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時刻は18時13分。夕焼けが綺麗…


だいぶ遅くなったし今日の買い物は終わりにしよう。てなワケで、家に向かってレッツゴー。


ナビしてもらいつつ、コンビニによったり野良猫を軽く追いかけたり、寄り道しまくった結果…あたりは真っ暗なのに帰り道は半分ほどしか進んでない。


あれから1時間ほど経って只今の時刻、19時32分。

そろそろ本格的に帰らないとやばいなーと思い始めたところ。


早く帰るためにナビで出した近道が、かなり暗い路地裏だったのを確認しました。


うん、ここはやめよう。絡まれるのは面倒だし、絶対何かいるでしょう。

オバケとか幽霊とかヤンキーとか(たむろ)ってそうな路地裏はナビに出さないでほしいんだが…


『……!…っ…!』

『…?……!』


ん…?なんだ?

マジマジと眺めるつもりも無かったから通り過ぎようとしたら、その路地裏方面から声らしきものが聞こえるんだけど。


気のせいか、で済ませたいのは山々なんだけど…こういうのは気になっちゃうタイプでね。

入りはしないよ?ただ、入口でじーっと見つめるだけ。


じー…


『……ぁ!…っ…ぉ!』


なんかだいぶ声が聞こえる…かなり言い争いをしてるようだね。

なおも見続けると一人の男が私の足下まで飛んできた。あぶね。


『…グァアッ!…ク、ソ…』


そこで力尽きたのか動かなくなった。死んではないと思うけど。助ける義理はないよね?


まだ音はしているから引き続き眺める。

じー…


「はぁ…はぁ…あ゛ぁ?何見てやがる」


おっと、一人の男が出てきた。

フム…粗めの息を整えつつガンを飛ばす男の見た目年齢は、18。

金に染められた髪は、旋毛が少し茶色い。

ピアスはざっと数えて、両片耳4個の計8個。

喧嘩でもして切ったのか、小さな傷から血が出ている口。地味に痛いやつ。


私、修羅場ってやつ?を先程までしていた男に声をかけられたようだよ。

無視して帰っちゃダメかな。


一瞬目線をそらすと、それを見計らったように胸ぐらを掴まれて引っ張られた。


「うわっ」

「テメェ…いい度胸してんなぁ」


目逸らしただけでここまでされないといけないの?ダル…って思うんだけど。


「ありがとうございます。そこそこ自慢のものですので褒めてもらえてとても嬉しいです」


こういう輩では、遊びたくなるんだよね。感情を込めないようにかなりの棒読みと、無表情で言えたはず。


さらに引っ張られて、襟が首に軽く食い込んだ。苦しくはないけど…鼻がつきそうなほど近くに男の顔が来た。

こいつ私が男だと思ってるから、こんなに近くに顔寄せてるんだろうけど…セクハラ?って言われても言い逃れできないんじゃ。


「褒めてねぇよ!ぶっ飛ばされてぇのか!?」

「こっちだって冗談だ。大声出すなよ…鬱陶しい」


今度は表情が歪むぐらい全力で筋肉を動かして言ってみる。思いのほかよく動いてくれたみたいで視界が狭まる。

ついでに胸ぐらを掴む手首を右手で握り、折れろーって想いを込めて思い切り握りしめる。

それに加えて服が捻れてる向きを確認して、男の手を同じ向きに(ひね)る。私も苦しくなるからやりすぎ注意、だね。


痛みからか服から指が離れたのを感じて二歩後ろに下がる。

ふう。あれ…服にシワが寄ってる。アイロン掛けた方がいいかな。


男はプルプルしたと思ったらすんごい目で睨みつけてきた。


「てめぇ…!!ぶっ殺してやる!!」


そう言ってものすごい速さで殴りに来た。効果音付けるならブォン!って言うぐらい。


…凄い速いんだけど何故か軽く避けることが出来た。

ヒョイって間抜けな効果音つきそうなほどかるーく…何故?


その後も男は何度も殴るんだけど、掠りもしない。だんだん苛立ってきてるのが見てわかる…お、足も出てきた!当たらないけど。


そんなことより、なかなかに綺麗なフォームなんだよ…なんかの武道やってたのかな?

