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さて。一悶着終わったし、帰るとしようか。
もう一度、路地裏を通らない帰り道をナビで検索してみる。
今日のご飯はなんだろう。今の胃袋はシチューが食べたいって言ってるんだよね…
ジャガイモたっぷりのクリーミーなやつ。ちょっと濃いめの味だといいね。
あー…お腹すいてきた。
「わっ!」
正面から軽くなにかにぶつかった後、声がした。
ご飯の事考えてて周り見てなかった…どこの食いしん坊キャラだよ。
それより謝ろうか。ぼーっとしてて周り見てない私に非があるんだから。
「おっと、ごめんなさい」
丁度私の胸の位置に鼻が当たったのか手を当てている。顔はよく見えないけど、さっきの声と見た目から女の子って事は分かる。むしろそれしか分からないって事だけどね。
「こちらこそすいません!余所見をしてたばかりに…」
「いえ、私もぼんやりしていたので…」
セミロングの髪は、軽く巻いてあるのかくるくるしてる。時間が経って落ちてきてるみたいだけど。
服は膝丈のスカートにモコモコしたオフショルダー。暗くて色味はよく分からないから省略。
「あれ」
彼女が離れようと身を引いた時、髪が私の服に引っかかったみたいで繋がっている。
途中まではスルスル取れていて彼女は気づいていない様子。
「え…痛っ!」
案の定、毛先で絡まった。地味に痛いやつ…
彼女も痛みで気づいたみたいだけど、無理やり引き抜こうとしてる。
それは女の子としてどうなの…
「あ、動かないで…」
彼女がさらに身を引こうとするから動かないように言って、絡まった髪を解く。
碧海の時は手先が器用な方だったおかげで簡単に取ることが出来た。もしかしたらモモさんの体も器用な方だったりして…知恵の輪とかも楽勝だったりするかも。
「よし、大丈夫だと思います。痛くないですか?」
「え、ほんとだ…あ、ありがとうございます!」
こんなに早く取れるとは思ってなかったのかびっくりした様子。ちょっと距離をとってお辞儀までしてくれた。
なんて礼儀正しい子だろうか…今どきいる?
『ありがとう』って言われるのは嬉しいものだね…さっきの不良で負った傷(ひとつも無いけど)も癒えるわぁ。
「いえいえ。それでは」
清々しい気持ちで家に向かって歩き出す。道が分からないからナビしてもらうんだけど。
携帯を取り出すと丁度時間を見れる。今は20時19分か…これは本気で怒られる気がする。
早く帰るとしようか。
***家に着きました***
あの後は何が起きようとすべて無視する思いで家に向かった。まあ何も無かったんだけど。
怒られるのか、とビクビクしてたんだけど私…というかモモさん放置され気味だったなって思い出した。
なら何も怖いものは無い。いざ、オープン・ザ・ドア。
「ただいま」
やっぱり返事はない…返ってくるとは思ってないけど。
手洗いうがいを済まして、無いと思う晩御飯の確認。やはり無かったか…こんな遅くなったんだもんね、仕方ない。
買ったものを全て持って部屋に向かう。
寄り道したコンビニで飲み物と軽いお菓子を買っといて良かった。
つまみながら服をクローゼットにしまっていく。
ハンガーが足りなかったから、もう着ないだろうと思うモモさんの服を畳んで学生服があった所に積む。
よし、終わった…お風呂入って寝る準備でもしようかな。
眠い訳では無いんだけど、早めに朝型に戻さないと学校できついからさ。
寮に入るんなら誰も起こしてくれないし…自分で全部やらないといけないから大変だなー。
そういえばあとどれ位で学校だったっけ?
明日確認しておこうかな。必要な物も買い込まなきゃならないし。