序章 第2話 『よげん』
ーー太陽が眩しい晴天の下、見渡す限りの花畑に3、4歳くらいの金髪で蒼い目をもつ女の子が一人座っていた。
いや、一人ではない。周りには沢山の子供たちがいた。みんな熱心に輪の中心に立つ先生の朗読をきいている。
わるいかみさまをたおすゆうしゃの話だ。
そんな中で、女の子は前の日に母親から教えてもらった花飾りの編み方を練習するのに夢中になっていた。先生の朗読は半分きき流していた。
ーーだってその本は何度もママに読み聞かせをしてもらっていた。内容だってそらで言えるくらいだ。パパとごっこ遊びだってした。もちろんパパがわるいかみさまで、私がゆうしゃ!!
そのうちに朗読は終わり、子供たちは自分の家に帰っていった。
女の子も友達とバイバイを言って別れ、自分の家に走って帰った。母親にさっきつくった花飾りを早く見せたかった。もっと言うと褒めてもらいたかった。
家に着くと、女の子はすぐに母親に抱きついた。
母親の髪は綺麗な金髪だった。この髪は見事に彼女の娘に遺伝していた。目の方は父親譲りだ。
女の子は急いで大好きのキスをして、花飾りを見せる。
女の子は母親が笑った顔が大好きだった。いや、母親だけではない。父親の笑った顔も、ついこの前生まれたばかりの妹の笑った顔も、友達の笑った顔も大好きだった。
女の子は幸せだったのだ。
母親は女の子を褒めた。女の子は満足そうに笑った。気がつくと、外は陽がおちかけてオレンジ色の空になっていた。
もうそろそろ、女の子が楽しみにしているアニメの時間である。
テレビの前に一緒に座った母親の膝の上に乗り、アニメが始まる前に笑顔で女の子は尋ねた。
尋ねる前から答えはわかっていたつもりだった。
「ママ、わたしのこと好き?大好き?」
ーその瞬間、空の彼方から閃光が走り全てがかき消された