18
ふと気づくとここ数日で見慣れてきた空間にいた。
目の前のモニターは右の画面だけ僅かに明るい気がする…そう思っている間に画面が揺れ碧海が映る。
「…こんなに何度も会えるものなの?」
【…普通は無理じゃない?】
だよね。
よくあるのは、神様と意思疎通する為に神殿に行ってお祈りを捧げる…みたいな奴。自分から何かをしないと向こうからは何もしてこない、的な。
【アオイが何か聞くことあるみたい、って言ってたから来たんだけど…】
「ああ。」
忘れるとこだった。
確か『いつ頃学校始まるんだ』だっけ?
「初めて会った時、一週間後に学校あるって言ってたけどそれって『私』が出た日を含めて?」
【うむ…微妙な問題だね。ちょっと待ってて………そうみたいだよ。私はこうやって話ができるようになってからだと思ってたけど】
となると…明日で五日目?
残り二日か…見た目は何とか男にしたけど、細かいところは特に何もしてないしな。
そういえば父親に寮生活の事言ってない気がする。起きたらすぐ言うことにしよう…忘れないよう気を付けようか。
「…ねえ碧海。私どう見える?」
少しモニターから離れて全身が見えるようにして聞いてみた。
碧海もかるく身を引いて全体を見るようにして、考える素振りをしている。
【…冷たそう。血も涙もない冷徹少年、だね】
「まあそんなものだよね。性格からそう遠くないしそのキャラでいこうかな」
【いいんじゃない?確かその枠は空いていたはずだし、もめることも無いんじゃない?】
案外いそうなキャラなのに空いてるんだ…ってなんで攻略対象になることになってんの。
いくら元ヒロインの体とはいえ、そこまでハイスペックではないでしょう?
それに私が誰かを好きになるなんてありえないし。
「もめるも何も私はモブになるから関係ない」
【そう?まあ頑張ってー】
ひらひらと手を振ってそう言うと、ブチッと音がして碧海のモニター自体が消えた。
そこからすぐに意識が薄れていった。
≪ピピピピッ≫
ん…ああ朝か。
なんか今日は気持ちのいい目覚めだな。
ちらっと時計を確認すると8時半をちょっと過ぎたあたりだった。
微かに下からトントントンと包丁の音が聞こえる。父親が朝ご飯を作っている音だと思う。
つまり、下に行けば父親と話ができるということ…忘れないうちに寮生活のこと言っとかないと。まあ最悪何も言わないで勝手にやればいいか。
さて、着替えて父親と話す準備でもするか。寮生活が始まったら弟は私と会わなくなるから清々するだろうね。
逃げるみたいで嫌だ、なんて思わないよ。
むしろ逃げたければ逃げればいいって思うタイプだし、戦うなんて無駄なことできればしたくないもん。