第十話『銀の一閃』
海木と夏海の模擬戦の後に知らないクラスメイトAとB、CとD(仮)が一戦ずつ、合計二戦ほど模擬戦を行っていた。だが海木と夏海の模擬戦だけレベルが違いすぎて後の二戦はどちらもあまり強そうには見えなかった。しかし最初に見た模擬戦のレベルが高かっただけであとの二戦こそが第五高校本来の実力なのかもしれない。そこで次は唯美の番だ。銀髪碧眼、容姿端麗、透き通るような声、そしてとてもかわいい。そんな彼女がどんな戦いを繰り広げるのか俺は模擬戦のことを聞いてから頭の半分以上がそのことで埋まっていた。準備が整ったのかアナウンスの前兆である独特な機械音が微かに聞こえてくる。
『---只今より模擬戦闘を開始します。スタンバイルームにいる対象以外の生徒、職員は直ちにその場から退出してください。繰り返します。読み込み室にいる対象以外の生徒、職員は直ちにその場から退出してください。読み込みを開始します。三.二.一.---模擬戦闘スタート。』
模擬戦開始のアナウンスが流れモニターに唯美と知らないクラスメイトEの姿が映し出される。唯美は二本の剣を持っていた。どうやら二刀流スタイルらしい。その剣はまるでゲームの初期武器のようなシンプルなデザインだった。
「なぁ幸嗣、模擬戦って武器持ち込んでいいのか?」
一応観戦中なので小声で質問する。
「あぁこの模擬戦では使用していいことになってる。でも他のところでは相手の許可を取らなきゃいけない。そもそも使っちゃいけないところもあるから注意が必要だな。」
「そうなのか、ありがとう。」
武器持ち込んでいいなら俺の能力あんまり意味なくなっちゃうだろ。まぁ使えないところもあるならいいか。それに俺の能力は使うなら血が必要だ。使わずに済むならそれでいい。武器の持ち込みは可能なのか?という疑問が綺麗に解けて俺はモニターに視線を戻す。モニターの様子ではまだ唯美は相手と戦闘をしていなかった。相手の隠れ方がうまいのか唯美はまだ相手を見つけられずにいる。もしかすると相手は隠密行動ができるようになる能力者なのかもしれない。だがこのまま逃げ隠れを続けても決着はつかない。相手も俺と同じことを思ったのか唯美に近付き、持っていたダガーのような武器で切りつける。だが切りつけた先に唯美は居なかった。そして小さく呟いたような声が聞こえた。
「全体強化」
その瞬間、銀色の一筋の光りが見えた。俺にはそれしかわからなかった。その光の先には相手の背後に剣を持った両手を振り下ろしていた唯美の姿があった。一体何が起きたんだ...俺は驚くことしかできなかった。唯美の姿を確認してすぐ相手は倒れた。その相手は真っ二つに切れていた。
『---川田雄介再起不能。よって勝者日尾野唯美。』
それは文字通り一瞬の出来事だった。確かに唯美の能力は身体強化系だとは聞いていたがここまで強いとは思ってもいなかった。あの奇襲を躱したのもそうだが、何より驚いたのはあの速さだ。俺も含む一般人はあんな速度の攻撃、目で追うこともできない。あの強さこそチートなのではないか。
驚いている俺に名取先生が近づいてきた。
「今の試合で本日の模擬戦は終了なんだが、まだ時間もあまっている君も模擬戦をやってみるか?」
驚きに驚きを重ねて一周回って感情が無になった。例えるなら入学したらいきなり単元テストのような状況だった。だが俺は模擬戦どころかリアルで戦闘を経験している。ってか俺のチュートリアルってあのショッピングモールの戦いなのか。チュートリアルって勝てるもんじゃないの?チュートリアルから負けイベってすごい斬新だな。話は戻るがここで模擬戦を行うことに特に意味はない。だが、少し第五高校で今の俺の力で通用するのか試してみたい気持ちもある。さてどうしようか......
『能力紹介』
日尾野 唯美 YUMI HIBINO
能力名:ブースト
詳細:身体の強化が可能。筋力を強化して凄い力で殴っても、骨が折れてしまうため骨も同時に強化するなどの工夫が必要。普段は1点に強化を集中させるほど効果が上がり、逆に複数の個所を同時に強化ほど効果がさがる。
基本的に使うのは攻撃強化、速度強化、防御強化、全身強化・制御、全身強化である。この5つが軸となり他にもいろいろな個所を強化して戦えるため戦い方のバリエーションは豊富。