あれ、こういう輩は何か習ってる奴が多いんだっけ。漫画ではちょくちょく見るけど、現実でやる奴いるんだろうか。


ブォンブォンいってる拳やら足やらを避け続ける。


おかしいな、昔は運動なんて全然してなかったしこんなに動けるはずもないんだけど…

まさかこれもモモさんの体のおかげ?

え、モモさん凄すぎない?頭も良くて(覚えてないけど)美形で運動神経抜群ってどこのヒーローだよ。


「はぁ…はぁ…クソッ!なんで当たらねぇんだ!」

「あれ、疲れたの?ふぅん…体力無いな」

「あぁ!?」


あ、今のは素直な感想。

煽った訳じゃないよ?

私はさっきと変わらず元気なのに、男は息切れしまくってるんだもん。体力無いのかなって思ってしまうのは仕方無きこと。


やっぱり殴る側は疲れるものなのかな?やってみるか。

丁度いいタイミングで、大振りなパンチが来たから軽く避けて懐に入る。入るって言っても、男の体側に避けるだけなんだけど。


…馬鹿だね。

ステータス高いゲームでも大技には隙が出来るのに、疲れと怒りでコンディション最悪の時の当たる確率なんて低いってわかるだろうに。


…そういやこいつ、何故かお腹出てるんだよね。

あ、太ってるわけではなくて、男のシャツが短いのか(へそ)が見えてるって事。寒くないの?


まあ丁度いいから鳩尾に1発いれてみるか。本当に気絶するのか試してみよう。

はい、ドスッと。


「…ゥグ!!」


結構吹っ飛んでゴミ箱にでもぶつかったのか『ガシャーン』って音が聞こえた。

…帰ってくる気配はない。

本当に気絶するんだ…せめて嘔吐する程度かと思ってた。


ぱぱっと身なりを整えてっと。

私は関係ありませんよー、ただの通行人ですよーって雰囲気を醸し出す。


よく見たら周りに誰もいなかった。


良かったー見られてないのか。警察とか補導員?とか面倒なのに捕まるのは勘弁願いたい。


あ、すっかり忘れてた。

早く帰らないとご飯に遅れちゃうや…食べなくても別に構わないけど、父親のご飯美味しかったからね。


出来れば食べておきたい。



あと少しで長期休みも終わりかぁ…新しい学校でもやっていけるかな。

でもお兄ちゃんと一緒のところに行けてよかった…知り合いが居たら安心するし。


「わっ!」

「おっと、ごめんなさい。」


なんて考えてたから曲がり角で人にぶつかっちゃった…!


「こちらこそすみません!余所見をしてたばかりに…」

「いえ、私もぼんやりしていたので…あれ。」

「え…痛っ!」


顔をあげようとしたら、髪がなにかに引っかかってたみたいで痛かった…


「あ、動かないで……よし、大丈夫だと思います。痛くないですか?」

「え、ほんとだ…あ、ありがとうございます!」

「いえいえ。それでは」


そう言って居なくなっちゃった。

まだお礼とお詫びをし足りないのに…この道よく使うのかな?ならいつかまた会えるかな。

一瞬しか見れなかったけど、学生服着てた気がする。歳近いのかな?


……あれ、人が倒れてる。


「喧嘩かな…」


この辺はよくあるらしいし…


「ぃってぇ…」

「っ!」


誰かが路地裏から出てくる…


「あの野郎、ぜってぇぶっ飛ば…あ?」

「お兄ちゃん!」


お腹抑えてる…負けたのかな…


「お前、どうしてここっ…!」

「っ!大丈夫?」


倒れかけるのをすんでのところで支えれた…良かった…

お兄ちゃんは強いからいつもは軽い怪我で済むのに…何が…?

ふいっと目を逸らしてお兄ちゃんは言う。


「しくじっただけだ。見た目に騙されて売る相手を間違えちまったようだ…」

「…ひとまず帰ろう?怪我の手当てもしないと、また悪化して病院行きになっちゃうよ」

「うぐっ…そ、そうだな」


手当てって言っても出来ることはあんまりないけど…


「…支えなくても歩ける」


フラフラしてるから支えてたのに…


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