した後、戦闘服に着替えてから必要に応じて武器を持ちMRIのような機械に横になれば模擬戦が開始するらしい。戦闘服というのは今朝貰った体操服のことだろう、だが生憎今は体操服を持っていない。制服で受けても問題はないそうだから多少動きにくかったりするかもしれないがたいした問題でもないだろう。ちなみに俺の相手は能力の強さでは真ん中、平均のこの学校第五高校の中でも常にテストで平均をとっていると言われる東尾正仁。いわゆる平均のスペシャリストだ。つまり東尾に勝てば俺は平均以上、負ければ平均以下ということだ。実に分かりやすい。案内を終えた幸嗣に礼を言い、幸嗣も帰っていった。幸嗣は帰りも迎えにこようか?と心配してくれていたようだが俺は来た道を帰れないほど方向音痴ではない。俺はスタンバイルームへ入った。スタンバイルームでの情報漏れ、その情報による対策などを防ぐため、それとスタンバイルームで着替えることもありスタンバイルームは計四つの個室になっていた。そのうちの一つの部屋に入り準備を進める。制服の上着を脱ぎ一応剣を二本持つ。相手の能力も分からないため遠距離攻撃用に銃を持っておきたかったのだがどうやら銃の所持は認められてないらしい。最終確認を終え俺は異世界MRI(仮)に横たわる。そして浮かんできたタッチパネルの準備完了をタップする。流石は近未来っぽい世界だ。第五高校デビュー戦だ。瞼を閉じ仮想世界へ転送されるのを待つ。
『---只今より模擬戦闘を開始します。スタンバイルームにいる対象以外の生徒、職員は直ちにその場から退出してください。繰り返します。読み込み室にいる対象以外の生徒、職員は直ちにその場から退出してください。読み込みを開始します。三.二.一.---模擬戦闘スタート。』
一瞬意識がなくなり意識が戻ると全く知らない土地に居た。例えるなら鳥の巣が転がり早打ち勝負が行われていてもおかしくない場所だった。全く現実世界と感覚は変わらない。もう模擬戦は始まっている。とにかく相手の場所を把握できないとマズい。何せ俺は高校ではもはや空気になっていた隠密行動には長けていると思っている。自分の場所を悟られず相手の場所を把握するこれを最優先事項とする。..............が
「あ。」
「......あ。」
思ったより近くにいた。というかさっきのことを考えている時からもう百メートル以内にいた。俺と東尾はほぼ同時に声をあげていた。初戦からこんなハプニングがあっていいのだろうか。俺は認めない。とにかく倒さねばならない敵が目の前にいるのに攻撃してこないのは仮面ライダーの変身を待っている敵ぐらいだ。東尾は忘れていたかのように攻撃を始める。謎の光る玉が五ほど東尾の上に出現し、俺に向かって飛んでくる。何とかそれを回避し謎の玉は地面にぶつかり消える。彼の能力はあの謎の玉を作り発射する。というところだろうか。地面が少し削られているのを見て一撃はそんなに重くはないだろうと判断する。だが一度に五つまたはそれ以上作れる。となるといくつか当たるとそれなりにダメージを喰らうだろう。この状況で一番作るべきものは盾だ。盾さえあればダメージを防ぎながら近づくことができるだろう。だがあの量を俺に当たらないように防げる盾となるとそれなりに大きな盾が必要だ。その盾を作るとなると大量の血が必要になる。両手にある剣を使えばできなくはないが動きが鈍ることは確実。最悪貧血で倒れる可能性もあるだろう。剣?......そうか。剣であの玉を切ることができれば盾など必要ない。物は試しだ。次の攻撃のうち一球を切る。もし切れなかった場合は...
考えてるうちに次の攻撃がきた。さっきと同じように東尾は五つの玉を出現させ、飛ばす。俺はそのうちの4球を躱し残った1球を切る。俺の剣に玉が当たると玉は消滅した。成功だ。その勢いで相手に一気に近づく。飛んでくる玉を最低限切りながら進み、ついに剣が届く間合いまできた。真上に玉が1列に作られ俺に向かって落ちてくる。それを切りながら東尾に攻撃しようとする。だが玉を切ったところで違和感が生まれた。腹を見てみると違和感の正体に気付いた。東尾は玉に俺の注意を引き付けさせ自分は剣で俺を切っていた。これは完全にやられた。大量に出血し、東尾は勝ちを確信していた。だが甘い。東尾は俺の能力を知らない。俺にとっては出血は強化の合図である。片手の剣を地面に落とす。止めを刺すため東尾はまた玉を作り俺に向かって飛ばす。玉が俺に当たる直前に俺は能力を使った。
煙の中にあった姿を見て東尾の勝利を確信したちょっとイラっとする顔は驚きを浮かべた顔に変わった。俺は作った盾で俺に当たるはずだった玉を全て防いだ。出血してしまったなら仕方がない。弱そうなバックラーほどの小さな盾だがあの攻撃を防ぐには十分だった。一旦距離をとり、右手に持っている剣と下に落ちていた剣を一本は右から、もう一本は左から投げそれと同時に走り出す。東野は咄嗟に飛んできた二本の剣を剣で切り落とした。だが突っ込んできた盾まで防ぐことはできなかった。それを直接喰らった東野はバランスを崩す。そこに走りながら作った三本目の剣で切りつける。盾を作ってもおつりがくる血の量だからこそできた技だ。東尾の斬撃がもう少し浅かったらできなかっただろう。東野は俺の能力を知らなかったそれが敗因だ。そうだこれは完全な初見殺しである。
「これで...終わりだ!」
俺の斬撃は東尾の頭と胴体を切り離しこの模擬戦の終了を意味するアナウンスが流れる。
『---東尾正仁再起不能。よって勝者辻見望。』
初の模擬戦。俺は勝った、勝利したのだ。これで俺は平均以上であることが証明され、この高校では俺の今の力でも通用することが約束された。そして俺の意識は落ちた。
『能力紹介』
東尾 正仁 MASAHITO HIGASIO
能力名:シュート
詳細:謎の光る玉を作り真っすぐに発射する。一撃はそれほど重くないが連射できるため複数当たるとそれなりに強い。玉は1回当たると当たった人または物にダメージを与え消滅する。玉の正体は不明。




